学外の講師が考える理科実験への姿勢とは

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作成者: EDUPEDIA運営部 (Edupedia編集部)さん

1.1 「学外の講師が考える理科実験への姿勢とは」網倉聖子先生

講師紹介

トラボクラブ代表、(株)Coming取締役、NPO法人サイエンスEネット副理事長、NPO法人ガリレオ工房所属

主に入院している子ども達がいる病院や、フリースクール、小・中学校、科学館で子ども達を相手に理科実験教室を行っている先生です。2010年には約200回の実験教室を開催しました。

網倉先生は、子どもにとって勉強は平等な機会であり、勉強することで今より世界が広がると考えており、少しでも子ども達の「勉強したい!」という気持ちが育つよう、科学普及活動を意欲的に行っています。

実験内容

今回の科学実験教室のテーマは超伝導体を体験しよう!でした。
超伝導体は一世紀前から発見されているのにも関わらず、リニアモーターカーや医療機器MRIへの利用などしか一般には知られていません。

網倉先生は子ども達の科学への興味関心を育てるため、まず先に、とても関連のある液体窒素で-196℃の世界を、続いて超伝導体を用いてマイスナー効果やピン止め効果などを、子ども達に体験させることを中心にし、実験を行いました。

記事の概要と目的

網倉先生は学外の講師であるため、進度に沿って知識を教える学校の先生とは立場や実験の目的が異なり、勉強意欲を育てることが目的です。そのため、今回は実験の内容に関するインタビューではなく、実験内容を決める視点や学外の講師との連携などについて質問しました。

学校内外、両方の先生が考える理科の営みや姿勢に関して、共通する部分があるはずですし、また、違う立場から見る理科実験の捉え方も参考になるのではないでしょうか。

インタビュー内容のまとめ

実験テーマ・プログラムを決める

実験の目的は、勉強への意欲を育てることです。子どもが驚き、面白い、もっと知りたいと思うようなテーマを、いつも子どもの目線で考えています。

  1. 子どもの目線でテーマを決める。
  2. テーマに合った身近な体験、現象をさがす。
  3. 現象と関連ある知識を小・中・高校の教科書の単元をもとに拾い出す。
  4. 教科書では実験しない内容を中心に、体験できる内容の実験を決める。
  5. プログラムの順番を決める。

というように、学校で勉強するのが楽しみになるよう、あえて先取り知識ではなく異なる視点から科学的に現象を捉え、体験を中心にプログラムを構成します。
 そうすることで、「身近な体験・現象→“科学的な視点で見る”→面白いことが見えてくる、習った内容と繋がる、仕組みを具体的に理解できる」というように、科学を身近なものに感じられるのではないでしょうか。

実験内容に“日本の誇り”を織り込む

網倉先生は身近なものにも日本の誇るべき技術は存在していることを伝えるよう意識しているそうです。

最先端技術を身近なもので置き換えて考えれば
有用性を知り、更に理解や想像をできるようになりますが、加えて、どこか遠い国の人よりも母国の人間が開発した方が親近感を持ちやすいのかもしれません。

全員で体験し、全員で考える

科学において肝要なことは、自分で考える→実験する→結果を考察する(結果に至った理由、予想を間違えた理由、他のより良い方法は何か、を考える)という過程であり、単にテレビや本などの情報で得た知識と、実際の体験を通した理解は異なる、と主張していました。

しかし、実際の実験教室には知識が豊富な子が多く参加していて、その子が結論を言ってしまい、全員で現象を考えるという過程ができなくなることがあるようです。

その時は、知識を先に言ってしまうと他の子が考えられなくなってしまうから言わないで
ということを伝えることが大切です。

実験の意義

実験の意義は一つの体験から、想像を膨らませたり、正しく理解したりできることです。

例えば「50℃は熱い」と知識で知っていても、具体的な危険度を理解できず想像もできません。しかし、実際に50℃のお湯を目の前にして、触れたりすることで、その熱さを具体的に体験でき、覚えることができます。
そこから更に、「60℃は?」「100℃は?」、と質問を変えても50℃の体験から熱いということを想像することができます。

また、科学教育を考えるときに、学校で習う科学教育(以下学校教育)として捉えることがあります。しかし科学教育は、学校教育以外に、遊びや、料理などの日常の身近なことの中にも多く存在します。自然や生活の中に多くの科学教育があり、学校教育はその一部を深く掘り下げた教育であると網倉先生は仰います。
多くの様々な体験が、学校教育で学習した内容と結びついたならば、具体的、かつ蓄積された体験によって、深い思考が育つ
と考えて、実験を行うそうです。

つまり
「一回の体験で、様々なことが想像でき、さらに多くの知識に繋がる」
と網倉先生が仰っていた言葉のように、科学実験の意義はとても大きく、有機的な学びが可能だ、と言えます。

学外の講師との相補性

今回のこの実験では液体窒素や高価な超伝導体を用いており、理科好きな子にとってはとても刺激的で目を輝かせますが、学校では費用面、危険性、入手経路などから このような実験内容は行えないと思われます。だから、学外の科学実験教室があるのです。

確かに、学外の先生が学校の先生と同じようにするのは難しいようです。例えば、子ども達一人一人の性格や習熟度が分からない、また児童とは一期一会であり、もし今日の実験を失敗してしまった場合、次の日にそれを補足できないため、実験内容も限られてしまいます。
しかし、逆に言えば慣れが無いので、適度な緊張感の下、実験の操作上での注意点をきちんと聞くことができます。

学校と学外では、お互いの利点があるはずですから、
学校でできない部分は学外の講師に頼ってみる、などお互いを補い合えるような関係
を築けられたら、より良いのではないでしょうか。

編集後記

「もっと勉強すれば、もっと危険で面白い実験ができるよ!!」

 実験中、このような発言が網倉先生の口から何度か耳にしました。
「やっぱり子どもは危険なこと好きだから!!」と答えた網倉先生は、この日の実験から、もしかしたら子ども達は本やネットで調べてみたり、保護者の方と討論したり、学校の授業に身が入ったり、など自ら学び、勉強するようになれば…、という気持ちをもって実験をしていたのかもしれません
(ネットで調べる際の注意点も仰っていました)。

また、科学において疑問をもつことの大切さも子ども達に伝えていました。
実験に失敗してもいい、自分の意見が間違っていてもいい。その失敗から疑問点を科学的に検証することで、すばらしい発見をすることができる。そのためには皆で考えて、意見を出し合うことがとても大切
ということを、さらりと子ども達に伝え、子ども達も静かに聞いていました。

子どもが持つ疑問に向き合って、答えたり、一緒に考えたりできるような親や教師になることができれば、自然と子ども達も科学に興味を持ってくれるのかもしれない、と思いました。

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