静かに素早く整列2

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子どもがいつまでたっても並べない、整列させてもなかなかまっすぐにならない、いつまでもうるさい…。これって、子どもが悪いと思っていませんか。子どもはやり方を知らないだけなんです。ひとつずつ、ていねいに指導していきましょう。


静かに素早く整列1
も、是非ご参照ください。

並ぶ順序

 まず、どんな順番に並ばせるか。私は3通りの並び方をよく使いますが、実はもう一つやりたいと思いつつできないのがあります。

【その1】全校朝会など、学校の全児童が集まるような時は「1学級2列・背の順」ですね。
大抵、男子1列、女子1列、それぞれ一番背の低い子を一番前にして順に並びます。
男女を分けることっていろいろ言う人もいるかも知れませんが、子どもから見て「1列に並ぶ」ことになるので、並びやすいです。

【その2】発育測定などの時は、男子1列、女子1列で出席番号順です。
実は出席簿は男女混合名簿なのですが、混合だと体重測定や着替えなどの配慮が難しくなるのと、低学年だと混合のまま2列に並ばせるのが難しいこともあって、男女別にして並べています。

【その3】低学年でよく使うのは、座席の通りに並ぶやり方。
子どもが、自分がどこに並べばいいか、隣は誰かなどを把握しやすいのです。
教室では大抵二人が机をくっつけて、机を3~4列に並べているので、その列ごとに「1列目(1号車と呼びます)が1番前、2列目(2号車)はその後ろ、その次に3号車、4号車…」のように並ばせます。入学式の入退場時は大抵このやり方で並ばせているようですね。

【その4】一番やりたくて難しくてできていないのが、出席番号順の男女混合2列です。
火災や地震などの緊急時、避難直後に全員が揃っているかどうか出席簿で顔と名前を一致させて確認しなければなりません。担任が出張等で不在でも、他の先生によってスムーズに確認がなされなければなりません。そのためには、出席番号順に並んでいるのが一番良いのです。

 ところが、この並び方は他ではほとんど使えません。そうなると、子どもがこの並び方に慣れないので、どうしても並ぶのに時間がかかることになり、避難時の並び方としては適当でないのです。(低学年は特に、一度に何通りもの並び方を覚えるのは難しいです)外に出てから並び直すことは、他の学年も走り出てきている状況では無理です。こういう時にはちょっと、昔のように男女別の名簿の出席簿だったら良かったのに、と思ったりします。

 もし作って良ければ、出席簿を男女交互の名簿にしようかと思っています。そうすれば、男女別に並べた時に、例えば男子の列に1、3、5、7、…、女子の列に2、4、6、8、…、と並ぶので、ちょうど出席番号順に2列に並ぶことになり、点呼がしやすいと思います。でもこれだと50音順でなくなるので、日頃のテストの整理なんかは面倒になるなあ…。

 後述しますが、その他に、班ごとに並べることもあるし、体育の指導時など特に並ぶ必要のない時は適当に集めて座らせるなんてこともします。(わざわざ並ぶのは時間の無駄)

 私が一番嫌いな並び方が「早い人順」。でも、この並び方を日常的にやっている学級ってけっこうあるんですよね。出張補助で入った学級で、並べて教室移動なんて時に子ども達が私の前にどどっと集まってくるので分かります。うるさいし、誰が前かですぐ言い合いになるし、後から来た子はだれの後ろに並べばいいか分からなくなるし、結局並ぶのは遅くなるし、いいことないです。

 補助に入った学級の子どもから「先生早い人順ですか」と聞かれたら絶対「いいえ、背の順です」と答えます。「えー、いつも早い人順なのにー」と文句を言われますが、同調はしません。ていうか、子どもが先生に何の順で並ぶか尋ねなければいけない時点で「学級経営できてないな」と思います。補助ではいる私達は学級のルールは知らないんですから、「子どもだけで行動できる」ように日頃からしつけておいてほしいわけです。私は、例えば背の順に全員を並ばせる時でも「自分は大体この辺と思うところに座って待っておきなさい」と指示します。一年生でも何回かすればすばやくできるようになりますよ。

 そうそう、「子どもだけで並ぶ」ということは、「どちらを前にして並ぶかを子どもが分かっている」ということも含まれます。突き当たりの教室なら一方向でいいのですが、「理科室が火事の時にはこちらを前にして並ぶ」「給食室が火事の時にはこちらを前にして並ぶ」ということ、その上で自分がどの場所に行って並べばよいかということを子どもが瞬時に考え、動くことができるようにしておかなければならないと思います。

