授業中における教師の役割を考える その2

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学びのコーディネーターとしての役割

前回①「ひきだすこと」に引き続き、【教師の役割】について、考えてみたいと思います。

教師は単に教えるというだけでなく、子どもの学びを組織し、学びの方向性を指し示していくという意味で、学びのコーディネーターとしての役割が重視される。

今回は、②「つなぐこと」③「もどすこと」について提案します。

どの教科や単元であれ、その子なりの学習経験や生活経験、興味関心などからそれぞれの学習につながる知識やイメージをもっています。決して、子どもの認識は白紙ではありません。その子なりの見方や考え方を①「ひきだす」の中で、子ども同士の意見や考えを②「つなぐこと」、そして③「もどすこと」で、本時のねらいへと整理、焦点化させていきます。これらは、一般的に、授業中における「話し合い活動」の中で展開されています。

教師の役割 その2 ②「つなぐこと」③「もどすこと」

②「つなぐこと」

その子から出された考えに対して、即座に教師がかえすのではなく、他の子へと投げかけます。例えば、「○○さんの意見と同じ人?」、「○○さんの意見をどう思う?」「○○さんと□□さんの意見は似ているね。」など一人の発言をみんなで分かち合えるように働きかけます。ばらばらの発言よりも、はじめは同じ意見(考え)でつないだ方が、子どもは発言しやすいように思われます。また、発言が難しければ、○×や挙手による意思表示も考えられます。いずれにしても、クラス全員の子に問い返し、意見を持たせるのです。子ども同士がかかわり合う場を一人の子の考えを②「つなげること」で作り出します。ある意味、全員が考えざるをえない状況へと追い込んでいくことが必要です。ここに、自分の発言が自分たちの発言となり、子ども同士の相互作用が生まれるきっかけになります。子どもと子どもをつなぐのは、教師の重要な役割です。

※授業中における指名の方法については、
https://edupedia.jp/article/53233f83059b682d585b59b8

③「もどすこと」

教師が、子どもの意見を②「つなぐこと」で、学級全員を巻き込んでいきます。そして、その中の意見に対して、賛成や反対がでてきます。また、同じような意見でもその根拠を整理すると、他者との僅かな解釈の違いがあります。同じ言葉や事象、数値に目を向けることで、微妙な根拠の違いや解釈の違いに気づくことはよくあります。教師は、子どもとともに、これらを整理し、「考え」を比較したり、分類したり、関連づけたりする場を設定します。③「もどすこと」とは、子ども一人一人の意見から次の段階へと”考える視点”を積極的に与えることです。その際、考えることの手立てや視点を明確にして、言語化させることが重要です。このように、子どもの意見を整理し、③「もどすこと」で、協働思考や批判的思考を身につけていきます。ねらいや内容、時間等により、ペア、小グループ、同じ立場グループ、自由グループ等のグループを活用します。ここで注意することは、何を話し合うのか明確することとともに時間設定をすることです。私の失敗経験から、やたらと時間をかけてしまい無駄な時間が多くなったということもありました。

話し合いの内実を探ること

例えば、30人のクラスで、発表者が10人程度いれば、授業者にも参観者にも活発な話し合いの授業であるという印象を与えることでしょう。話し合いを終えた授業者の反省を聞くと、(1)いろんな意見が出た、(2)一生懸命やっていた、(3)考える力がついてきた等が挙げられます。確かに、授業者は、子どもたちの育ちを実感している様子であり、そこには日々の努力の積み重ねがあります。

しかしながら、適切な【教師の役割】がなされているかどうかは、「話し合い活動」の内実を分析する必要があります。
活発な意見が出ることはすばらしいことですが、その意見から、テーマについての、何が、どう深まったのかという検証が必要です。子どもの意見をどのように整理し、どこに話し合いの焦点を絞るか、話し合いの落としどころはどこかを明確にすることは教師の重要な役割です。 

話し合い活動では、子どもに任せたり、発言の数に満足してしまったりということから、深まりのある話し合いまで至っていない場合が多いように思われます。

子ども一人一人の意見から次の段階へと”考える視点”を積極的に与えるためにも、教師の役割として、②「つなぐこと」、そして③「もどすこと」を意識した働きかけと共に、話し合う内容を分析していくことが必要であると思います。

最終回は、④「まとめる」について、提案したいと思います。

<参考文献>

○ 兵庫教育大学附属小学校著「学び合い、分かり合う授業づくり」(明治図書)2007年2月初版

○ 「授業研究21」社会科における教師の言葉がけ:高岡昌司(明治図書)平成19年5月号

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