「セッちゃん」でいじめについて話し合う(坂本哲彦先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1、はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページから引用させて頂いたものです。
坂本哲彦先生のホームページはこちら→  http://p.tl/a-TK

昨今の日本ではいじめが大きな問題として世間の注目を集めており、私達はいじめについて、子ども達に教育で何を伝えるべきなのか改めて考える必要がある。この授業計画では、子ども達にそもそもいじめがなぜ悪いことなのかを自分の頭で考え、また悪いと思っていても、傍観者としていじめを容認している自分がいないかどうか議論を通じて反省してもらう。

2、概要

対象

中学生

ねらい

だれに対しても公正、公平であり、差別や偏見なく友達づきあいをしようとする態度を養う。

内容

(1) いじめに対して怒りをもつ

  • もしセッちゃんが自分だったらどう感じるか、想像すること。

(2) いじめについて自分なりに考える

  • 「加奈子の主張点」に対して自分なりの考えをもつこと。

資料

『セッちゃん』 重松 清:作(「ビタミンF」H15.7.1 新潮文庫 所載)
※ 粗筋(提示箇所p162-167)

二学期になって転入してきたセッちゃんがクラスになじめず無視されるなど、いじめに遭っていることを父母に話す娘、加奈子。加奈子は、次のように言う。

「みんな、セッちゃんのこと、いじめてるわけじゃないよ。嫌ってるだけだもん。いじめは悪いことだけど、誰かを嫌いになるのって個人の自由じゃん。『いじめをやめろ』とは言えるけど、『あの子を嫌いになるな』なんて言えないでしょ。」(中略)「嫌いだから、振り付けが変わっても教えなかったの。嫌いだから、笑うの。嫌いだからシカトするの。しょうがないでしょ、それ。…」(P166 2-7行)
(原文の一部分を抜粋して提示)

3、学習過程(90分授業)

資料を聞き、感想を出し合う。 (15分)

「今日は、いじめについて考えます」と告げ、すぐに資料提示。「自分がセッちゃんだったら、と思って聞いてください。」と話す。
提示1:話の概要を端的に話し、上記提示箇所をゆっくりと補説しながら話し聞かせる。ただし、考える観点が複雑になることを避けるため、転入生セッちゃんと主人公加奈子の関係(この話の仕掛け)については、扱わない。(5分)

発問1:「二人組、または三人組で感想を述べ合ってください。」(10分)

  • 人物関係・事実関係を簡単に整理して板書する。
  • 物語と学習内容に関心を高めるための活動なので、全体での発表はしない。

  一人一人の参加度を高める。

加奈子の発言について話し合う。(60分)

提示2:上記引用箇所にある「加奈子の主張点5つ」を下記のとおり板書する。(5分)
①「いじめは悪いことだけど、誰かを嫌いになるのって個人の自由」
②「『いじめをやめろ』とは言えるけど、『あの子を嫌いになるな』なんて言えない」
③「嫌いだから、振り付けが変わっても教えなかった」(生徒が振り付けを考えることになっている運動会の創作ダンスで、セッちゃんだけ、振り付けが変わった部分を教えてもらえず、合同練習するたびに、セッちゃん一人が以前の振り付けのまま踊ることになり、周囲から浮いていたことを指している)
④「嫌いだから、笑う」
⑤「嫌いだから、シカトする」
 
発問2:「加奈子の主張点、それぞれの善し悪しについて話し合いましょう。どの考えがどんな理由で間違いでしょうか。」

  • ①~⑤の主張点が書かれたワークシートに、一人一人自分の考えを書く時間を確保する。(5分)
  • その後、グループで自由に「しゃべり場」をつくる。(20分)
  • 全体で「しゃべり場」する。(30分)

※「<span style='font-weight:bold;'>しゃべり場</style>」とは…
 ①から順に意見を求め、それぞれの立場(正しいか誤っているか)や理由の差異を明確にしながら話し合いを進める。机を廊下に出し、椅子を半円になるように並べ、板書と互いの顔がよく見えるようにして話を出し合う。沈黙を大切にし、自由発言を行う。

  • 概ね次のようになることが予想される。「いじめは悪いこと」という加奈子の認識は正しい。いじめの行為の中には、犯罪であるものも少なくない(具体的な例示)。「だれかを嫌いになるのは個人の自由」という考えについては、「結果として、好きになれない、あるいは嫌いである」という前提が存在することは理解できる。
  • しかし、だからといって、③④⑤のように「嫌いである」ことを理由に「クラス全員に知らせなければならないことを意図的に知らせないなどの不利益、不公平なことをする」、「笑う」「シカトする」ことは、間違っており、それそのものがいじめである。加奈子の主張することは、一方で「いじめは悪い」としながらも、具体的な行為のレベルで「いじめを積極的に認めている」点で矛盾している。
  • 大切なのは、たとえ、好きになれない人に対しても思いやりの心をもち、親切にすることができることなのである。その人のよい面を積極的に見つけようとして、その人を好きになることが大切であるが、仮に、それができない場合でも、その他の多くの人(特別に仲のよい人ではない人)と同じように付き合うことが重要である。このことについては教師の方から話すのもよい(それが、子どもたちをかえって追い詰めたり、しらけさせたりする場合もあるけれども…基本はそうである。嫌いな人にも親切にできるスキルも重要である)。

授業の感想を書く。(10分)

発問3:「今日の授業の感想を書きなさい。いじめについてのあなたの考えを書いてください。」

※書くことを強要しない。
http://p.tl/Hq5j より引用) 

編集後記

加奈子のような心情を持つ子どもは少なくはないであろう。いじめが悪いとは思いつつも、なぜ悪いのかについて考えることもなく何もしない傍観者。この授業の核心は、子ども同士の積極的な議論を通して、いじめに直接参加していないとしても、結果としていじめを肯定している自分がいないかどうか反省してもらうことである。授業の最終目標は、いじめられる子どもの気持ちを自分だったらと想像し、自分が好きになれない人に対しても思いやりや寛容な心を持つことの大切さに気づかせることである。いじめを未然に防止するには、子ども達がいじめについて真剣に自分の頭で考えるこのような機会を、数多く作っていく必要がある。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 筬島大輔)

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