分数の世界を広げよう~分数のたし算・ひき算~(間嶋哲先生)

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作成者: 間嶋哲さん

1 はじめに

分数にはじめて出会う児童にとって、分数は不可解な数に見え、そこから抵抗を感じて敬遠されがちである。しかし、分数の概念をわかりやすく教え、その計算の仕方まで説明した時にわからない子を最小限にとどめることが難しいと感じている先生も中にはいらっしゃるだろう。

ここでは、教師の働き掛けから、分数の概念とたし算・ひき算の解き方を子どもたち自身で見つけていき、会得していくことができる間嶋哲先生の実践を紹介したい。

2 間嶋哲先生の授業例

(引用元 http://bit.ly/BunsuuNoSekai

1. 単元名 分数の世界を広げよう~分数のたし算・ひき算~

2. 本単元で高める力

本単元のねらいと指導内容は,次の通りである。(指導要領解説,P150)
(2) 分数についての理解を一層深めるとともに,異分母分数の加法及び減法の意味 について理解し,それらを適切に用いることができるようにする。

ア 一つの分数の分子及び分母に同じ数を乗除してできる分数は,元の分数と同じ大きさを表すことを理解すること。

イ 分数の相等及び大小について考え,大小の比べ方をまとめること。

ウ 異分母の分数の加法及び減法の計算の仕方を考え,それらの計算ができる
こと。 

-

本単元で獲得させたい数学的な考え方は,「単位をそろえて計算するという考え方(指導要領解説,P151)」である。

この考え方は,主に上記のイとウに関わる。また,この考え方を支える分数特有の性質が,アで示された内容である。
私は,この性質や数学的な考え方を獲得させるとともに,本単元で,面積図や数直線に関わる数学的表現力を高める。なぜなら,通分しなければいけない理由が,面積図や数直線を用いることによって,明らかになるからである。また,指導要領解説でも,アとイについては,数直線や図などの活用が,理解の上で有効であると述べられている。

-

本単元では,次の三つの知を獲得させる。

【内容知】面積図や数直線のよりよい使い方が分かる。

【方法知】面積図や数直線のよりよい使い方ができる。

【体験知】 

① 面積図や数直線のよりよい使い方をすると,相手に自分の考えを正しく伝えられると感じる。

② 面積図や数直線を使って,自分なりの方法で意味を理解する。

-

この場合の,「面積図や数直線のよりよい使い方」とは,面積図や数直線の目盛りを,そのときの課題に応じてより細かく分け,単位分数の大きさを変えていくことである。

3. 指導の構想

本単元における問題解決場面,すなわち異分母分数の大小比較,異分母分数のひき算,たし算の場面で,自分の考えをかかせる際,次の働き掛けを行う。

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<働き掛けA>

自分の考えを細分化カードにかかせる。 

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細分化カードは,図表を主に描くエリアと,言葉や式を主に書くエリアに分かれている。さらに,言葉や式を主に書くエリアは三つに分かれている。ただ漫然と考えをかかせるのではなく,あらかじめ,図表を意識させたり,筋道を立てて順序よく考えを表現させたりするためである。

一定時間,考えを細分化カードにかかせる。子どもの表現を,次の四つに分類する。

ⅰ) 面積図や数直線をよりよく使っており,かつ,数学的な考え方も,その表現から見取ることができる考え

ⅱ) 面積図や数直線をよりよく使ってはおらず,既有の知識で形式的に解決しており,数学的な考え方を教師が見取ることができない考え

ⅲ) 面積図や数直線を使ってはいるが,よりよく使っておらず,解決はできているが,数学的な考え方を教師が見取ることができない考え

ⅳ) 面積図や数直線を使っていなかったり,使っていても獲得させたい数学的な考え方を使っていない独自の考え(誤答・無答も含む。)

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その後,次の働き掛けを行う。

-

<働き掛けB>

同じ考えだが面積図や数直線の使い方が違うものを二つ提示し,考えを説明させた後,共通する数学的な考え方と「どちらが考えを分かりやすく伝えているか」を問い,理由も言わせる。

前述の分類で言えば,ⅰ)の表現と,ⅱ)の表現もしくはⅲ)の表現を提示する。

そして,それらの考えを説明させたり,共通している考えを問うたりする。その後,どちらがより考えを分かりやすく伝えているかを問う。

このことにより,子どもは,考えを分かりやすく伝える際,面積図や数直線をより細かく分け,比べる分数の単位を揃えた方が良いことや,なぜそうするのか理由を書いた方が良いことが分かる。そして,考えが分かりやすい理由を問うことによって,面積図や数直線のよりよい使い方を挙げることができる。

