感動ある学級を生み出す活動

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目次

1.1 『感動ある学級を生み出すために』

(レポーター:佐藤 孝弘)

「教育夏まつり2010」 http://www.kyouikusaikou.net/project/fes2010.htmlにおける文科省調査官である杉田先生の講座のレポートです。

1.2 講座の概要

現役の文科省調査官である杉田先生が日本全国の学校を実際に見て得た経験を通じて、学級崩壊や学力低下が嘆かれる今日の学級状況を立て直すべく、学級の目的や理想を示して下さいました。そして、その目標を達成できたらどのような人間が育成できるようになるか、そしてそれらの理想を実現するために必要な教員としての技術やあり方についても話してくださいました。

1.3 授業内容

(1)学級の性質

学級は生徒たちに勇気と希望を与えるためにあります。学習に重きを置くのは塾の役割であり、また、感動ある学級は子供の精神的成長を促し、最終的に学力の充実にもつながるのです。

「感動ある学級」とは、一つの学級が一丸となって一つの目標を達成することにあります。例えば、小学6年生であれば、卒業式その日の目標を立て、そこに向けて子供たちを励ましていくことが教員の目標となります。そうすることで、子供たちは達成感と仲間との協調性を学ぶことができます。「自由」が協調される今日において、この「協調性」は大きな意味を持ちます。お互いが期待・要求・切磋琢磨しあい、自分の力を発揮する場としての学級こそ求められているのです。

そのためには学級全体で一つの目標を設定し、みんなで一丸となって目標に向かって努力していくことが重要です。ある新任教師は4年の時から卒業式当日にみんなで合唱を完成させることを目標に、学級を進めていきました。結果、子供たちは素晴らしい合唱を卒業式で発表することができ、その先生には生徒から感謝のメッセージが送られました。結婚式には多くの生徒が駆け付けたそうです。この様な学級運営こそが望ましいものなのです。

また、こうした活動を通して、子供たちの自信を育てることができます。これは、競争によって得られる壊れやすい自信ではありません。次の競争で簡単に折れてしまう優越的な自信に対し、努力をして目標にたどり着くことで得られる達成的な自信は、絶対的なもので、簡単には壊れないからです。

(2)学級目標の設定

では、その様な学級運営のためには、どのような目標設定が求められるのでしょうか。 せっかく設定した学級目標でも、簡単に、個人で達成されてしまっては、達成感も協調性も育ちません。従って、高い目標とチームとしての一体感が求められる学級目標が望ましいのです。杉田先生はサッカーワールドカップの日本代表を例にだされていました。日本代表は始め誰もが無理だと思った目標に対して、選手、裏方一丸となって挑戦していったのです。

また、子供が一丸となって挑む以上、みんなが納得できる目標設定が求められます。よって、教師の側からのみ目標を提示するのではなく、教師、保護者の側から学級目標について十分な説明をした後、子供の側から学級目標を考えさせるべきなのです。そうすることで、子供の心を教師へひきつけることもできます。「いじめのない学級にしたい」という意見が出ることで、いじめに悩む子に対し、「いじめは絶対にダメだ」と明らかにすることができるのです。 

(3)目標達成のための子供の努力・挑戦

学級目標を設定したとして、子供たちの努力・挑戦する姿勢が大切になります。子供たちが力を発揮できる場を整えることが、教師の役割となるのです。そのために、杉田先生はいくつかのポイントを示して下さいました。

①「4コマ漫画」の存在

30人の生徒がいたら、30通りの目標があります。ここで、systematicな指導をしてしまっては、誰が教師でも同じということになってしまいます。また、30通りの目標には30通りのチャンスがあります。

その機会を逃さないために、生徒一人一人について4コマ漫画を作ります。これは、生徒に対し「まだ頑張れるのに」、「この子にはこういう舞台があればなぁ…」等のイメージが浮かんだときに、その場で2コマ目、3コマ目に書き込んでいくものです。そうすることで、いざそういったチャンスが訪れた時に逃さずに、即座に対応することができるのです。

②効果的な学級運営の工夫

生徒が頑張った時に褒めるのは当然ですが、褒め方にも、生徒の心に訴える、効果的な褒め方があります。思春期の子供にとって、友達が褒められるのは「ねたみ」の原因になる場合もあります。そこで、特にグループを作りがちな女の子の場合、仲の良い子に掃除の時間に「○○ちゃん最近頑張っているね」と間接的に褒めてあげるのが効果的です。そうすれば必ず本人の耳に入ります。

また、小学生にとって親の存在・影響は想像以上に大きい物です。したがって、親の心をつかむことも重要です。親に「あの先生はダメだ」と言われてしまっては、子供にもそのように思われてしまうからです。そこで重要なのが、家庭訪問の機会です。親が子供のどこを褒めているかを調べ、そこを家庭訪問の際に親の前で褒めるのです。親は「この先生、供のことをよく分かっている」と認識し、一年間、心を離さずに置くことができます。さらに、親への電話にも気をつけるべきです。宿題や遅刻など、子供のマイナス面ばかりを報告するのでは、自分の力不足を吐露しているようなものです。その様な課題は自分で処理し、親への電話では子供の頑張っている点こそを伝えるべきなのです。

(4)目標の達成

上記のように個人個人の目標を決定し、舞台を整えるだけが教師の役割ではありません。生徒を舞台に立たせた以上、教師が徹底的に鍛えてやらなければなりません。その際、「期待」と「要求」が重要になってきます。目標にむけて動き出した生徒に対し、教師は常に「期待」し続けなければなりません。そして、「期待」とは、生徒に対する「要求」と表裏一体の関係にあります。「期待」し、生徒に行動を「要求」する。そしてそのまま放置するのではなく、生徒を徹底的に鍛えていくことこそが、教師の役割なのです。そして生徒個人が目標を最後に(例えば6年生であれば卒業式その日までに)達成することが、「感動ある学級」運営になるのです。

1.4 当日の教室の様子・反応

現役の文部科学調査官が授業をされるということで、授業開始前から教育関係者で教室がにぎわっていました。授業中の受講者たちは少しでも多くの知識を持ち帰って今後の活動に活かそうと懸命にメモをとりながら聴いていました。先生が次々と繰り出す「感動ある学級」の映像や音声にみなさん感動していたようです。

1.5 編集後記

私はこれまで人間関係の築き方や人間性のルーツを学級に求めたことがなかったので、杉田先生の授業を拝聴して新たな課題や視点を発見することができたと思います。何が学校本来の目的なのかがわからなくなり迷走を続ける今の日本には必要な話題だということがわかります。抽象的な制度問題を話し合う前に、理想の学級のように教育の目的・目標を国民一人一人が把握し、努力をする必要があると思いました。

杉田先生のように経験の豊富な方から教育者にむけての今回のような授業が今後もっと活発に行われることを願っています。

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