1 五月と十二月を比べて
五月と十二月では、どちらか明るい世界でしょうか。
子どもたちは何の疑いもなく〈五月〉と答えた。どうしてかを尋ねると、
〈五月〉
- 五月の方が明るい色だから。
- 青とか黄金などの色があるから。
そこで本当に五月が明るい世界だと言えるかどうか、いくつかの視点をもとに読み深めていくことにした。まずは光の変化についてである。
五月と十二月の光について目を向けてみよう。それぞれの月で光のつく言葉は、どんな言葉がありますか。光のつく言葉を全部書き出して、どのように変わっているか変化を見よう。
日光の黄金は、夢のように水の中に降ってきました。
魚が今度はそこらじゅうの黄金の光をまるっきりくちゃくちゃにして、おまけに自分は鉄色に変に底光りして。
それっきりもう青いものも魚の形も見えず、光の黄金のあみはゆらゆらゆれ、あわはつぶつぶ流れました。
〈十二月〉
その冷たい水の底までラムネのびんの月光がいっぱいにすき通り、天井では波が青白い火を燃やしたり消したりしているよう
水はさらさら鳴り、天井の波はいよいよ青い炎を上げ、やまなしは横になって木の枝にひっかかって止まり、その上には月光のにじがもかもか集まりました。
このように光だけを見ると、単純に〈五月が明るい世界〉とはいえないようだ。子どもたちもそのことに気づき始めた。
五月と十二月の光は、いい方(+)悪い方(−)のどちらに変化したと言えるでしょうか。
〈五月〉悪い方(−)に変化した
- 初めは“夢のように”だったが“まるっきりくちゃくちゃ”になってしまったから。
- “それっきりもう魚の形も見えなくなって”しまったから。
〈十二月〉いい方(+)に変化した。
- 青白い火がいよいよ炎をあげたから。
- 初めは“月光”だったのに、あとでは“月光のにじ”となって“もかもか”集ったから。
2 五月と十二月の出来事
次にこのような変化を起こした五月と十二月の出来事を検討した。
五月はマイナスの変化、十二月はプラスの変化をしている。このようにいい方、悪い方に変えた大きな出来事は何だろう。
まず子どもたちが個人で、どんな出来事があったのかを考えた。
〈五月〉
- カワセミが魚をとっていった。
- 魚がこわいところへ行った。カワセミが魚をとった。
- カワセミがクラムボンや魚たちをとっていった。
〈十二月〉
- カニがやまなしを見つけて追った。
- カニがやまなしを熟して食べようとする。
- カニがやまなしを見つけて追いかけた。
次に主語を限定して一文で表した。こうすることで、この物語の主題がよりわかりやすくなってくる。
五月と十二月の出来事を( )が( )を( )して( )のような文に直そう。五月は「カワセミが」 十二月は「カニが」で始まります。
個人の考えを出し合って、班ごと文を考えた。
- カワセミが魚を殺して食べた ←→ カニがやまなしを見つけて追った。
- カワセミが魚をとって食べた ←→ カニがやまなしを追いかけて、お酒になるのを待った。
- カワセミが魚をさして食べた ←→ カニがやまなしの匂いにつられた。
- カワセミが魚をとらえて食べた ←→ カニがやまなしを熟して食べようとした。
こうして比較すると、明るさの違いがより鮮明になってきた。
出典:シリウス/静岡教育サークル http://homepage1.nifty.com/moritake/index.htm
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