「前へならえ」のしかた

日頃体育などで使っている「前へならえ」。手を前に伸ばしただけでまっすぐ並べるわけではありませんよね。

 子ども達には、「並ぶ時には、前の人の、その前の人の頭が、前の人の頭で隠れるところに移動し、手を前に上げたくらいの間を開けて並びましょう」と言います。つまり、まっすぐに並べるのは「目で」見ているからです。

前の人の頭で、その前の人の頭が
隠れていれば
まっすぐ並べています

前の前の人の頭が見えるようなら
自分は曲がっています

手を前に伸ばすのは、「座る場所を確保する」ためです。これができていれば、「座れ」と指示があっても、静かに座ることができます。

 さて、手を伸ばせば間隔を取ることは簡単にできます。手を上げずに、同じだけの間隔を取れるように日頃から訓練しておきましょう。私は授業の中でノートを見せに並ぶ時や、帰りの用意をするのにランドセルを取りに行く時、給食のおかわりをする時などに、目だけで「前へならえ」をして、前の人との間を空けるように指導しています。「あなたのおうちの人は、スーパーのレジでそんな風に前のおばさんにくっついて並ぶの?」と言うと低学年でも理解しやすいようです。

 これは大人なら自然とやっていることなのですが、子ども達には習慣がありませんから、例えば並んで体育館に入ってきた時など、前の人に続いて間隔を空けずに並んでしまいます。そうすると、列を整えようとして「前へならえ」と号令をかけると、子ども達は手を上げるスペースがなくてずるずる後ろに下がることになります。子ども達を座らせたい時にも、間隔があいていなければ、「座れ」の前に「前へならえ」と号令を掛けて、子ども達をずるずると後ろへ下がらせてから座らせなければならなくなってしまいます。せっかく前に歩いてきたのに下がらなければならない子ども達はイヤだろうなーと思います。

 会場が狭い時などに時々、「小さく前へならえ」などと言って、物の幅を説明する時のように胸の前に掌だけを出させて並ばせることがありますが、この場合はこのあと子ども達を座らせてはいけません。子ども達はぎゅうぎゅう詰めになって、これもずるずる後ろに下がりながら座ることになります。子ども達がかわいそうです。

指示に使う言葉

先生の目が二つとも見えるところに座りましょう」体育などで、子ども達をざっと集めて話をしたりする時に使います。低学年だと、先生の横や後ろにぺたっと座りたがるので。ちなみに、あんまり前の方の子は「先生が間違えて叩いちゃうといけないから、先生の手が届かないところまで下がろうね」と言います。

教室で、○付けにノートを持って並んでいたりする時「手を挙げないで、目だけで『前へならえ』してごらん」
どうしても横に出て前の子のを覗き込んでしまう子には「前の人の背中の後ろに立ちましょう」

後ろの棚にランドセルを取りに行くとか、帰りぎわの靴箱などで「友達にぶつからないように気を付けてね」と指導したい時、「友達にさわらないように上手に歩いてね」

教室移動の例

 さて、全校朝会などで体育館に子ども達を連れて行く時ですが。

まず何時何分に開会かを確認します。
普通ならその時間までに全員並び終わっていなければならないので、学校の全児童が体育館に入る時間を考えると、10分くらい前に入っておく気持ちで行くのがいいと思います。並ぶのにざわざわしてしまうような学校なら、「自分の学級が一番に行って静かに座っておく」つもりで、頑張って一番乗りをめざしましょう。その方が指導が楽です。

トイレに行かせた後、教室で「一言も喋らずに並ぶ」ことを確認して、廊下に並ばせる。
(こういう時はすぐに並べないといけないので立ったまま並ばせます)
その通りに子ども達が一言も喋らずに並べたら、小さい声で思いっきり褒めてあげましょう。誰か一人でも喋ったら「はい、残念でした」と全員を教室に戻し、座らせます。
(やり直しの時間も必要なので、初回は開会15分前くらいからすると良いでしょう)
「一言も喋らずに並びましょう」と静かに繰り返してもう一度。4月なら2~3回で成功すると思います。
喋る子が少なければ、その子だけに「自分の席にタッチして、黙って戻っておいで」と言うこともあります。

「一言も喋らずに体育館に行って座る」こと、「足音を立てないように気を付ける」ことを簡単に話してから出発。もしひそひそ話が聞こえたり、足音に気を遣っていない音が聞こえたりしたら、そのままUターンして教室に戻ります。
「なぜ戻ったか分かりますよね?もう一度行きますよ」
ほとんど体育館に着く手前とかなら、教室に戻るのでなく、10mくらい戻ったところで子どもに考えさせると良いでしょう。

体育館の中がしんとしているのが理想ですが、そうでなくても黙って入っていきます。入り口に関係なく、並ぶことになっている場所の、後ろから前へ自分が線を辿っていくつもりで誘導します。

