椋鳩十さんの物語を読もう

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「大造じいさんとガン」では、ガンの姿を見て残雪に対する気持ちの変わった大造じいさんが描かれている。これと同じように、動物の姿を見て人の気持ちが変わるものかどうかを考えた。

動物が人間の生き方までを変えさせることができるだろうか? 自分の考えをノートに書こう。

子どもたちは、自分の予想をノートに書いた。多くの子が、
人の気持ちを変えさせることができると考えた。

  • 動物は自分に正直に生きている。仲間を助けるために自分の命を捨ててまで戦ったり、自分の何倍もある食べ物を巣穴に運んだり、でも人間は ちがう。おかねもうけのために鳥を殺したり遊びのために動物を殺してしまったり、いけないことだと知っていてもやってしまう。人には自分に正直に生きようとする心が必ずある。仲間のために戦うような正直な動物を見て人の心は変わるのだろう。 (J.O)  
  • 動物のおこないを見て生き方まで変わってしまう人もいると思う。だけど同じおこないを見ても少しも変わらない人や少ししか変わらない人も いると思う。人間のもともとのによっていろいろ違いがあると思う。いろいろなことに気づくひとやいろいろ気づかない人が人間のもともとの違いだと思う。 (H.I)  
  • 例えば障害を持って生きていく勇気がない人が犬(盲導犬)と出会うとその人は気軽に散歩もできるし今まで知らなかったことをたくさん知ることができると思う。そうすればその人はその犬と友だち以上の関係になれて共に楽しく生活していけると思う。友だちがいなくてもできなくても動物に言葉からではなくやさしさから勇気づけられて楽しく生活していけるようになると思う。だから動物は人の生き方を変えさせることができると思う。 (S.O)  
  • 動物のおこないを見て生き方まで変わってしまう人もいると思う。だけど同じおこない見ても少しも変わらない人や少ししか変わらない人もいると思う。人間のもともとの気持ちによっていろいろと違いがあると思う。人間のもともとの気持ちというのはいろいろなことに気がつくかどうかということ (R.I)

このように子どもたちのほとんどは、動物は人間の生き方まで変えさせることができると考えた。そこで椋鳩十さんのほかの本を読むことにした。用意した物語は、「月の輪熊」「金色のあしあと」「片耳の大シカ」である。「月の輪熊」は捕らわれようとする子熊を母熊が助ける姿が、「金色のあしあと」は子ギツネを助けるために親ギツネの姿が、「片耳の大シカ」は敵であるはずの人間を暖める鹿たちの姿が生き生きと描かれている。
 

 

このテーマに迫るために次の4点に注意しながら読んだ

  1. 大造じいさんのように気持ちの変わった人はいるか
  2. 残雪のように、人の気持ちを変えた動物は何か
  3. 人の気持ちは、物語のはじめと後ではどのように変わったか
  4. 人の気持ちを変えた動物のおこないは、どんなことか

子どもたちは自分の読みたい物語ごとグループに分かれた。グループごとの様子は次のようだった。
 
月の輪熊グループ

1~4のどの点も早い段階から全員一致していた。
「大造じいさんとガン」の話とよく似ていることに気づいた。どこがどのように似ているかをさがす活動を小グループに分かれて検討していた。

金色のあしあとグループ

正太郎の気持ちの変化にはすぐ気づいた。その後両親も親ギツネのしたことを知って心が変わったのではないかということを集中的に話し合っていた。

片耳の大シカグループ

気持ちの変わったのは、吉助おじさん、次郎吉、ぼくの3人なのか、ぼくだけのひとりなのか意見が分かれて激論となった。
物語の「ぼく」は大切な存在なのか
 どのグループも話し合いは未熟ながらも一生懸命に考えている様子がわかった。

グループごと読んだ話を紹介していく中で、動物が人の生き方までを変えさせることができるか話し合った。

動物が人間の生き方までを変えさせることができるか、グループごとに学んだことを紹介しよう。

~【月の輪熊 グループ】

  • わたし、荒木が気持ちが変わった。
  • いけどってみたいものだ → 涙がポロポロこぼれた
  • 母熊が滝に飛び込む姿を見て心が打たれた

 【金色のあしあと グループ】''

  • 正太郎、お父さんの気持ちが変わった。
  • にくらしく思っていました。→ 感動したのでした(ありがとうという気持ち)
  • 親ギツネが子ギツネを助けた姿を見て、気持ちが変わった。

【片耳の大シカ グループ】

  • ぼく、吉助おじさん、次郎吉さん
  • 何とかいけどってみたい → よしなよ次郎吉さん
  • 鹿に命を守ってもらったことで、鹿を捕ろうとするのをやめた。

 
このように子どもたちは証拠の文をあげながら、人間・動物・気持ちの変化について語った。

動物が人間の生き方まで変えさせることができると思いますか?

と尋ねると全員が「変えさせるととができる」と答えた。そこで、

本当に人の生き方まで変えさせることができるのですか。

だって大造じいさんは猟師、荒木は釣りの案内人、吉助・次郎吉は猟師、正太郎のお父さんは親なのです。この人たちは生活がかかっていたり、子どもを育てていかなくてはならないのです。猟師や釣りの案内人をやめることができますか。子どもが危ない目にあっても放っておけますか?

こうやって子どもに切り返すと、子どもたちは困ったように顔を見合わせていた。少し難しかったようなので、次のように問い直した。

動物のおこないを見て、人は何を見つけたのですか

  • 仲間を助けようとすること
  • 動物をむやみに殺すことはやめよう
  • 自分を犠牲にして、子どもを助けようとする気持ち
  • 仲間を助けようとしたり、子を思う心に自分の命をかけたこと
  • 母熊が自分の子どもを助けようとする気持ち
  • 子どもが使ったらかわいそうだと思った。ただの遊びのつもりで殺してしまうのは人殺しと同じことだと気づいた
  • 動物を少しでも守りたい
  • 狩りはただ遊びでやることは悪いこと
  • 自分が何をしようとしていたのか気づいた
  • 動物に対する気持ちは変えることができる

などの考えが出された。

仲間を守る、子どもを助けるをもう少し別の言葉で言うと何と言いますか。

  • 愛情
  • 友情

言葉が難しかったがヒントを出しながら、愛情や友情という言葉があてはまるのではないかということに気づかせた。

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