【つくつた+あつまと】「あたらしい1年生にビデオレターをおくろう」

41

この実践は、「つくつた+あつまと」研究者の稲垣忠先生から許可を頂いて、
「つくってつたえる ~メディア制作を助けるWeb教材~」サイト上から
転載させていただいております。サイトへは下記URLよりアクセスいただけます。
http://www.ina-lab.net/special/tsukutsuta/

目次

1 【「つくつた+あつまと」とは・・・】

「つくつた」とは、子どもたちがさまざまなメディア作品をつくり、いろいろな人につたえる、そんな学びのことです。国語でプレゼンテーションをつくったり、社会科で調べたことを新聞にまとめたりします。つくった作品はせっかくだから誰かに見せたいもの。「うまく伝わったかな?」「あの人たちに伝えたい」そんな思いがつくる活動をいっそう魅力的にします。

「あつまと」は、「つくつた」の活動の際に情報の収集や整理を支援してくれる学びです。社会や国語の授業では、情報処理について細く考える時間を取ることは困難です。そこで代表的な情報収集の手段について「あつまと」を通して学び、子どもたちの伝えたいことをきちんと伝えられる力を身につけることができます。

サイト上にてプレゼン用・新聞用・ビデオ用・リーフレット用の四種類のメディア制作を助けてくれる「つくつた」教材が公開されています。
以下は、その教材の概要です。
1. 4つのメディアごとのポイント:新聞、プレゼン、ビデオ、リーフレットを子どもたちがつくるときにどんな点に気をつけたらいいか、どんなところを工夫するとよいかがわかるポイントを6つずつ紹介しています。
2. ポイントごとのルーブリック:ポイントごとに、すばらしい(S)、よくできている(A)、もう一歩(B)、がんばろう(C)の4つのステップで具体的に基準(ルーブリック)を見ることができます。
3. ルーブリックの基準ごとのサンプル:子どもたちがルーブリックを見るときに、さらに具体的に伝える上で重要なことがどんなことなのかわかるように、各ステップごとのサンプルを用意しました。4つのメディア×6つのポイント×4つのステップ=96個ものサンプルを見ることができます。

「あつまと」では、「図書」「ウェブ」「インタビュー」「アンケート」の四種類の情報をどのように集めて活用するかを考えさせてくれる教材が公開されています。

  1. 四種類ごとの調べ方について、「あつめる」と「まとめる」の二つに分けて注意するべきポイントを紹介しています。「あつめる」では調べ方の注意から調べた情報の確認までを紹介し、「まとめる」では実際に調べた情報をどのようにアウトプットするかを説明します。2/ ポイントにはそれぞれ3つのステップごとに「お手本」と「あと一歩」の参考を動画やサンプル画像で紹介し、気をつけるべき点を確認することができます。

2 【授業の概要】

下記は、この実践のURLです。
【実践事例】「あたらしい1年生にビデオレターをおくろう」

http://www.ina-lab.net/special/tsukutsuta/index.php/case/83-111207kandai

「つくつた」が小学校1年生の授業に使われました!

 

大阪府高槻市にある関西大学初等部の1年生を担任する山中昭岳先生は、生活科で「あたらしい1年生にビデオレターをおくろう」という単元を設定しました。新年度に入学してくる新1年生を相手に、自分たちの学校を紹介します。春に取り組んだ学校探険のことも思い出しながら、伝えたいことを考えます。教頭先生からの「ミッション」として、実際に入学説明会で使用することを伝えることで、子どもたちは張り切って撮影に向かいました。

3 【授業の内容】

ビデオ撮影に使用したのはiPadのビデオカメラ。機能がシンプルで1年生でも簡単に撮影することができます。伝えたい「ひと・もの・こと」は、学校の図書室、警備員さん、近くを走る電車など。ビデオで撮る前に、何を撮りたいのかしぼりこむために、まず写真から。撮りたいものを集め、教室に戻って3つにしぼりこみます。

いよいよビデオ撮影・・・と進んだのですが、最初はなかなか上手に撮れません。その場ではよく撮れたと思っても、教室に戻って確認すると、何だかわからなかったり、ブレていたり。

そこで1回目のつくつた教材の活用です。つくつた教材を見ながら、何を撮ったらよいか、カメラをどう使ったらよいかなどをサンプルを見ながら話し合います。

1年生にはルーブリックの文言を読むことは難しいので、サンプルを見せながら、自分たちで話し合って、気をつけたいこと、工夫できることを見つけていったそうです。ここでの見せ方は見せ方の工夫の低いCから高いSへ。ビデオの教材は「おぞうに」を紹介するビデオなのですが、Cの時には反応が少なかった子どもたちがSを見たときに「美味しそう!」という声があがったことに先生も驚いたそうです。やはり見せ方で伝わる印象、変わるものですね。


さらに、グループで撮りにいってもiPadは1つ。役割分担を考える必要があります。つくつた教材の中ではアナウンサー役の人がいたので、それを真似てみることに。他にもどんな役割の人がいるかたずねてみると「カメラマン」「かんとく!」といった声があがります。もう1人をアシスタントさんとして4人チームができあがりました。2回目の撮影でも随分と撮り方に変化があったとのことでした。

 
見学させていただいたのはその次の時間。撮影したビデオを振り返りながら、もう一歩、ブラッシュアップする時間です。子どもたちにどうやって自分たちのビデオを見直すかたずねたところ、子どもから「つくつた教材とくらべてみる!」との声が。
 