大体子ども達が辿り着いたのを確認したら、手だけの合図で子ども達を座らせます。
(子どもが理解できない時は、一番前の子だけにわかる小さな声で「座りなさい」と言ってもいいでしょう)
その後、声を出さず身振りだけで、黙って待っておくように指示します。

並べる時のダメダメちゃんの例

&color(orange){▲};先生が「シーッ」と言っている。声、出してるじゃん。(ーー;)

&color(orange){▲};一番前の子どもが「前へならえっ!」「なおれっ!」「前から座ってくださいっ!」とか言っている。うるさくてしょうがない。

&color(orange){▲};もちろん、「前へならえ」とか先生が言ってるのも×。

子どもをしっかり指導できている学級は、黙って入ってきて、黙って座ります。先生も何も言いません。

社会見学・修学旅行などで班ごとに集合・点呼が必要な時

私の並ばせ方は、自己流ですがこんな感じです。↓

出発前の指導として、担任が立った場所を基点にして、1班はここ、2班はここ、3班は…とおよその場所を前もって見当づけさせておくこと

班長は、一番前に後ろを向いて立っておき、そこに班員が座っていくこと

(ただし、班長がまだ来ていなければ班員が代行すること)

班員が揃ったら班長が「○班揃いました」と先生に報告してから座ること

当然、報告以外は全て黙ったまま行うこと

で、私(担任)は、みんなに見えるように班の数だけ指を立てて、黙って立っておく。
報告があったらその班の指を折り曲げていくので、あと何班が揃っていないか一目瞭然。
揃っていない班は慌てて並ぶ。(^。^;)

こんなのは技術じゃなくて、「子どもを静かに並ばせたい」と考えたら、1年くらい教師やった人は誰でも思いつくことだと思いますが、一応文章化してみました。

だって、子どもは立ってるより座ってる方が静かなんだもん。おまけに班員が座ってて班長だけ立ってれば、班長は班員を把握しやすいし、遅れた班員は自分がどこに並べばいいかすぐ見える。それに、来てすぐ座った方が、全員並んでから座るよりゆったり座れるでしょ。並んでから座らせて、子どもがずるずると後ろに下がっていくのを経験したことのない先生はおそらくいないんじゃないかな。あれは嫌ですよね。

「並ぶ」に関わるちょっとしたこと(低学年向き)

体育館で終業式があった後など、出口が狭くてずっと待つことがありますよね。そんな時は、子どもを連れて空いたスペースを列のままあちこちどんどん行進させます。止まってると、お喋りしたり手を出して喧嘩になったりすることがあるのですが、歩くと、「先生がどこに行くかわからない」という緊張感からか、クスクス笑いながらついてきてくれます。だいぶ出口がすいたら、そのまま出ます。

静かに待っていて欲しいとき、「げんこつやまのたぬきさん」「おおきなくりのきのしたで」など、アクションだけでわかる歌を、黙って何度も繰り返します。じゃんけんだけでもいいですよ。声をあげてしまう子には「しぃ~っ!」と(これも音を出さずに)オーバーに制止して、また黙ってはじめからくり返し。子ども達と一緒に楽しみます。慣れると、子ども達は声を全く立てずに「勝ったー」と喜んだり、笑い転げたり、「もう一回しよう」と誘ったり出来るようになります。最後に、「もう少しだから、静かに待っててね」と小さい声で伝えると、後は自分達で黙って遊んでいます。

終わりに

 結局、「どんな子どもの姿をめざすのか」の具体像が担任にないと、「どう指導するか」が具体的に出てこない。結果、子ども達は頑張っても頑張っても叱られる。…ってことなんでしょうね。ノートを見る時や教材を片付ける時など、ちょっとした指導の積み重ねが「並ぶ」ことに現れるのですから、うまく並べないのは80%くらいは担任の責任だと思いますね。上手な学級は担任がいなくても「いつも通り」きちんと並びます。

 そうそう、早く並べないと思う時って、私達どうしても並んでいない子に目がいきますが、早く並んでじっと待っている子がちゃんといます。その子達と目を合わせて待ち時間を共有してみて下さい。早く並べた子を褒めていると、自然に顔がにっこりとなってしまいます。そして、心の中で「1,2,…」と数えてみると、実は並ぶのに20~30秒しかかかってなかったりするものです。そこですかさず「30秒くらいで並べたよ。すごいね~」ついでに「待ってる人の姿勢も良かったね~」これで全員がびしっとなって次の行動に移れる、という感じでやっています。叱るより褒める方が、自分も気持ちがいいですもんね。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • コメントありがとうございます。
    文字だけではなかなかイメージしづらい部分もあるなと思って
    イラストも付け加えてみました。参考になれば幸いです。

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