授業における教師の言葉がけ

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授業中における教師の言葉がけを意識して~考える授業への手立て~

指導業務に携わるようになり、いろいろな授業を拝見することが多くなりました。授業中に生起する教師の言葉がけは様々です。私は、今、教師の言葉がけが少し気になっています。教師の言葉がけが「考える授業づくり」において大きなポイントになっていると感じるからです。皆さんは、どのようなことを意識して、授業中の言葉がけを行っているでしょうか。

1時間の授業の中で、励ましや誉める場面は多々あります。私たちは、ともすると励ましや誉め言葉を使うという段階で留まっていないでしょうか。

1. その子の内面にまでその言葉は届いているのでしょうか。

2. その言葉はズレていないのでしょうか。

3. 時に立ち止まり、自己内省することが必要だと感じます。

4. どの子に、どのタイミングで、何のために、どのような言葉がけを意識すれば、自ら考えることに直結するのでしょうか。

私なりに取り組んできた、意識してきたことを紹介します。

社会科授業における教師の言葉がけを例に

社会科は、社会認識を踏まえた公民的資質を育成する教科です。簡単に言うと、社会事象をもとにして、より良いくらしを築く知恵を創造することです。そこで、子どもと生活の結びつきの中から、子どもたちが消費者として生活者としての自分自身を見つめるような言葉がけを大切にしたいと考えます。

特に、話し合いの場において、「自分がとる立場(主張や意見)」、「主張するその根拠」、「よりよいものを創り出そうとする態度」などに視点をおいた言葉がけを意識しています。子どもと教師、子ども同士がお互いの立場を尊重しながら共同してより良い社会のあり様を考えることが必要であると思うからです。

次に、授業場面をもう少し限定して考えてみます。

1.問題をもつ場面

一枚の絵や資料をもとにその子がもっている経験知や既有知識などの情報をどれだけ引き出せるかがポイントとなります。「数・量」、「目のつけどころ」、「疑問や気づき」を大いに誉めることで事象の様々な面が見えてきます。出てきた感想や意見をカテゴライズする中で、「A君の疑問から~」、「Bさんのこだわりは~」など、一人の子又は、複数の子の問題意識に焦点化し、クラス全体の学習問題となるような言葉がけを行います。

2.問題を追究する場面

問題が明確になると必ず家で調べてくる子がいます。まずは、そのことをおおいに認め取り上げることを意識します。インターネット資料や、図書資料はもちろん、実際に相手先に電話をしたり、尋ねたりするなどして調べたことはなるべく具体的な方法も含めて、紹介しています。

次の日や後日、同じようにまねた子にもその行動力をしっかりと誉めるのです。そうすることでその子自らが手に入れた資料や情報という意識が芽生えます。発言の際、その資料はその子の根拠として活用され、足で稼ぐことの重要性を実感します。これらの励ましや誉め言葉が学習活動を進める大きな原動力となります。

3.問題について議論する場面

私は、基本的に、議論を行う時に前もって座席表(A4紙に座席の順に子どもの立場や考えを記入したもの)をつくります。調べてわかったことを発表するだけなら必要ありませんが、追究活動から得たその子の考えや意見の広がり等をある程度掴んでおくためです。

話し合いの中で、座席表をもとに、発言されない意見(特に,発表しにくい子)を取り上げたり、同じ(違う)考えをつないだりするための教師用のデータとしています。

ここでは、子どもに十分しゃべらせたり、考えさせたりする場や機会を与えることが大切です。教師と子ども、子ども同士で共に学ぶという構えをつくるのです。

その言葉がけとして、「Cさんの意見をどう思うか」、「同じ(違う)考えのD君はどうか」など一人の発言をみんなで分かち合えるように働きかけます。また、一人の子の資料や考えにこだわる場を設定することもあります。例えば、「Eさんの資料によると~」、「F君の考えに賛成か?反対か?」など意図的に取り上げることで、取り上げられた子は自分の意見や資料が、みんなの役に立ったと感じます。周りの子にとっても「G君の意見のおかげで、気づけた」という意識をもつのです。

例え、その子から出されたものが一般的な資料や意見であっても、Cさんの資料・Fくんの意見という位置づけをすることで、子どものこだわりや意識が変わるという手ごたえを感じています。その気にさせるということです。

4.かかわりを深める場づくり

かかわりを深めるには、わからないことや、間違っているかもしれないことを遠慮なく出し合えるような学習集団・雰囲気が重要です。私は、45分間ずっと座学で学習を進めるだけでなく、同じ意見や立場同士が自由に席を離れ交流したり、黒板前に集まったりするなど、ちょっとした動きを取り入れる言葉がけをしています。このような言葉がけは子どもの緊張をほぐし、身体をひらく上で大変有効だと感じています。

全体の中で発言しづらい子にとっても、小グループでの交流は意見が出し易いようです。また、活動中の様子を取り上げ、全体の中で認め励ます言葉がけを行います。例え、考えが間違っていたり、不十分であったりしても自分たちの力で考えたという自信と安心感につながっているように思います。動きのある授業やメリハリある授業には教師の言葉がけは重要です。

以上、今回は社会科における実践を紹介しましたが、もちろん他教科でも同じ場面は多いです。いずれにしても、教師の言葉がけがその子の願いに直結するものであるためには、授業中はもちろん生活場面においてもその子をしっかり探らなければなりません。教師の言葉がけが妥当かどうか常に問い直す視点が必要です。そのためには、その子との対話や振り返り、表現物などに見られる子どもの変容に敏感でありたいものです。その子の内面に迫るには、ハウツーではない教師の日々の絶えまない努力が求められます。

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