つくつた教材の「つくる」パートにある「内容」「カメラ」「音」の3つについて、これまで撮影したものとつくつた教材を見比べて自己評価した結果をワークシートに記入します。
ビデオも教材もiPadに入っているので、簡単に見比べられます。


 
出てきた反省点としては「いらない音がはいっていた」「何を写しているのかわかりづらい」「ブレていた」「いらないものが写っていた」「近づいてなかった」といった直したいところが挙げられ、また「アップでとれていた」「せりふを上手にいえた」などよかったところも意見が出ました。Sをつけたグループの作品を電子黒板に写し、どうしてSと思ったのか、どういうところがよいのか共有します。

 
次の時間、これまでの活動を振り返るところから授業再開です。撮影の計画書(絵コンテ)を書いたこと、つくつた教材を分析して見つけた撮影の「わざ」、何より、新1年生にどんな気持ちになってもらうためにビデオレターをつくるのか再確認しました。目的やポイントが明確になったところでグループで作戦会議へ。次の撮影に向けてどんなことを気をつけたらいいのか話し合います。

 
話し合いが終わったところから撮影へ。グループ内での役割分担、カメラの距離や話し方、さまざまな工夫をしながら、伝えたいことにしぼって、撮影うまくできたかな? 見学できたのはここまで。この後、単元では撮影してきたビデオをつなげてビデオレターをつくり、1月には新1年生にお披露目するとのこと。完成が楽しみですね!

4 【授業者からのコメント】

 
1年生でビデオ制作がどこまでできるのか不安もありましたが、つくつた教材とiPadで思った以上に取り組むことができています。通常、ビデオ制作では撮影の仕方、台本、役割などを決めてから進めていきますが、1つ1つにどんな意味があるのか実感しないと1年生で相談するのは難しいと考え、通常とは逆の順番、つまりまず撮影を楽しみ、うまくいかないことに気付かせながら、必要なことを子どもたちと相談しながら進めています。
 
繰り返し撮影に行くことで、警備員さんを含め校内のさまざまな方と関わる機会にもなっているようです。つくつたのルーブリックの言葉は1年生には難しかったので、みんなでサンプルを分析してみたところ、自分たちのビデオに足りないことにたくさん気付かせることができました。
 
4段階あることでどこが変わったのか、注意深く見ることができたようです。
 
1年生でこうした経験をしておくことができれば、上の学年に進んだときにもっと質の高い活動ができそうです。その時にはまた、つくつた教材とともに、今回つくった作品を見せてみたいと思います。
(山中昭岳・関西大学初等部)

5 【研究者からのコメント】

  
山中先生の授業では、つくつたの「つた」の部分、つまり伝える相手を明確に持つことの大切さを実感しました。新1年生にどんなことを伝えたいのか、教頭先生からのミッションという「壁」を設定することで、単にきちんととれた映像をつくるための活動ではなく、伝えたいことを意識した学習活動へと深まっていきました。
 
今回気付いた教材の課題点として、「どのようにしたらそのように撮影できるのか」はサンプルからは分からないことがあります。ブレないためにどう構えたらよいか、音をちゃんととるにはどんな距離で、どのくらいの声で話したらよいか、といったことを考えるきっかけは与えられるけれど、具体的にどうすればよいかは子どもたちが見つけるか、教師が指導する必要があります。
 
実際、子どもたちはいろいろ試しながら、脇を閉めてもつことや、声の大きさに気付いたようです。撮影したその場で確かめられるタブレットとのセットが、子どもたちの試行錯誤を促していたことがわかりました。
(稲垣忠・東北学院大学教養学部)

6 【編集後記】

 
1年生から学年が上がる時期に上級生としての意識を深められる授業だと思いました。
 
つくつたを用いることにより、自分たちだけでプレゼンを試行錯誤し、伝えることの考え方や姿勢、上級生としての責任感を一層感じながら学ぶことができたのではないでしょうか。
 
自身で何かに気づいて改善していくことは、今後への貴重な経験となるでしょうし、他の授業などにも活かしていくことができます。ICTを使った自主学習型授業の実践が広まっていけばと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

7 【つくつた実践者プロフィール】

関西大学初等部  山中 昭岳先生
「つくつた」研究チームメンバー。

【つくつた研究者プロフィール】

東北学院大学教養学部 准教授 稲垣 忠先生

公益財団法人パナソニック教育財団の「平成23年度先導的実践研究助成」(「『つくって伝える』学びの質的向上を目指したルーブリック連動型Web教材の開発」)、同平成24年度「『集めてまとめる』情報活用を支援するデジタル教材と授業モデルの開発」研究代表者。

文部科学省「情報活用能力調査に関する協力者会議」委員、「学びのイノベーション事業指導方法等に関する検討会」委員、「国内のICT教育活用好事例の収集・普及・促進に関する調査研究」企画委員。

ネットワーク社会と呼ばれる現代の中で、教育にもネットワーク構造が取り入れられ今後どのように教育現場が変わっていくかという研究関心を持っている。具体的には小学校~高校のさまざまな学校現場にかかわりながら、情報教育、教育の情報化、学校間交流学習などを切り口に研究を展開している。

主な著書に『デジタル社会の学びのかたち: 教育とテクノロジの再考』(北大路書房)や
『授業設計マニュアル〜教師のためのインストラクショナル・デザイン』(北大路書房)、『学校間交流学習をはじめよう』(日本文教出版)などがある。
http://amzn.to/WrIvqK
http://amzn.to/XI8ZB5
上記は順に先生の著書のアマゾンサイトのリンクになります。

〈HP〉イナガキタダシのほーむぺーじ
URL: http://www.ina-lab.net/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次