1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「ものとその重さ」という学習について紹介します。この単元では物の重さや体積を調べ、物の性質についての考えを持つことがねらいです。子どもたちが楽しみながら重さについての考えを持てるように毎回少しずつテーマを変えながら「重さくらべ選手権」をしていきます。
大きな物同士を比較する
辞典と図鑑のどちらが重いか比較する
第1回 「重さくらべ選手権」をします。大きなもの同士を比べます。
「選手入場!」箱に入った選手(物)が理科準備室から入場してくると、子どもたちから「ハハハ」と笑いが起きました。取り出したのは、国語辞典と大判の図鑑です。まずはファーストインプレッション。直感でどちらが重いかを尋ねると、辞典4人、図鑑0人でした。
ここで、子どもたちに問いかけます。
「では、実際に手に取って比べてみます。ただし、同時に両手を持っては比べないでください。」
子どもたちが見つけた違いは、次のようになりました。 たくさんの違いを見つけることができました。
ここでファイナルアンサー
- 1人目:辞典
- 紙はペラペラだけど、枚数が多いから辞典だと思う。
- 2人目:辞典
- 本を叩いたとき、辞典の方が音が低かったから。
- 3人目:辞典
- 図鑑より厚いし、ページ数が図鑑より多いから。
- 4人目:辞典
- 紙はペラペラだけれど、ページ数も多いし、厚さも5.5cmあるから。
ファイナルアンサーも〈国語辞典〉4人。子どもたちがそれぞれに根拠を持っているのが良いですね。
次に、実際にそれぞれを比較してどちらが重いのかを調べてみます。
「そこで大実験。天秤を使って調べてみましょう。」
園芸用の棒(ネブシ竹)を使って、大きな天秤を作り、両端に<国語辞典>と<図鑑>を付け、「いっせーので」と手を離します。
カラー図鑑が傾いた。子どもたちから「えー!」っと声が上がりました。
子どもたちには思い込みがあるようで「○○は重い」と思うと、もうそれ以上考えないようです。そういう思い込みを排して、よく見てよく触って観察や事実をもとに自分の考えを持ってほしいと願っています。
その他に比べたもの。
- 布 VS 新聞紙
- ボール VS かぼちゃ
- 石 VS 木
ファーストインプレッション→観察→意見交流→ファイナルアンサー→実験の手順を繰り返して比べていきます。
子どもたちは、大きな物同士は、天秤を使うと比べることができるということがわかりました。
小さく分けて細かくした時の重さを比較する
第2回目の「重さくらべ選手権」のテーマは、小さく分けて細かくした時です。第1回戦はキュウリ。
まずは天秤で2本のキュウリが釣り合うことを確かめました。重さがそろったキュウリするために長さ大きさの似たものを用意しました。
そして、子どもたちに問いかけます。
「重さの同じ2本のキュウリのうち1本を包丁で切ったら重さはどうなるでしょう。」
子どもたちのファーストインプレッション:全員「切らないキュウリの方が重い」
各自キュウリを観察した後に理由も発表しました。
〈切らないキュウリ〉
観察前:4人 → 観察後:3人
・切ると水が出ているから切ると少し軽くなると思う。
・切ってしまうと元の大きさよりも小さくなるから。
・バラバラになったら軽くなるから。
〈どちらも同じ〉
観察前:0人 → 観察後:1人
・切っても切らなくても物は一緒だから。
実際に比較してどちらが重いのかを調べてみます。
ファイナルアンサーが出たところで大実験です。
切ったキュウリと切っていないキュウリをのせた天秤を子どもたちが見つめます。私がそっと手を離してみると、天秤は釣り合ったままでした。「えーっ」と外れた3人から叫び声が上がりました。
条件を変更する
<第2回戦>
次の問いかけは次の通りです。
「袋に入ったせんべいとパリパリと割れたおせんべいではどちらが重いでしょう。」
<第3回戦>
第2回戦と同じせんべい。ただし、袋をあけた状態で割ったもの。
子どもたちに問いかけます。
「袋をあけてせんべいを割ったら、袋をあける前と重さに違いはあるでしょうか。」
第2回戦、第3回戦も子どもたちの意見を聴き、実験で重さの違いを調べました。するとその結果、
小さくしても物の重さは変わらないことがわかりました。
形を変えた時の重さを比較する
第3回目の「重さくらべ選手権」は、形を変えた時の重さについて考えました。まず取り出したのは新聞紙です。四つ折りにした一枚の新聞紙がどちらも同じ重さであることを確かめてから始めました。
子どもたちへの問いかけ:
「新聞紙を丸めた時とそうでない時ではどちらが重いでしょうか。」
子どもたちのファーストインプレッションは〈四つ折り〉2名、〈同じ〉1名でした。
そこで新聞紙をぐしゃぐしゃと丸めて、ぎゅっと固めてから手触りなどを確かめました。
子どもたちにファイナルアンサーを尋ねてみると意見が変わりました。
〈どちらも同じ〉
形を変えた後:1人
- やっぱり丸めても丸めなくても、最初に量った時と同じだから一緒だと思う。
〈丸めた新聞紙〉
形を変えた後:2人
- 折りたたんだのは新聞が集まった感じじゃなくて丸めたのは集まっているから。
- 丸めると中心に力が集まる感じがする。
そこで大実験。
結果はどちらも同じでした。初めと意見を変更した子は悔しそう。
その他に形を変えて比べたもの
<粘度>
「粘土を天秤からはみ出すくらい細長くしたら、元の粘土とはどちらが重いでしょうか。」
<積み木>
「積み木を縦に置いた時と横に置いた時ではどちらが重いでしょうか。」
<アルミホイル>
「同じ重さのアルミホイルを1つはそのままで、もう片方を丸めたらどちらが重いでしょうか。」
形を変えても変えなくても重さは同じことがわかりました。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
重そうに見えて軽いものや軽そうに見えて重いものなど、見た目ではわからない「重さ」を調べる実験は、ものの数をこなすほどに多様な意見が出てくる可能性があるのだな。と感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 栗林茜)
コメント
コメント一覧 (1件)
ここに出てくる実験のいくつかは,何も引用文献が書かれていないが「仮説実験授業研究会」の <ものとその重さ> ではないでしょうか。引用文献のない研究発表は,盗作にはならないのかな。同じ実験が一つなら「独立発見」ともいえるけど。