1 概要
異なる単位によって表現されている数量を、ある単位に統一して比較する力を養う。また、他人にその過程を説明する取り組みを通じて、数学的表現力の向上もはかる。
2 この授業で高める力
この授業では、以下の5つの知を獲得させる。
①内容知:
どちらか一方の量を固定して他方の量で比較する表現の仕方が分かる。
②方法知:
どちらか一方の量の1単位当たりで比較する表現ができる。
③体験知(A):
どちらか一方の量を固定して他方の量で比較する表現の仕方が分かれば、異なった量の割合を数理的に比べやすくなることを実感する。
④体験知(B1):
自分の考えを表すのに有効な、線分図や「もし~なら」と仮定する言葉や、式をそろえて比べやすくする表現が分かる。
⑤体験知(B2):
1単位当たりで比較する表現の方が、一方の量を固定して考える表現よりも、数値化して比べやすいことが分かる。
※なお、②方法知の「どちらか一方の量の1単位当たりで比較する表現」とは、次の2つである。
①「図・表エリア」において、問題場面の絵図2つと、どちらか一方の量の1単位当たりで考える絵図2つ。
②「言葉・式エリア」において、どちらか一方の量の1単位当たりで考えることを表現している言葉や式、そして「~あたり」という内包量の単位を表す言葉。
3 6つの働き掛け
まず体育用マットを使い、子ども達に「同じ広さのマットなら人数の多い方がこんでいる」「同じ人数なら狭い方のマットがこんでいる」ことを理解させる。その上で、以下の働き掛けを順に行う。
なお、自分が考察する過程は『考えのあしあと』カードに記録させる。
働き掛け1:
- 以下の課題を提示する。
「マットの上に子どもがのっています。どちらがこんでいますか?」
①マット2まい、12人
②マット3まい、15人
- 「『考えのあしあと』に自分の考えをかきましょう」と指示し、可能なら複数かかせる。
働き掛け2:
①マット1枚当たりで考えている表現
②1人当たりで考えている表現
③「マット6枚なら…」と考えている表現
以上の3つの表現(どちらか一方の量を固定して他方の量で比較する表現)を取り上げ、提示する。
- 「この表現をした人は、どんな考え方をしていますか?」
とそれぞれの表現について問い、何人かに説明させる。
働き掛け3:
- 「この中に考え方がよく伝わってくる表現の仕方はありませんか?」
- 「もっとこうすれば考え方が伝わるのになあということはありませんか?」
などと問い、表現のポイントをまとめる。
働き掛け4:
- 自分にとって必要な表現のポイントを選ばせ、『考えのあしあと』を修正させる。
働き掛け5:
- 全員の修正後の表現を一斉に掲示させる。
①「分かりやすく表されているか」
②「新しい考えはあるか」
の2つの観点で相互評価させる。
- 新しい考えを発表させる。
働き掛け6:
* 以下の発展課題を提示し、『考えのあしあと』に表現させる。
「どのマットが一番こんでいると言えますか?」
①マット3まい、16人
②マット5まい、28人
③マット7まい、37人
※発展※
- 1平方キロメートル当たりの人数のことを「人口密度」と呼ぶことを教える。
- 「単位量当たりの大きさ」についての問題をいくつか提示し、問題解決させる。
4 主眼
3つの表現から、その着想や表現の工夫を考える活動を通して、どちらか一方の量を固定して他方の量で比較する表現の仕方が分かるようにする。
5 評価
①検証すること
働き掛け2・3・4が、①内容知と④体験知(B1)を獲得することに有効か。
②検証の方法
①内容知
3つの表現のうち、自分に不足している表現を認識し、それを修正している時、表れありとする。
④体験知(B1)
以下のような自分にとって足りない表現上のポイントを認識し、それを修正している時、表れありとする。
- 一定の量をそろえている線分図
- 仮定する言葉
- 式を説明する言葉
- たてにきちんと並んだ式
- 言葉の式
6 編集後記
実際にマットを使って「こんでいる」「すいている」状態を体験することで、その後の授業が楽しくなり、かつ理解も早まると感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 松村健太郎)
7 講師プロフィール
間嶋 哲(Mazima Akira)
1965年、新潟県に生まれる。新潟大学教育学部を卒業。
新潟県内の小学校で活躍後、文部科学省での1年間の研修を経て、現在、新潟市教育委員会学校支援指導主事。算数授業ICT研究会理事。全国算数授業研究会総務幹事。
趣味は、海外旅行・外国語会話・スキー・ギター(フォークとクラシック)・読書・園芸・熱帯魚飼育など、多岐に渡る。
大学の卒業旅行を機に、旅行・外国語にはまり、旅行記を一冊出版したほどのエピソードを持つ。
●HP
間嶋哲のHPへようこそ… http://bit.ly/homepage_majima
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