ほめて育てる

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目次

1 子供はほめて育てよ

「子供はほめて育てよ」と、よく言われますが、どの教師でも上手に子供をほめることができるわけではありません。生得的・経験的に上手に人をほめながら人間関係を作っていくことができる教師もいれば、人をほめるのが苦手な上に、ほめたときには嘘っぽく聞こえてしまうような口下手の教師もいます。
ほめることに関する書籍はたくさん出ています。Edupediaにも「ほめる」「ほめ方」などのタグで記事が見つかりますので、是非ご参照ください。
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変化を注視して、過程をほめる
「ほめるな」 伊藤進 (著) ◆ 書籍紹介

2 上手にほめられる人

ある教師にサッカーの授業を参観させてもらったときのことです。卒業前の最後の体育の授業です。 30歳過ぎの女性、N教諭で、それほどサッカーの授業に力を入れているわけでもなく、体育の専門家でもない方の授業でした。研究授業など特別な授業ではなく、日常の授業でした。6年生の子供たちでしたが、特別にサッカーが上手なわけでもありません。彼女は練習や試合をしている子供たちに実によく声をかけます。「どう動けばよかった?」「そっちのスペースが開いているよ」「いまみたいにすればいいね」などなど、子供の動きをよく観察しながら、その場その場で個人的に寄っていって話しかけます。

授業の最後には全員を集めて話しました。「S君ががんばって守っていたね。ボールが来たときにスーッと出てきて、ボコッとクリアしたよ。」と、ちょっとユーモアをこめた感じで表現をするとクラスの子供たちが「ふふふ」っと笑いました。S君も、少し照れながら笑っていました。 S君はあまり運動が得意ではない子供で、クラスの子供もそれを知っているようです。

後でN教諭に聞いてみました。「最後の最後にS君をほめたのは意図的だったの?」するとN教諭は「全然そんなつもりはなかったのですが・・・」と話しました。多分、N教諭は無意識のうちにサッカーが上手でないS君を気にかけて観察しており、授業の最後でほめるという指導ができるのだと思います。それは、彼女が数年の教師生活だけではなく30年をかけて身につけてきたコミュニケーション能力なのだと思います。彼女が弱者を気にかけていることは普段から、意識的・無意識的の両面、あるいは言語的・非言語的の両方で、メッセージとして出しているのだと思います。そのメッセージにはクラスの子供たちにも明確に伝わっていたり、何となく伝わっていたりするのではないかと思うのです。

3 微細な技術

教師のそういった指導の技を明示化することはなかなか難しいし、たとえ明示化されても誰にでも真似できるものでもありません。

ただ、漠然と「ほめよう」と思っても、うまくはいきません。微細な技術が必要とされます。

クラスの中で誰をほめるのか。・・・苦手な子供を?落ち込んでいる子供を?ほめられる事が少ない子供?

ほめる時にどんなほめ方をするのか。・・・オーバーに?そっと?ユーモアをこめて?

何でほめるのか。・・・大きく成長したとき?ちょっと髪形が変わったとき?

教師のコミュニケーション力が試されます。

たとえば容姿をほめるのはいいのか悪いのか。若い教師が美人な高学年女子をつかまえて、「○○さんって、かわいいよね」などとやってしまうと、本人に嫌悪感を持たれたり、周囲にえこひいきと反感を買ったりということになりかねません。さらりと、これを言ってのけることができるのなら言えばよいと思います。

4 伸ばしてほめる

できれば本当に成長したところをほめてあげたいですね。たいしてできていないのにほめの大バーゲンをやってしまうと、この教師は甘いと、子供に見くびられてしまう恐れもあります。伸ばしてほめる。そうするには、教師が子供の成長をプロデュースしなければなりません。ほめてあげたい子供を伸ばせるように、重点的にその子供に労力を注ぐというのもひとつの方法でしょう。そして、伸びる瞬間をよく観察しておくこと。口下手な人はこういったことを意識していないと、なかなか上手にほめることができません。ほめ上手な人の技を見習いながら、自分のコミュニケーション力を高めて生きましょう。

5 ほめる材料を見つける・作る

伸ばしてほめるにしても、ほめたい子供がなかなか伸びないということもあります。それどころか、ほめてあげたいのになかなかほめるようなことをしてくれない

授業中、よそ見をする、人としゃべる子供。ずっと怒っていませんか。怒られ役になってしまい、本人は「どうして僕ばかり」と思っていたり、逆に開き直っていたりします。そんな子供でも、10回に1回ぐらいは教師の方を向いて話を聞くこともあります。その時を見逃さずに、「おっ、今、いい顔して話を聞けているね。その集中力、大事にしてね。」などと、ほめるのです。けっこう難しいテクニックですけれどね。

もし、あなたがお願い上手なら、何かを手伝わせることでほめるというのもいい方法です。これなら伸ばす苦労がいりません。手伝ってもらうこともできて、一石二鳥です。「この荷物、職員室まで一緒に運んでくれない?」とかお願いして、職員室まで連れて行ってほめます。「はーー、助かった。校長先生、○○君、役に立つ優しい子供なんですよぉ。」なんてちょっとオーバーにほめるといいですね。あなたにほめてあげたいという気持ちがあるならば、少々演技がかっていても、気持は十分伝わると思います。

成長する喜びを子供や保護者と分かち合う。そんな心構えで持って指導ができるようになるといいと思います。

6 過程をほめる

過程をほめることに注意を払うこともだいじです。

結果をほめると、ほめてもらえない子が出てくるからです。でも、「少しよくなった」ならだれでもほめることができます。

みんなが、「頑張ればほめてもらえる」ということで(がんばること)の大切さも感じてもらいたいとも思っています。

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