e手仕事図鑑の活用~日本の手仕事職人に触れる~

65
目次

1 目次

  • e手仕事図鑑について
  • この実践の目的
  • カリキュラムと実施計画をたてる
  • 体験学習活動に必要な準備
  • 各地での取り組み(実践事例集・e手仕事図鑑のURL集)
  • お問い合わせ

2 はじめに

この記事はe手仕事クラウド図鑑(以下、e手仕事図鑑)を紹介することで、その目指すところであるキャリア教育情報教育協働体験学習を支援することを目的としています。そのために、サイト内の「指導要領」(監修:山西潤一 富山大学人間発達科学部教授)
を参考にしています。
山西教授は以下の石原さんの黙々と手仕事に打ち込む職人の姿が活き活きと画かれていたイラストに触発され、この「指導要領」を作成しました。

3 e手仕事図鑑について

e手仕事図鑑とはNPO法人地域学習プラットフォームの一つの取り組みです。苦労しながら手に職をつけ、元気に働く人々の姿を紹介しながら、働くことの意味、生きがい、喜び等が共感できる手仕事職人の情報集(手仕事図鑑)をネットワーク上で利用可能としたものです。様々な手仕事にたずさわる職人の方々をイラスト、音、動画で紹介しています。

また、手仕事図鑑をクラウド化することで図鑑構築を容易にするとともに、子ども達の地域を越えた学習交流を可能としています。さらに、地域の青少年育成活動に取り組んでいる方のための指導者向けeラーニング教材を提供しています。これにより他地域からでもその産業について追体験することができます。

文部科学省でも経済産業省でも社会人基礎力という言い方のなかで、情報活用能力やコミュニケーション能力の必要性を訴えていますが、これからの多様な社会にあって、より重要なものは、自己責任で自らの生きる道を切り開く、個性あふれる生き方や職業観ではないかと考えています。
e手仕事図鑑では、そんな個性豊かな働き方で、活き活きと仕事に打ち込む職人の姿が見て取れます。そして、活動に参加する子どもたちが、そこで石浦さんが感じたように、多様な職業や働き方があることを知ると同時に、仕事に打ち込む手仕事師の夢や志に共感し、学ぶことや働くこと、生きることの尊さを実感を持って学んで欲しいと思います。

4 この実践の目的

(※「指導要領 キャリア教育としての目的」を参照。)

e手仕事図鑑を活用した体験学習には、 「キャリア教育として」、「情報教育として」、「協働体験学習として」の3つの目的があります。活動を企画するに当たっては、それぞれの教育目的に沿った活動になるように配慮することと、活動の結果として目標が達成されたかどうかについても、教育目的に沿った評価が行われることが必要です。
________________________________________

キャリア教育としての目的

— 職業と生活の分離が進み、子どもたちが生き生きと働いている大人の姿を見ることが少なくなった今日、子どもたちは、仕事は我慢してやらなければならないもの、苦労するものといった意識だけを持ちがちであるが、職場体験やインターンシップ等を通して、やりがいを持って仕事をしている人たちから直接話を聞いたり、世の中にはこんな仕事がある、仕事にはこんなやりがいや面白いことがあると教えられたりすることは、子どもたちに新鮮な驚きと発見をもたらし、職業ひいては大人社会への認識を改めるきっかけになっている場合も少なくありません。

体験活動等には、このほか、学校と社会をつなぐという重要な役割があります。一面的な情報に流され、社会の現実を見失いがちな現代の子どもたちに、現実に立脚した確かな認識をはぐくむ上でも、体験活動等の充実は欠かすことのできないものであります。—

小学校段階は、進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期として位置付けることができます。日常生活の様々な活動を通して、「大きくなったら何になりたいか?」「どんな人になりたいか?」というような「夢」「希望」「あこがれ」を持ち、児童が児童が自らの将来の生き方について考えることができるようにすることが大切なのです。


文部科学省「キャリア教育推進の手引き」平成20年増補版より引用

具体的な活動としては、以下のような目標設定が考えられます。

1)手仕事の内容について紹介することができる

2)手仕事をしている人の、仕事への夢や希望を聞いて、働くことについて考える

3)手仕事をしている人の、努力を知り、目標に向かって努力する大切さを理解する

4)自分の好きなこと、得意なことと将来の職業について考える

情報教育としての目的

(※「指導要領 情報教育としての目的」を参照。)

