いじめ対処法~保護者とのやりとりで気を付けること~

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2012年の大津市のいじめ問題をきっかけにEDUPEDIA編集部が何名かの教員に取材をして得た知恵をまとめた、いじめ対応の実践です。

いじめ問題には様々な立場の人が関わってくるため、各人での心がけや働きかけが重要であり、この実践で全てが解決できるわけではありませんが、参考にして頂ければと思います。

目次

1 いじめ問題が解決しないのは?

日本全国どこの学校や学級でもいじめは起こり得ます。
教員や児童生徒、保護者による迅速かつ有効な対応により大事になる前に収まるケースも多くあります。
その一方で、うまく解決したり収めたり出来ずに、被害児童や加害児童が転校したり、関係者が命を失ったりすることもあります。
天と地の差もあるその2つの違いの要因の一つとしては「保護者の姿勢」をあげています。

2 保護者の姿勢

いじめの悪化にはクレーマーとなっている保護者の存在があり、その影響は大きいです。
いじめている子どもの保護者が柔軟で理解力がある場合、保護者が子どもに注意もし、大事にもならずに平和的な解決ができます。

しかし、いじめている子どもの保護者がクレーマーだった場合、いじめの存在を指摘した教員にクレームが来ます。

それはその保護者の元々の性格や、自分の子どもへの過度な愛情、社会的地位や、学内での地位などいくつかの要素が関係してくると考えられます。

保護者によっては、
「うちの子どもがいじめをした証拠がどこにあるのですか?」
「子ども同士で遊んでいたんじゃないんですか?」
「こうやって親が先生と話していることを他の子に知られて、うちの子どもがいじめられたらどうするんですか?」
「いじめていたとしても他の子もやっているはずです。どうしてうちの子だけ注意をするんですか?」
「うちの子もこの前○○くんに追いかけられたり、叩かれているのを見ましたよ?」
「私の方が子どもを見ている時間は長いのにあなたに何が分かるの?」
「私より若くて人生経験がないのに、何が分かるの?」
などと反発してくることがあります。

元々、いじめは教員や他の児童生徒の目の届かないように行われるものであり、確実ないじめの証拠を示しにくい性質があります。そのため、児童に対して教員も積極的に指導しなくなり、また校長や学校全体、教育委員会への報告もしなくなり最悪の事態に陥る恐れもあります。

そういった保護者からのクレームをどのように対処し適切な指導環境をつくれるかに関して、複数の先生に取材した内容を記します。
これはいじめに対するクレーム以外にも応用可能なので、ぜひ活用していただきたいです。

3 対処法~クレームを共有する~

まず、いじめを感知したり児童や他の先生から情報が入ってきたら、それぞれから聞いたり、いじめの加害児童・被害児童からそれとなく事情を聞いていきます。

その後、加害者だと思われる児童の保護者と面談をします。
しっかりと受け止めて理解をしてくれれば大事にはならないのですが、上にあげたようなことを言われたり、それにかぶせて新たなクレームを言われたりしたら、クレーム内容に関しては学校中すべての先生に詳細含めて共有し適切に処理するようにしている旨を伝えることがこの実践の極意です。

保護者は世間体を気にするので、その際に保護者の言動だけでなく、いじめのような出来事が起きたことも伝えると、一方的な反発はしてこなくなります。社会的に地位が高いと自負している保護者ほどその傾向があります。

何事もなければそのまま何もなく済むのでそのことも伝えれば良いです。

いじめ以外でも行事や普段の授業に関するクレームだとしても同じように
「そのことは学校としましてもとても重大なことですので、私だけで考えるのではなく、他の先生方や学校全体で解決に向けて取り組むために共有をさせていただきます。」
と一言添えるだけで大きな効果があります。

そうすることで「”保護者”対”教員”」という「1人対1人」もしくは「複数人対1人」といった関係から「個人・複数人対学校(複数人・組織)」といった関係になり、クレームを言う保護者もそのままの言葉や姿勢で対応することをためらいます。

4 保護者との敵対関係を防ぐ~更正への期待~

保護者は自分の子どもの非を認めたくない気持ちがありますので、学校側が厳しい判断、姿勢を見せると構えてしまい、コミュニケーションがとりづらくなる場合があります。
そこで、事の真相をひと通り伝えた後、
「こんなことになってしまっては、●●君にとっても、たいへん損な状況です。彼はエネルギーもあり・・・(●●君のいいところ)・・・なのに、こんなトラブルを起こしていてはとても残念です」
と、加害側の立ち位置にも寄り添って、更生への期待を示していきましょう。
「●●君が変わっていく姿を、教員みんなで見守っています。変わっていくことに期待しています。」
と、加害側の子どもにも更生のチャンスを示してあげることによって、保護者との敵対関係に陥ってしまうことを防ぎ、保護者と教師が協働で子どもを支える位置関係を作っていけるようにしていきたいです。

このように決して高圧的にも反発的にもならずにいじめ問題の悪化を防ぐことも出来ますので、ぜひご活用ください。

最後に

なお始めにも書きましたが、ここで紹介した実践は全てのケースで必ずうまくいくとは限りませんのでその点に関しましては予めご了承ください。

この実践への感想やご意見、ご自分の工夫・経験等、コメント欄にいただけますと幸いです。

また、他にもいじめ問題に関して有効な対策がありましたらEDUPEDIAへの記事投稿をお願い致します。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

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