地域が支えている科学体験教室

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目次

1.1 地域が支えている科学体験教室

団体の概要

サイエンスホッパーズという団体は杉並区のお母さんたちが集まってつくられており、
理科実験教室とフィールドワークを中心に活動している、全国的にも珍しい団体です。
活動は今年2011年で9年目であり、2005年から子どもゆめ基金の助成を受けています。

(子どもゆめ基金とは、国と民間団体が協力して、子どもの体験・読書活動を応援する基金です。)

主に四つの活動内容があります。

【親子フィールドワーク】…小学生の親子と中学生を対象にしており、毎月約50組の親子が参加します。都内近郊のフィールドに出かけ、昆虫や植物などを観察します。
【小中学生科学実験教室】…小学4年生~中学生を対象にし、身近なもので工作・実験を行います。毎月約30名の子ども達が参加し、多くの不思議と驚きを体験します。
【科学教室の出張授業や実験お手伝い】…実験教室を開きたい方のアドバイスも行います。
【高校生ボランティアの育成】…都立高校と連携して、高校生のボランティア育成の場を設けています。

記事の目的と概要

このサイエンスホッパーズのように、地域の人、学校、保護者、高校生、大学生と連携し子どもたちの教育にあたる団体
が他の地域でもつくられ、より活発に活動できることを願い、今回は活動の紹介として、インタビューをしました。

質問の内容としては、サイエンスホッパーズが保護者や、高校生、地域の専門家、講師の方々とどのように関わっておられるのかをお聞きしました。また、彼らが行なっている実験教室とフィールドワークの詳細についても質問しましたので、ぜひ参考になさってください。

以下、インタビューの質問と回答です。

保護者に関して

Q.保護者の方には実験教室へ、どのような姿勢で参加していただきたいのか。
A.来られる方だけ来ていただいて、お手伝いもお願いしている。30人前後の生徒に対して5~10人程度の保護者の方がいつも参加してくださる。
ただ、安全面の配慮から、いつでも迎えに来られるような体制で、お子さんを参加させるよう、全員にお願いしている。

Q.保護者の方にも実験を楽しんでほしいという気持ちはあるか。
A.やはり楽しんで欲しいし、子ども達と一緒に知的好奇心を持っていただければ、と思う。

保護者の方の中には、「昔は科学嫌いだったけど、なんだ、科学って面白いんじゃない?」というように、親も科学に興味を持ち始める方もいる。ただ、あくまで子どもメインの科学実験教室であり、親への影響を意図して行っているわけではないため、その影響に関して期待はしていない。しかし、効果・影響が大きいことを感じている。

科学実験教室に関して

Q.サイエンスホッパーズのスタッフの方々は科学実験教室を行うまでに、どのような活動をなさっているのか。
A.講師の方を探したり、実験のテーマを決めたりしている。

Q.どのような基準で実験の内容を決めているのか
A.教育的目線というより、私たちが興味・関心を抱き、面白いと感じたものを子どもと同じ目線で…。(笑)
また、地域の専門家である講師の方々や杉並区立科学館の先生方が、興味深い実験を紹介し、教えてくださる。杉並区外の他の先生からもアドバイスをいただいている。

Q,フィールドワークの感動を家に持って帰ることができているのか?
A, フィールドワークに関して言えば、「今日、あんな変わった虫を見たよね。」「あの鳥、とてもきれいだったね。」というような会話が実際に帰宅後の家庭でなされていると保護者の方々から話を聞く。教室で学んだことを子どもがお父さんに説明したり、お母さんがクイズを出したり、などをしている家庭もあるようだ。
感動を一緒に体験してそのことに関して話す、ということはとても大切で、記憶にも残りやすい。
また、親子の絆が深まるきっかけの一つ
になればより良い。

フィールドワークについて

Q,フィールドワークの事前準備はどうなさっているのか
A,まず年間計画を立てる。
どの時期に、どの公園で何が見られるのか。それは顧問の先生や講師の先生方に相談する。
下見に行く際は公園を管理している方に、観察できる動植物と安全面に関して相談する。
持ち物に関しても、観察の内容に応じて講師の方などと相談して決めている。

フィールドワークでの知識に関しては講師の方にお任せしている部分が多いが、持ち物や安全面に関しては、サイエンスホッパーズの方である程度、蓄積している。

Q,学校で行うフィールドワークとの住み分けは。
A, 教えるというよりも、自分で生き物を見つけてきて質問するなど、自ら学ぶ姿勢が見られる。
ある程度自由に体験してもらう、つまり触ったり、嗅いだりすることが多い。これは保護者などの多くの大人の目が十分に行き届くため、可能であるのかもしれない。
あと、4,5時間かけて行うなど、みっちりと時間をかけて行うことが多い。一日で水辺や森、原っぱなど、色々な場所で色々なことが体験できる。
継続的に続けられることも強み。
虫が好きな子はずっと虫を追っていられる、というように興味や関心があることを続けていられる場があること、しかもそれを親と一緒に続けられることは貴重である。

(子どもの興味の方向性や感じ方などを知る一つの機会でもあるのかもしれない。その後、この興味・関心をさらに広げる・深めるサポートも保護者の方にとって、やりやすいのではないだろうか。)

その他

Q,高校生のボランティアについて
A,毎年、都立の高校生が必修の奉仕活動として、サイエンスホッパーズに来る。
講師の方や、その高校生たちを含めて、様々な年代の人が来るので、意図しない効果が生まれる。
例えば、大人と子ども、という関係ではなく、柔らかい雰囲気がある斜めの関係の中で学べるため、より発言しやすくなったり、高校生の姿に憧れ、良い目標として捉えてくれたりする。
高校生に手伝ってもらうことで、実験をするだけでなくその手伝いも自然とできるようになる。
などの効果があるようです。

Q,どのようなタイプの講師の方が、子ども達はより活発に反応するのか。
A,「どう思う?」というような、発言を促す問いかけには反応しやすい。

先生の意図が“一緒に考えて実験をやっていこう“という方向であれば、子ども達は活発に質問するし、“一つずつ物事や知識を学んでいこうね”という方向であれば、一時間黙って講師の話を聞くこともできる。
また、継続的に活動をしているおかげであるのか、徐々に子ども達の質問も鋭い質問をするようにレベルアップしてきていると感じる。

毎回のように異なったタイプの講師が実験教室に来られるが、子ども達は戸惑うことなく活動している。子ども達にとって、新鮮味があって面白いと思うし、予想していなかった反応が見られる。

編集後記

子ども達は活発に意見を出し、一つ一つの実験に目を輝かせていました。また、保護者の方も実験後に子どもと一緒に、考えたり、先生に質問をしに行ったりする様子が見られました。
子どもが抱く疑問や関心に向き合う親の姿勢がとても良いな、と感じました。

「子ども達×保護者×学校外の講師×地域の科学館×高校生×大学生=        」
このイコールの先に何が来るかは、私にはまだ分かりません。ただ、子ども達や高校生はお互いを通して自分の将来を見、地域の活性化や、保護者の科学への関心、など様々な“気づき”や“つながり”が生まれるのではないのかと信じています。

学校で行う実験と、サイエンスホッパーズさんが行うような実験。
相補的な関係となり、より子ども達は科学を学ぼうとするきっかけとなるかもしれません!!

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 参加しているので、思い切り手前味噌です。
    都内や近郊で活動できる上、親子とも都心部にもまだ自然観察ができる場所が多々あること、学校では可能な限り?やらなくなった実験ができること、これらはもはや「貴重」です。
    今後も参加したいと考えています。

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