情報教育は、情報化時代を生きる力として、適当な情報手段を用いて、多くの情報の中から必要な情報を収集し、収集した情報をまとめ、他者に伝える力、いわゆる情報活用の実践力を育てること、コンピュータやネインターネット等の情報通信手段が、どのように情報化を支えているか、特にブラックボックス化したコンピュータやネットワーク技術等について理解する、情報の科学的理解を育成すること、日常化したインタネット等の光と影を理解し、情報モラル等、情報社会に参画する態度を育成することの、大きく3つの能力育成がその目的です。

今回の体験学習においては、上述の目標のうち、第一番目の情報活用の実践力につながる能力育成が中心になります。
具体的な活動としては、以下のような目標設定が考えられます。

1)取材した手仕事の内容を、写真、文書表現を通して的確に伝えることができる

2)取材した手仕事で働く人の夢や希望を的確な表現で伝えることができる

3)様々な手仕事を比較し、それぞれの苦労や思いを比較して表現できる

4)自分の考えを的確に表す写真表現ができる

5)取材メモを確実に取ることができる
________________________________________

協働体験学習としての目的

(※ 「協働体験学習としての目標」を参照。)

社会学習として体験学習を実施する場合は<span style=’font-weight:bold;’>同学年又は異学年でのグループ学習になることが考えられる。グループ学習の場合は、それぞれの写真や文書表現を比較し、より伝えたい内容にふさわしいものを協働で作成します。ここでは役割分担と共同作業を通して協調性や社会性の育成が期待されます。
具体的には、以下のような目標設定が考えられます。

1)グループでの役割分担と同時に協力してグループの課題に取り組む

2)互いの情報を比較検討してより良いものにする協働協調作業が行える

5 カリキュラムと実施計画をたてる

(※「指導要領 カリキュラムと実施計画をたてる」を参照。

体験学習を行う時間を考えて、実施計画を作成する必要があります。
「活動」「目標と時間」「活動内容」「支援・教材」「指導上の留意点」「評価の観点と方法」「他教科とのつながり」といった観点で考えます。
詳しくはリンク先をご覧下さい。

ここで、体験学習をより教育的効果の高いものとするためには、事前・事後学習の内容が重要になってきます。社会教育として実施する場合には、時間的制約も多いので、この事前・事後学習の内容は、指導者や協力者の企画によって様々なパターンがあります。ここでは、想定される2つのパターンをあげておきます。
事前学習として体験学習活動以外の日程確保等、比較的時間的ゆとりがある場合;
手仕事という働き方があること、そこに働く人々の思いを学習することによって、様々な職業観育成に向けた学習へと拡げることができる。

事前学習として体験学習活動以外の日程確保等、比較的時間的ゆとりがある場合

手仕事という働き方があること、そこに働く人々の思いを学習することによって、様々な職業観育成に向けた学習へと拡げることができる。

事前学習が体験学習の日程の中に組み込まれた場合

時間的制約等から、体験学習活動の同日に事前学習を組み込む場合が多い。この場合の注意点として、如何に体験学習への興味関心を高めるか、自分の問題意識を持って体験活動に取り組ませるかが重要。

富山での実践事例(具体例)

富山でのe手仕事図鑑を活用した体験活動を例に取り、具体的な留意点について述べておきます。詳しくは「平成22年度e手仕事図鑑活用事例」を参照してください。

本活動は時間的制約で、事前学習、体験活動、事後学習を一日で実施。参加者は、小学校5年生が5名、中学生3名の計8名、事前学習の時間は90分でした。
手仕事として、ガラス造形作家を訪問し、働くことの生きがいややりがいについて考えるというのが大きな主題でした。

ここで、事前学習では、子どもたちの手仕事に対する興味・関心を喚起することを目的としました。そのために、まず訪問予定である手仕事の職人さんの職場の音を子ども達に聞かせ、何をしているところか想像させました。子ども達の意見を聞いた後、イラストを配りどんな仕事の音だったかを教えます。この事前活動では音やイラストのみを使用し、あえて職人さんの働いている映像は見せないことで、子ども達に手仕事に対するイメージを膨らませました。