こうした検討を通して,子どもは,同じ性質や考え方が使われていても,様々な表現があることに気付く。また,同時にⅰ)以外の子どもが数学的な考え方を獲得する。

-

その後,次の働き掛けを行う。

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<働き掛けC>

面積図や数直線のよりよい使い方を選ばせる。

働き掛けBで,よりよい使い方が挙げられた中から,自分にとって必要な使い方を選ばせる。このことによって,子どもは働き掛けAで表現した自分の考えに照らして,自分にとって不足しているよりよい使い方が分かる。【内容知の獲得】

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その後,次の働き掛けを行う。

-

<働き掛けD>

自分の細分化カードを修正させる。

このことによって,子どもは,細分化した自分の数学的表現を,働き掛けCで獲得したよりよい使い方を使って,修正する。【方法知の獲得】

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その後,次の働き掛けを行う。

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<働き掛けE>

全員の『最初の細分化カード』と『修正した細分化カード』とを黒板に貼らせ,相互評価させる。 

-

このことによって,友達の数学的表現を比べ,その変容を評価できるようになる。よい評価をもらった場合は,成就感や満足感をもつ。【体験知①の獲得】

また,相互評価活動の中で,全体では取り上げられなかったが自分にとって分かりやすい様々な数学的表現に接し,理解を深める。【体験知②の獲得】

4. 指導計画 全27Q <9時間>

省略   詳しくは,メールにて連絡ください。

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注)EDUPEDIA編集部より

指導計画の詳細をご覧になりたい方は、お手数ですが間嶋先生のHP

http://bit.ly/homepage_majima)から間嶋先生へ直接ご連絡いただきますようお願いいたします。

5. 本時の構想 (8Q~11Q/27Q)  

(1)主眼

大小比較の方法を二つの表現から比較検討することを通して,面積図や線分図を15等分する使い方が分かり,それを生かして自分の表現を修正できるようにする。

(2)主張

このような子どもに C0

前時で2/3と3/□の大小関係を扱っており,□が1,2,3,6,7のとき,大小を比較している。その際は,主に,1や、1/2を基にして比較している。

<働き掛けA>

細分化カードを使った表現をさせる。

□が5のときの解決方法を,細分化カードに次のように表現している。

ⅰ)面積図か数直線で15等分の目盛りを付けてあったり,なぜ通分すると大きさが比較できるのか理由が書いてあったりする。

ⅱ)面積図か数直線を使ってはいるが15等分していない。さらに,通分の理由も書いていない。

ⅲ)面積図か数直線を使ってはいるが,感覚的な長さ比較に終始している。さらに,通分の考えが使われていない

ⅳ)面積図か数直線が描かれていなかったり,本時で獲得させたい数学的な考え方とは違う独自な解決をしていたりする。

このように働き掛けると

-

<働き掛けB>

考え方は同じだが表現方法が異なる二つの考えを提示し,検討させる。)

説明1「この二つの考えは,同じ考え方ですが,表現の仕方が違います。」

  • 提示する二つの考えは,ⅰ)とⅱ)である。ただし,それぞれ子どもがかいたものを基にするが,言い回しなどは直して提示する。

                                    

                         
http://bit.ly/M6LPQYより抜粋)

指示1「どちらかを使って,考えを説明しなさい。」 

発問1「どちらの考えにも共通していることは何ですか。」

発問2「どちらが分かりやすいですか。その理由も教えてください。」

このように思考し,答え   C1

(発問1)

「分母を変えて,同じ大きさだが,見た目が違う分数に変えていること。」

(発問2)

ⅰの方が分かりやすい

(理由)

  • 倍分する理由がある。
  • 図の目盛りが細かい
  • 図の目盛りが15等分されている。

-

ⅱの方が分かりやすい

(理由)

  • 分母をそろえて比べている。
  • すっきりとしている。    

※学習スキル(複数の考えを比較して,その異同を考えること。)の発揮
 
-

このように働き掛けると  
<働き掛けC>(自分にとってよりよい使い方を選択させる。) 

○発問3「自分にとって必要な使い方は,この中でどれですか。選んで,学習プリントに書きなさい。」

-

このように書き   C2 

  • 図の目盛りを15等分すること。
  • 15等分し理由を書くこと  【内容知の獲得】
  • すっきりさせること。 

-
 
このように働き掛けると  

<働き掛けD>(細分化カードを修正させる。)
 
