働きアリで家庭科学習のスタート

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目次

1 概要

本授業は、2012年3月28日に 神奈川県立神奈川近代文学館にて実施された「学級づくり改革セミナー 第1回 全国大会IN横浜」内で行われた講座、模擬授業です。

2 授業の目的

働きアリの法則を伝え、なぜ全員が家庭科を学習する必要があるのかを考えさせる。

班・学級で考えさせ情報共有し、考えを深めていく中で

①どんな時でも必要になったら使える技能を身につけること

②価値観を広げることが目的であること

が家庭科で一番必要だ、ということを伝える授業開きにしたい。

3 模擬授業実践例

授業概要

1. 働きアリの法則と、それに対するジョンくんの考えの提示する

2. ジョンくんを説得する方法を話し合い、「他の人の良い意見」を発表してもらう

3. 家庭科で大切なことを説明する

授業詳細

 1. 働きアリの法則と、それに対するジョンくんの考えを提示する

5年生で初めて家庭科学習が始まるので、まずは家庭科とはどういう授業なんだろう、ということを考えてもらいます。そのためにまず身近なアリを事例に出しインパクトを与えることで、家庭科学習に対する興味、意識を持ってもらいやすくします。

(例)今日から家庭科が始まりますが、家庭科って何をするんだろう、と考えている人もいると思います。そこでまずは世界を小さいところから見てみましょう。皆さんが知っているアリには、働きアリの法則というものがあります。これは、アリが10匹いればそのうち7匹は「他の3匹が働いてくれるから」という理由で怠けてしまう、というものです。

それを踏まえてジョンくんの意見。「家庭科って料理とか裁縫するんでしょ?でも 将来料理する気も結婚する気もない。やる必要ないんじゃないの? アリと同じように、やりたい人がやってやりたくない人はやらなくてもいいじゃん。今だっておうちの人がやってくれるから、習っても家でやらないよ」

 2. ジョンくんを説得する方法を話し合い、「他の人の良い意見」を発表してもらう

説得する方法を考える中で、今は必要じゃなくてもいつか必要だ、と言うことを発見してもらいます。また、他の人の良い意見を聞くことで、自分以外の考えもあった、と言うことを認識してもらいます。

(例)「自分では気づかなかったけど、こういう良い意見があったよ、というものを発表してください」

 A.「難しかった、答えが出なかった」

 B.「いざとなった時にできる必要があると思う」
 などなど…

 3. 家庭科で大切なことを説明する

話し合った中で「必要なときに使えるテクニック」という意見をピックアップし、家庭科ではそれが必要である、と言うことを説明します。

また、話しあう中で自分が気づかなかったことを他の人が考えていた、ということを実感させ、そのように「多様な価値観があること、それによって考えが広がるということ」も家庭科で大切なことなんだよ、と言うことを説明します。

以上を行うことにより、子どもたちに「家庭科って調理実習だけじゃないんだ。考えを広げるためにするんだね」ということに気づいてもらいます。

4 本授業の提案動機

皆さんが小学生の時に家庭科でやっていたことを思い返していただくと、調理実習や裁縫などが記憶に残っていると思います。

ですが社会の変化に応じ、家庭科教育は技術の定着だけでなく、家庭について深く考える機会・環境を与える必要があります。

現代社会では家庭の形態は多様化しており、共働き家庭、核家族化が進んでいます。専業主婦による家庭教育や、祖父母からの教育が少なくなっている今、家庭生活について考える機会が不足しているのです。

そこで家庭科に対する認識として、

1. 家庭科は、考える、価値観を広げる教科である

2. その上でいつでも使える技能を学ぶ

ということが大切になります。

なので本授業では働きアリの法則を提起し、意見交換や他人の意見を聞くことを中心に据えます。その上で家庭科とは上記の2つが大切であることを伝え、技術獲得のための教科という認識を外したいと考え、提案しました。

5 模擬授業内での引用資料

長谷川英祐「働かないアリに意義がある」(2010)メディアファクトリー

Google earth「千葉市幸町第四小学校付近までの経路」

エドガー.H.シャイン著 二村敏子ら訳「キャリア・ダイナミクス」(1991)白桃書房

6 講師プロフィール

佐藤翔

千葉市立緑町小学校勤務

若手教師・学生サークル「スーパーティーチャー」代表

「家庭科で子どもの将来の家族をつくる」を模索中。互いの価値観の違いに気付き、受け入れられるようになることを授業・学級経営の柱にして取り組んでいる。

7 編集後記

昔に比べ家庭内での裁縫、調理の経験は少なくなっており、家庭科で技術を習ってもなかなか実感が湧かないことも確かにあると思います。

そのために、なぜ家庭科を学ぶのかを話し合い他人の意見も聞くことで、将来活用できるイメージを多く持てるようになり、より家庭科で学ぶ技術に対する実感が出てくると感じました。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 岡本祐樹)

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