次に、イラストを見せて、手仕事について知りたいこと、分からないことを子ども達に考えさせ、その後の体験学習で職人さんにインタビューする内容を考える活動につなげました。一人2つ程度の質問項目を準備し、ワークシートに記録させました。

また、図鑑に掲載する写真のためのデジカメについて、事前に操作練習を行いました。

さらに、取材先でのルールやマナーについて話し合い、守らなければいけないポイントを確認しました。あわせて挨拶するリーダ、副リーダを決め、事前に練習を行いました。

次に体験学習の実施計画を立てる

富山での実践では、午後の2時間を体験学習に当てた。実際にガラス造形の体験もさせてもらった。体験することで、興味関心がより深まる場合が多い。

次に事後学習の実施計画を立てる

以上、e手仕事図鑑を体験学習に活かすためのカリキュラムと実施計画の立て方について概説しました。

先にも述べたように、社会教育の一つとして体験学習活動が取り入れられることが多いが、実施主体との関係、時間的制約等から、あまり細かな内容が盛り込めない場合も多いです。

特に、小学生が中心の活動にあっては、興味関心を高めること、多様な働き方への共感等、情意面での教育効果を期待したいと思います。

6 体験学習活動に必要な準備

(※「指導要領 体験学習活動に必要な準備」を参照。

実際に体験学習活動を行うに当たっては、様々な事前準備が必要になります。指導者は、自身が直接子どもたちを指導するだけではなく、活動に関わる全てのコーディネータとしての役割も担うことになるので、出来れば最低でも2,3名の方に協力してもらい、実行委員会を組織し、組織として活動の計画や調整、実施を行うのが望ましいと思います。

1)講師・協力員の依頼

参加人数を考慮しながら、直接的な指導を行う講師、講師を補佐し、活動の支援を行う協力員を依頼します。特に小学生が多い場合は、安全への気配りや個別指導等のため、グループ活動で各グループに一人程度の協力員が望ましいです。

2)体験学習先の決定と調整

  • 活動の趣旨に合う訪問先候補に、主旨を理解してもらい訪問先を決定、日程調整を行う
  • 事前に下見し、訪問する児童生徒の人数や学年、実施計画等を伝え、安全面での配慮や訪問先の要望等を聞いておく
  • 作業中に写真、映像の撮影を行いたいが可能か
  • 児童生徒からの質問に答えてもらう場を作ることが可能か
  • 作業の体験は可能か、経費が必要か
  • 御礼として、謝金又は菓子箱等の準備

3)昼食、休憩、飲み物等の準備

  • どこで、いつ昼食にするか、休憩はどこで取るか等、一日の行程の中で事前に検討しておく。手配が必要なら手配

4)傷害保険への加入

  • 不慮の事故や怪我に備え、傷害保険に加入しておく

5)機材及び教材の準備

  • 子どもの取材活動に必要なデジカメ、名札(Wordファイル:59KB)等

添付ファイル

  • グループ作業のための模造紙、付箋紙等
  • 活動の記録のためのビデオおよび写真
  • 事前学習に活用する訪問先の音等、学習内容に依存するコンテンツ(事前に図鑑に登録しておく)
  • 学習内容に合わせて、訪問先の手仕事イラスト(事前に図鑑に登録しておく)
  • 学習内容に合わせたワークシート(Wordファイル:182KB)添付ファイル(23年度に富山で使用)

6)その他

  • e手仕事図鑑を活用しての学習又は手仕事図鑑の作成や訪問報告書作成のためのPC環境の準備
  • 写真データを共有するためのPC環境
  • 発表環境(グループでのまとめを模造紙で発表するか電子媒体で発表するかによる)の準備
  • 必要な経費の算出と参加者の経費負担等の検討
  • 参加者のe手仕事図鑑の利用登録

7 各地での取り組み(実践事例集・e手仕事図鑑のURL)

実践事例集と各地のe手仕事図鑑は下記のURLからご覧になれます。
e−手仕事図鑑

○実践事例集

○e手仕事図鑑

8 お問い合わせ

教材等についてのお問い合わせがありましたら、以下までご連絡下さい。
特定非営利活動法人 地域学習プラットフォーム研究会
support@shiminjuku.org
https://shiminjuku.org/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次