身の回りには拡大と縮小がいっぱい(間嶋哲先生)

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目次

1 概要

拡大と縮小。“言葉”なら、例えばコピーをとる際など、日常生活の中で頻繁に使用します。しかし、その“概念”を子ども達はきちんと理解しているでしょうか。この授業では拡大と縮小の概念を体験的に理解し、さらに自分の考えを他人に説明する“数学的表現力”を高める試みも行います。

出典: http://bit.ly/OGpeA4

2 この授業で目指すもの

拡大と縮小は加算的ではなく拡大的(倍数的)な思考を基にしていることを認識し、身の回りの物を拡大と縮小の観点から見つめ直したり、拡大と縮小の観点を用いて日常の問題を解決しようとしたりする。

その上で、児童の数学的表現力を高める土台を築くことも考える。

3 主眼

一辺を同じだけ伸ばした長方形が、元の長方形の拡大図となるのかどうかという問題解決場面において、細分化した自分の考えを相互評価し合う活動を通して、次のことができるようにする。

  • 拡大図にするためには、加算的考え方ではなく、拡大的(倍数的)考え方を使わなければならないことが分かる。(内容知の獲得)
  • 考えを正しく伝えるために、視覚的表現(図・言葉・式)を工夫して使う。(方法知の獲得)
  • 「自分の考えを相手に正しく伝えることができたり、理解してもらったりするとうれしい。」と感じる。(体験知の獲得)

4 4つの具体的な働きかけ

子どもは、これまでに学習し獲得した「手続き」を自分なりにもっている。しかし、その「手続き」を揺さぶられるような課題を与えられると、「手続き」を見直す活動をし、そこで得られた自分の考えを表現したくなる。

課題に対して、子どもは自分の考えを創り始める。多様な考えを思い浮かべた後に、一番紹介したい考え(初期の数学的表現)を一つ選ばせ、次の働き掛けを行う。
働き掛けA:
「見ただけで考えが伝わるように、『細分化カード』に分かりやすくかきなさい。」と指示する。

自分が選んだ一つの考えを、『細分化カード』にかかせる。(中期の数学的表現

『細分化カード』とは、次のような要件をもつカードである。

①一つの「図エリア」と、3つの「言葉・式エリア」に分けられている。

②3つの「言葉・式エリア」には通し番号が付けられ、考えの順序を表している。

③友達が、4つのエリアをそれぞれ評価できるスペースがある。

子どもは、ノートに表した初期の数学的表現を見ながら、『細分化カード』で自分の考えを、次のように表そうとする。(考えを創り出そうとしている段階である。)

◎「図エリア」:自分が最も言いたいことを、一つの図に凝縮して表そうとする。

◎「言葉・式エリア」:自分が最も言いたいことを、考えの筋道に沿って三つに分けて表したり、言葉がよいか式がよいかの検討が促されたりする。

『細分化カード』に考えを分かりやすくかいた子どもに、次の働き掛けを行う。

働き掛けB:
自分の視覚的表現を、小集団で評価させる。

まず、「図エリア」と「言葉・式エリア」に分けた視覚的表現を、学習班の友達に回して、正しく考えが伝わるかどうかという観点で、○か△を付けさせる。○とは、その考えが説明できるという意味である。△とは、それだけを見てもうまく説明できないという意味である。最後に、全体的な評価を言葉で書き込ませる。

このような相互評価を班の友達と行うことによって、中期の数学的表現が、相手に正しく伝わるのかどうかを試すことができる。また、友達の数学的表現を評価するので、いくつかの考えを比較し、自ずと内容知そのものが獲得できる場合もある。

評価された子どもは、考えのどの部分が相手に正しく伝わらないのか、自覚することができる。そのような子どもに、次の働き掛けを行う。
働き掛けC:
細分化評価を基に、自分の視覚的表現を修正させる。

これによって、子どもは、自分の考えを「相手意識をもった視覚的表現」(中期の数学的表現)から「相手に正しく分かってもらう表現」(後期の数学的表現)に高めることができる。考えを創り出した状態である。修正する時の指針となるものは、働き掛けBの相手からの評価である。この段階で、子どもは、想定した方法知を獲得する。

考えを創り出し、方法知を獲得した子どもに、次の働き掛けを行う。

働き掛けD:
修正した視覚的表現を再評価させる。

これによって、子どもは自分の視覚的表現の高まりを自覚し、成就感や満足感を味わう。この段階で、子どもは、想定した体験知を獲得する。そして、次に行われる全体での比較検討の場で、自信をもって発表し、意欲的に関わろうとする。

5 評価

①検証すること:働き掛けB、C、Dが、想定する方法知体験知(本時の主眼参照)を獲得に有効か。

②検証の方法
《働き掛けB、Cの有効性》→方法知を獲得したか否か

最初に書いた『細分化カード』の記述と修正後のものを比較し検証する。友達から△をもらったエリアの表現が評価によって付け加わっていたり、修正されていたりする場合、表れありとする。
《働き掛けDの有効性》→体験知を獲得したか否か
 
再評価の記述の中に、成就感や満足感を感じた記述が見られる場合、表れありとする。

6 編集後記

算数・数学は人生最大級の敵でしたが、小学校の頃にこんな授業を受けていればもう少し柔軟な発想を持てたのでは!?……と感じました。
 (編集・文責:EDUPEDIA編集部 松村健太郎)

7 講師プロフィール

間嶋 哲(Mazima Akira)

1965年、新潟県に生まれる。新潟大学教育学部を卒業。

新潟県内の小学校で活躍後、文部科学省での1年間の研修を経て、現在、新潟市教育委員会学校支援指導主事。算数授業ICT研究会理事。全国算数授業研究会総務幹事。

趣味は、海外旅行・外国語会話・スキー・ギター(フォークとクラシック)・読書・園芸・熱帯魚飼育など、多岐に渡る。

大学の卒業旅行を機に、旅行・外国語にはまり、旅行記を一冊出版したほどのエピソードを持つ。

●HP
間嶋哲のHPへようこそ… http://bit.ly/homepage_majima

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