指示「選んだことを使って,細分化カードに書き直しなさい。」

-
 
このように修正し   C3  

上の例示のように,C0で見られなかった面積図や数直線のよりよい使い方(C2) が加わり,それに基づいて修正する。【方法知の獲得】

-
 
このように働き掛けると

<働き掛けE>数学的コミュニケーション広場で,相互評価をさせる。)

○指示「学習プリントを移動黒板に貼って,相互評価し合いましょう。」

-
 
このように思考し,相互評価する   C4  

  • 相手の学習プリント内のC0,C2,C3を見て,コメントを付ける。
  • 「~さんは,初めの表現と比べると,図が15等分されて分かりやすくなった。」

※学習スキル(相手が表した考えを,ある観点から検討すること。)の発揮

-

このように働き掛けると  

○指示「友達から評価してもらった感想と『マイ・トリック』を書きましょう。」

  • 『マイ・トリック』とは,「見付けたぞ!これは面白い友達の考え」という意味である。

このようになる   Cn

-

「友達から評価してもらった感想」の項目

  • 「ぼくは,面積図を工夫して15等分して表したら,「よく分かった。分かりやすくなった。」という評価をもらった。自分の考えが正しく伝わったので,うれしい。」
  • 「いろいろと教えてもらったので,うれしい。」【体験知①の獲得】

-

『マイ・トリック』の項目

  • 「分母を同じ数にすれば大きさは比べられる。そのときの分母は,比べる二つの分母の最小公倍数なんだよ。」
  • 「分子の大きさをそろえている人がいたぞ。そんな比較の仕方もあったのかあ。」
  • 「1の大きさを決めて,小数で比べる人がいたぞ。」【体験知②の獲得】

 

6. 検証  

(1)検証すること

働き掛けB・Cが,内容知を獲得することに有効であるかどうか。

働き掛けB・C・Dが,方法知を獲得することに有効であるかどうか。

一連の働き掛けが,二つの体験知を獲得することに有効であるかどうか。

-

(2)対象    

C0で,ⅰ)に該当しない子ども。ただし体験知②は,全員が対象。  

-

(3)方法  

【内容知】…C1内の◎印の使い方の中から,自分の表現に必要な使い方をC2で選んでいるとき,表れありとする。

ただし,次のような場合,表れなしとする。  

  1. C2で必要と書いたすべての使い方が,すでにC0で見られるとき。 
  2. C0を見て必要と考えられる使い方が,C2で書かれなかったとき。

-

【方法知】…内容知を獲得した子どものうち,C3で実際に,選択した使い方が自分の細分化カードの修正に生かされていると判断する場合,表れありとする。
 
【体験知①】…内容知,方法知を獲得した子どもで,C4の相互評価での友達からの記述と,Cnでの自分の記述が,次のように整合していると判断できる場合,表れありとする。

  1. C4で友達から,C1のよりよい使い方に基づいて自分の細分化カードの良くなった点の指摘を受けていること
  2. その指摘を受けて,Cnで例示してある通り,△印のように単に評価してもらったことについての喜びではなく,「自分の考えを~~のように表したら,より伝わった。だから,嬉しかった。」という記述であると判断する場合,表れありとする。

【体験知②】…『マイ・トリック』の記述内容から,自分なりのコツが読み取れた場合,表れありとする。

3 3. 編集後記

間嶋先生の実践からは、教師が児童へ「働き掛け」を行い、思考や考え方の表現を促すこと。発見した知識を相互に表現させることで、自分だけでなく、他の人のさまざまな考え方を取り入れ、新しい発見させること。さらに、自分の考え方を他の人にも認めてもらうことで、自信へとつなげていく過程が見てとれる。

このような授業を行う際には、教師側が適切な働き掛けを行うことと、児童から出される考え方から、一人ひとりの定着の度合いを適宜見極めることが必要ではないかと考える。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐原志麻)

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<実践者プロフィール>

間嶋 哲(Mazima Akira)

1965年、新潟県に生まれる。新潟大学教育学部を卒業。

新潟県内の小学校で活躍後、文部科学省での1年間の研修を経て、現在、新潟市教育委員会学校支援指導主事。算数授業ICT研究会理事。全国算数授業研究会総務幹事。

趣味は、海外旅行・外国語会話・スキー・ギター(フォークとクラシック)・読書・園芸・熱帯魚飼育など、多岐に渡る。

大学の卒業旅行を機に、旅行・外国語にはまり、旅行記を一冊出版したほどのエピソードを持つ。

●HP

間嶋哲のHPへようこそ… http://bit.ly/homepage_majima

●記事の出典

http://bit.ly/BunsuuNoSekai

http://bit.ly/M6LPQY

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