1 カニの気持ちの変化した個所をさらに細かく分析
カニの子どもの気持ちが変わったのは、“首をすくめて”~ “おいしそうだね。お父さん”のうちどこだろう?
前回の授業で、次の3カ所があげられた。どれが最もよいのかを検討した。
A:やまなしの丸いかげを追いました
B:おどるようにして
C:おいしそうだね、お父さん
の三カ所があげられた
〈A〉やまなしの後を追いました。
- 最初はカワセミがこわくて、首をすくめていたけれど、その時お父さんが教えてくれた。だけど、その時もし恐がっていたら“おどるようにして”やまなしの円い影を追うことなんかしないと思うから。
- その後に“底の黒い三つのかげ法師が合わせて六つおどるようにしてやまなしの円いかげを追いました”と書いてあるから。
- 恐かったら追いかけないと思う。
〈B〉おどるようにして
- 恐かったら追わないし、踊りもしないと思う。
- “おどるようにして”と書いてある。踊るということは、こわい気持ちではなく、愉快な明るい気持ちだから“おどるようにして”というところだと思う。
〈C〉おいしそうだね、お父さん
- 「カワセミだ」って言っているときは“首をすくめて”と書いてあるから怖がっているけれど「おいしそうだね、お父さん」と言ったときは安心している感じだから。
- 最初はカワセミだと思って“首をすくめて”言って、やまなしなど待ってやっとやまなしだと分かって、おいしそうだと思ったから。
このように大勢の意見は〈A:やまなしの後を追いました〉に傾いた。しかし、もう少し深く考えさせたかったので、
“首をすくめて”から“やまなしの後を追いました”の間に、カニの子どもの気持ちが変わったことを表す言葉があるのだけれど、それがどれだか分かりますか。
あらためて文章を詳しく読ませた。すると、
- “なるほど”と書いてある。
とキーワードに気づいた子がいた。この気づきから意見を変更する子が多数出た。
〈なるほど〉0人→15人
- “なるほど”のところで、カニの子どもは納得したみたいな感じ。“なるほど”と思ったから“いいにおいでいっぱい”なことに気がついた。
- “なるほどは”分かったみたいな言葉。ここのところでいいにおいて、いっぱいなことが分かった。
- 「なるほどわかった」と言うことがある。だからここのところで変わった。
- “なるほど”のときに、いいにおいでいっぱいになったから、ちょうどここで変
わった。
最終的にどこでカニの気持ちが変わったかまとめてもらうと、
- 「なるほど」には、分かったという意味でもあるから、お父さんの話した言葉を聞いて、なるほどと思って気持ちが変わったと思う。
- “なるほど”で、気持ちが変わって、いいにおいだからついていった。
- 「なるほど」は、そうかとか分かったという言葉だから、カニたちもやまなしと分からなくても、やまなしのいいにおいがいっぱい広がったから、はっと気がついたと思う。
このようにカニの子どもたちは、五月のカワセミのときから、気持ちが変わったことが分かった。ではどんなふうに気持ちが変わったのだろう。
カニの子どもはどんなふうに気持ちが変わったのでしょう。
思いつくものを次々と黒板に書かせた。
- おいしそう
- 楽しい
- いいにおいで嬉しい
- 食べたい
- こわくない
- 追いかけたい
- もう大丈夫だ
- 面白い
- 落ちてきたのはカワセミではない
黒板にずらっと並んだものを一つずつ読み上げ、賛成だと思うものには拍手をさせた。〈楽しい〉〈嬉しい〉などが支持を得た。
2 やまなしの象徴しているもの
次にこの物語のテーマに迫るため、やまなしの象徴するものについて考えた。
やまなしの象徴しているものは何だろう。カワセミと比べながら考えよう。
象徴というのは難しいのだが「形のないものや気持ちを具体的なやまなしを通して表そうとしているものだよ。やまなしによく似合う言葉だよ」と説明した。子どもたちがあげたものは
- 自然の厳しさ
- 生きる
- 自然の恵み
- 生きる喜び
- 明るい
- 希望
- 助け合う
- 自然の美しさ
- 自然の優しさ
こうしたものであった。どれがいいと思うか挙手させると、〈自然の恵み〉〈助け合う〉〈自然の美しさ〉〈生きる〉などが多くの支持を得た。
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