学級づくり4月の戦略(後半)

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作成者: 赤坂真二さん

※前半の記事はこちら
→学級づくり4月の戦略(前半)
http://edupedia.jp/entries/show/832

1 概要

前半では主に「集団づくりの重要性」について説明しました。そこで後半では具体的に、集団づくりのための「つながる力」をどのように養成していくか、ということを精神対話士の方法論を参考にしながら考えていきます。

2 動画

動画③


動画④


動画⑤

3 目次(前半の続き)

5.つながるエネルギーの必要性

6.実際の会話の例—精神対話士に学ぶ—

7.「つながりモデル」になる

8.コミュニケーションの質と量を上げる

9.教室におけるハード&ソフトアプローチ—優れた実践の前提—

4 5.つながるエネルギーの必要性—「信頼できる他者」になる—

学校において子どもたちは現在、関係性の希薄化・不安定化の状況にあります。しかし、実は多くの子どもたちがつながりを希求しているのです(例:気持ちを丁寧に表現できない、気の合う者としか関わらない⇔Twitterやブログなどの情報ツールを駆使してなんとかつながろうとしている)。クラスの中で1人ぼっちになりたいと思っている子どもは1人もいません。1人ぼっちになりたいと表現している子どもは、つながるための期待に敗れ、つながることをあきらめている子どもなのです。これがいわゆる「行動におけるギャップ」です。

人は、いきなりつながりはしません。つながるにはエネルギーがいります。ですので、つながるには「信頼できる他者」の存在が重要です。そして学校でこの役割を担うのは、教師なのです。教師が子どもたちに、つながるエネルギーを与えていくことで、子どもたちのつながる力が育っていくのです。子どもが単独で学びの世界(文化(学習)、社会(人間関係))に飛び込んでいくことは難しいことですが、「信頼できる他者」である担任のサポートがあることで、挑戦への欲求をかきたてることができます。

教師が4月にやらなければいけないことは、子どもにとっての「信頼できる他者」になり、つながるということです。教師と子どもがつながるということが、こどものつながりの世界を広げる第一歩となるので、これは最低限コストをかけてでもやるべきことなのです。

子どもの求める教師像として「~できるようにしてくれる先生」はもちろんのこと、最近は「つながってくれる先生」を求める子どもが増えてきているということが事実として検証されています。

その「つながる」エネルギーの素としては以下のようなものが挙げられます。

これらを互いに感じ合うことで、つながることができるのです。先ほども述べたように、最初はT(Teacher)-C(Child)間で保証し、最終的にはやがてC-C間で保証できるようにすることが大切です。なぜならば、教師はクラスの中の1人の人間にしか過ぎません。子ども同士でつながっていくことで、教師が1人の子どもに与えられる温かいことばの何十倍ものことばをもらうことができるのです。

このつながるエネルギーを保証するのに最適な手段は「おしゃべり」です。子どもたちの意識調査のなかでも、家族との会話が多い方が家族との関係に対する満足度が高いということが分かっています。おしゃべりは脳を活性化します。コミュニケーションが生活満足度を上げるのです。4月はT-C間でのコミュニケーションを増やすことが最も重要なのです。

5 6.実際の会話の例—精神対話士に学ぶ—

では、実際、どのように子どもたちと会話をしていったらよいのでしょうか?ここでは精神対話士から、子どもとの会話の方法を学んでいきたいと思います。
(※精神対話士:孤独感や寂しさ、心の傷みを感じている人(クライアント)に寄り添い、暖かな対話を通して気持ちを受け入れ共感し、人生に生きがいを持ち、よりよい生活を送れるよう精神的な支援を行う心の訪問ケアの専門職)

○ 精神対話士による会話のポイント

  • 相手の存在を認める
  • 相手の言動に関心をもつ
  • 相手の成長をうながす
  • 相手のやる気を引き出す
  • 相手のことを高く評価する

 【実際の例】
●相手の存在を認める

  • ~(という)気持ちなんですか:共感
  • こんにちは:あいさつは存在の承認
  • 最近どう?:関心を向けるあいさつ
  • 今日はいい天気だね:近接行動(心理的距離を近める)
  • 元気だった?:気にかける

●相手の言動に関心を示す

  • さすが:その場でほめる
  • 笑顔がいいね:気づいたことをほめる
  • 一生懸命聞いていましたね:事実の指摘(ほめなくてもいい。あくまで指摘
  • よく知っていますね:博識をほめる(自分の知らないことを子どもに聞く)
  • 文字が美しいですね:具体的意にほめる
  • いつもがんばっていますね:努力をほめる(好ましいことは”いつも”を付ける!)

●相手のやる気を引き出す

  • どこに行っても大丈夫だよ:不安を除く
  • ちょっと教えてくれる:自尊心を刺激
  • あなたがいて本当に助かった:感謝
  • みんなのお手本だから:期待
  • 帰り気を付けてね:気遣い(常にあなたのことを思っているよ!)

