2012年の大津市のいじめ問題をきっかけにEDUPEDIA編集部が何名かの教員に取材をして得た知恵をまとめたいじめを起こさないための実践を4つ紹介します。
いじめ問題には様々な立場の人が関わってくるため、それぞれでの心がけや働きかけが重要であり、この実践で全てが解決できるわけではないですが、参考にしていただければと思います。
1 いじめをするエネルギーを残さない
いじめの背景の一つには、「いじめをする余裕」があるためと考えられます。
勉強や学校行事、クラブ活動、習い事など何かに十分に満足して打ち込んでいる子どもはいじめをしない傾向があります。
あり余るエネルギーが発散しきれないためにいじめに走るといったケースも多く起こります。
極端かもしれませんが、運動会前日や大きな大会の直前にはいじめは絶対に起こりません。
またスパルタ式が良いとは限りませんが、疲れ切るまでクラブ活動を行ったり、必ず提出をしなければいけない宿題を多く出したりすれば、いじめを行うエネルギーはなくなります。
子どもはとても大きなエネルギーを持っています。
そのエネルギーを「いじめ」に向けるのか、それとも他の活動に向けるのかでは大きな差があります。
そこで教員や保護者は子どものエネルギーのベクトルが向くような目標や活動を与える必要があります。
例えば、以上に記したもののいずれでも良いですが、日頃観察する中で各自が熱中しそうなものを提供し、またその後も目を離さずしばらくフォローをすると良いです。
2 自殺などの最悪のケースが自分の人生に与える影響を認識させる。
このような事件の直後なので不謹慎と思われる方もおられると思いますが、その子が加害者ではなかったとしても、最悪のケースを想定させることは有効です。
つまり、万が一相手が自殺した時、それが自分の将来に大きな影響を与えることを伝えると言うことです。(恐怖訴求で行動を変える)
今回の事件では必ずしもそうとは限りませんが、保護者、本人含めてネット上で顔と本名等が明らかになっています。
高校や中学校もそういった経歴は入試の際に調べているため、その児童・生徒が進学する際に妨げになることは間違いありません。
高圧的な伝え方ですが、具体的なものとして2つ紹介します。
「進学できる高校がなくなる。」
「普通の学校は絶対に入学させてもらえない。将来つきたい仕事にもつけなくなる。」
いじめの予防策としても、このように「脅かす」といった手段を用いることも出来ます。
3 教師が「チーム」として対応していることを示す
いじめに加わった子どもには、今回の行動は教員全員で共有していることを伝えます。
「先生たちは何かトラブルがあったら必ずみんなで相談しています。みんなで大切な子どもたちの事を心配しているからです。いつも会議でみんなのことの話をしています。今回の件についても、○○先生(と◎◎先生)だけではなく、全校の先生があなた(たち)のしたことを知っています。それが決まりです。」
と、釘をさしておきます。さらに、
「もちろん、教頭先生も、校長先生も、知っています」
教師が個々で対応しているのではなく、チームとして対応していることを示しておきます。たくさんの大人の目で見られていることも、意識させます。
4 加害者側の更生への期待を示す
「素晴らしいエネルギーをもっているのに出せない」
「最悪のケースになるかもしれない」
「先生たちみんなに知られている」
等、いくつかの現実的な「損」を示すことは必要です。
厳しい「指導」と「措置」は緊急避難的に行った上で、その次には加害側の子どもに寄り添ってあげる姿勢を示していく必要があると思います。
「これ以上いじめをやり続けてしまったら、あなたの損になってしまうよ。それは、残念だ」
ということを伝えて、共感を示しましょう。
「あなたが変わっていく姿を、みんなが見守っているんだよ。変わっていくことを期待しているよ。」
と、加害側の子どもにも更生のチャンスを示してあげることによって、現実的・緊急避難的な指導から、本質的に子ども・学級集団を変えていく指導へと進むことができるのではないかと思います。
最後に
なお始めにも書きましたが、ここで紹介した実践は全てのケースで必ずうまくいくとは限りませんのでその点に関しましては予めご了承ください。
この実践への感想やご意見、ご自分の工夫・経験等、コメント欄にいただけますと幸いです。
また、他にもいじめ問題に関して有効な対策がありましたらEDUPEDIAへの記事投稿をお願い致します。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)
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