1 総論(スピード・テンポ・タイミング)
モジュール授業(学習)とは、現在行われている、いわゆる「朝学習」のことではない。いわゆる「脳トレ」である。
まず、毎日同じことを徹底的に反復学習することがキモとなる。簡単な読み書き計
算の反復学習が脳を活性化させることは科学でも明らかにされている。
また、山口県山陽小野田市では生活習慣の改善と平行してモジュール授業を導入したことで、全児童の知能指数の平均が102から110に上昇した。知能指数は鍛えれば伸びるのである。
その伸ばし方にもキモがある。それは、スピード・テンポ・タイミングだ。主な学習は音読と計算であるが、それらの学習をスピード感を意識して行う。スピード感を意識できるよう、教材はテンポよくできるものを選ぶ。そして、児童をしっかりと見て、タイミングの良い指示を出す。
よくこのことについて、「ついて来られない子はどうするのか」との質問がなされる。
結論を述べると、ついて来られない子に合わせてはいけない。重要なのは、教師のスピードについてこれるよう、子どもを鍛えることなのである。モジュール学習は、毎日同じことを繰り返す。そのため、最初はついて来られなくても、繰り返すうちに子どもはついて来られるように成長する。教師は子どもに合わすのではなく、子どもがついて来ることができるようになるよう、指導を磨いていくことこそ重要なのだ。
2 音読
まずは発声を確かなものにすることが大切である。
口の形に注意しながら、しっかりとお腹から声を出すことを心掛ける。教材として
は、「五十音」が良い。毎回、冒頭にこれをやる。
そして、いくつかの音読教材をテンポよく読む。注意しておかなければならないのは、決して「朗読」ではないということ。国語でやるような「表現読み」などは避け、あくまでテンポを意識する。
教材もテンポよく読みやすいものを選ぶようにする。
古典における五七調や百人一首などの五・七・五・七・七、簡単な漢詩の五言絶句などは意味は難しくてもテンポよく読みやすい。ここではあえて意味は分からなくても良い。推奨する教材については、「徹底反復音読プリント」(小学館)にまとめられている。
3 計算
百ます計算が中心となる。
重要なのは、単純な計算を暗算で高速に解いていくことである。
複雑な計算や、いわゆる「考えさせる問題」は適さない。そして、一つの課題にかける時間をあまり長く取らない。目安としては、5分を限度にクラスの8割の子どもが終えるくらいの時間である。
また、百ます計算は、問題(文字の並び)を変えずにやる。
同じ問題を反復することで、子どもは2週間もたてばおよそ半分の時間でやるようになる。これは「やればできる」という子どもの自信に繋がる。文字の並びを変えた方が良いように思えるかもしれないが、これはかえって逆効果である。経験からも、文字の並びを同じままやった方が子どもも意欲的で集中度が高く、また基本的な計算力も、定着度が高い。
競争相手は周りではなく、自分自身であることを子どもに意識させる。
時間を区切るのは、できない子を見捨てることでは決してない。4分かかっていた子が2分でできるようになるのと同様、5分間で百問できなかった子が百問できるようになること、解く問題数が倍になるということは、その子の伸びなのである。そこをしっかりと指導者が見てとり、評価することが重要なのだ。
子どもに「速く解く」ということを意識させるために、百ますを一列ずつにした「十ます計算」から始めるのも一つの方法である。特に低学年や初めてます計算に取り組む場合は、十ます計算から始めた方が個人差が現れにくく、集中した雰囲気を作り易い。
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