あたたかいひとことを子どもと交わすことによって、子どもたちが「今日も先生とあたたかい会話ができたな」という思いを積み重ねられるよう、コミュニケーションをとることが大切です。これらは当たり前に実践していることかもしれませんが、意識的に実践してみましょう。

6 7.「つながりモデル」になる

ここでは「つながりモデル」になるための方法を3つ紹介します。

子どもたちの中には「どうやって人とつながっていくのか」「どうやってつながったらいいのか」というようなモデルを持ち合わせていないという人もいます。そこで、1つ目として、特に4月は教師からつながる言葉を発信していくというものがあります。例えば、

  • 「いつもそばにいるから」
  • 「見ているからね」
  • 「何かあったら言ってね」
  • 「先生も嬉しかったよ」

 
というような言葉です。最終的には教師からのこのような言葉が見かけ上、なくなっていくことが理想的ですが、最初の段階ではこのような発言をどんどんして、教師の側からエネルギーを注入していきます。
 
2つ目の方法として、つながるためにはどのような言葉で、どのような行動をすればよいか具体的に伝えるというものもあります。「こういう言い方じゃ伝わらないかもね」「○○君の代わりに先生が代わりに言ってみるよ。どう、ほら、分からないでしょ」というような会話を通して、こういう言葉を使えばつながれる、こういう言葉を使ってもつながれないということを実際に教師がデモンストレーションをし、示すというものです。
 
3つ目の方法は、つながる力を発揮したらほめるというものです。そうすることで、教師ではなく、子どもの中にモデルが発見されていきます。

  • 「自分で声をかけることが大事だね」
  • 「○○さんのおかげで、みんながグループになれたね」
  • 「笑顔で聞いてくれるとうれしいね」

7 8.コミュニケーションの質と量を上げる

 
よく、チーム作りの世界ではチームを作るとき、「コミュニケーションの量を確保」し、そしてその「コミュニケーションの質を上げていく」ことが初期段階でとても大事だと言われますが、学級経営においてはまず、子どもたちにいきなり働きかける前に、教師と子どもの間でそれを実現していかないといけません。なぜならば、「教師の言葉が入る環境作り」を最初にやらなければ、学級経営どころではなく、子どもとの関係が上手くいかなくなってしまうからです。つまり、学級づくり成功の1つの鉄則として、4月の間に、コストをかけてでもT-C間のコミュニケーション量とコミュニケ—ションの質を上げていくということが挙げられるのです。
 
そこで重要になってくるのが、1対1で話す機会を作るということです。例えば、登校時間に朝教室で子どもたちを待ったり、日直を活用し、そこで話したり、交換ノート(日記)を使って間接的に会話をしたり、「みんなとおしゃべりしたいから」ということで子ども懇談会(おしゃべりタイム)設けたりするのです。この際、先ほどの精神対話士のテクニックを使うとより効果が出ます。そうすることで、子ども同士(C-C間)で「かかわってよかった」という関係性ができあがり、コミュニケーション可能性が安心感を生むのです。

8 9.教室におけるハード&ソフトアプローチ—優れた実践の前提—

 
教師は、「信頼できる他者」として、子どもたちにとっての「つながりモデル」になり、子どもたち間での「つながり」を築き、良好な学級を経営していかなければなりません。
 
日本中にはたくさんの実践力の高い教師がいますが、彼らの共通点として挙げられるのが、「教室におけるハード&ソフトアプローチ」というものです。というのは、子どもの高いパフォーマンスは教師の厳しい(妥協のない)指導が必要である反面、逆にそれらの厳しい指導を支えるのは思い切りあたたかい指導であるということです。そもそも、教師の指導性の高さは子どもからの信頼感の高さによるものであるため、早急に2人だけの物語(エピソード)を持ち、信頼関係を築くことが、後の子どもたちの高いパフォーマンスを作っていくということになります。

9 編集後記

 
よりよい学級経営をしていくにあたって、「教室の雰囲気」というのは非常に重要になってきます。また、子どもたちが自らの自我を形成していくにあたり、「他者とのつながり」というものは非常に重要なポイントになってきます。そこで赤坂先生は、「4月は教師がお手本となり、いくらコストをかけてもいいので子どもの『つながる力』の養成に励むべきだ」ということをご指摘なさりました。よりよい学級経営をしていくためにも、子どもたちの自我の形成を促進していくためにも、また、対人関係の基本としても、このような赤坂先生の実践は非常に参考になるものだと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 伊原貴義)

10 講師プロフィール

 赤坂 真二
 
上越教育大学 教職大学院 学校教育専攻科 教育実践高度化専攻 准教授
著書に
『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』(明治図書出版、2011年)
『「気になる子」のいるクラスがまとまる方法!』(学陽書房、2011年)
『先生のためのアドラー心理学—勇気づけの学級づくり』(ほんの森出版、2010年)
 ほか、多数

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