「新世紀!宇宙に浮かぶぼくたちの星座」〜ICT活用でファンタジーの世界へ〜(下村圭先生)

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目次

1 豊かな情操を育む

子どもの知識や経験からでてくる子どもなりの発想に十分寄り添い、認めてあげること。下村先生が図画工作科の指導において大切にしていることです。
この実践では、子どもたちが自分の想像する星座をイメージし、表現していきます。最後はプロジェクターで壁に投影し、友達同士で鑑賞し合います。   

下村先生は、偶然できたビー玉の散らばりから形を紡ぎ出す活動は、造形的な感性を鍛え、将来的に豊かな情操を育むことにつながると考えています。さらに、1学期の理科の授業で星座について学んだ子どもたちは、星空の世界の神秘や神話へ想像を広げていたこともあり、取り組みやすい内容でもありました。

3回の単元計画の内、2回目の本時では、本座や家座、かみなり座や初心者マーク座など単純だが子どもらしく的を射た表現の星座が出て、それを子どもたち同士で認め合っていたのが印象的でした。その具体的な実践内容と教師の支援におけるポイントを紹介していきます。
子どもたちを引き込んだ導入の工夫やICT機器を使った雰囲気作りと鑑賞の時間への活用方法も注目です。

2 題材の目標

【関心・意欲・態度】自分の星座のイメージを求めて主体的に活動できる。   
【発想・構想】星と星の配列や組み合わせから星座の姿をイメージすることができる。

【技能】イメージした姿を工夫して表すことができる。

【鑑賞の能力】できあがった星座を見せ合い、感じ取った感想を紹介し合って楽しさを共有できる。

3 題材全体プラン(3時間扱い)

4 本時のねらい

自分なりの発想で星座を表現することができる。

5 授業展開

① 全員でビー玉の星を床面に一斉に転がし、宇宙の星空を完成させる。

♦教師の支援におけるポイント

  • 星座と神話の世界にどっぷりとつかれるよう、暗幕をかけ、プロジェクターを使用して幻想的かつ神秘的な雰囲気のなかで導入を行う。
  • 真ん中にくす玉を置いて、地球をイメージさせる。
  • 指示が通るように説明はしっかりとしつつも、何をやるかは秘密にしておく。
  • 子どもたちを主人公にした物語を話して聞かせることで、これからの活動への意欲が高まるようにする。

(例)「昔々、空には星がなく、地上の旅人は夜には真っ暗な世界を旅し、航海していた。あるとき一番大きい神様が、35人の小さい神様に、空に星を散りばめさせると、35人の小さな神様たちは、自分の名前のついた星を中心に星座を作り始めた」

② 本時のめあてを確認する。

めあて:宇宙に自分の星座をつくろう!

③自分の星と、星をつなぐ線をもちい、自由に組み合わせて気に入った形を作る。


大だこ座の一例

  • モール(金と銀がよい)を使って星と星をつなぐ。
  • 白い毛糸でその周りに見立てた形の線を表現する。
  • 自分の星を置くのはどこでも良い。
  • 不要な星は取り除いて良い。
  • はじめは一人でつくる。

♦教師の支援におけるポイント

  • 目立つ星座、見つけやすい星座には特徴があることに気づかせる。

(例:同じ大きさの星が並んでいるオリオン座、星が等間隔で並んでいる北斗七星や夏の大三角、直角で交わる星がある白鳥座。)
* 見立てる際のコツ(特定の色だけ見ること等)に気づかせる。
* ただ正面から見た形ではなく、動きのある姿が想像できるようにする。

④デジタルカメラで撮影し、パソコンを介して壁の上方に映写する。

  • 友達と協力し、星と線だけの星座の姿と、絵までつくった星座の写真2枚を撮影する。

♦教師の支援のポイント

  • プロジェクターは上に傾け、できるだけ天井に近い部分に映し出す。
  • 3台のカメラからパソコンへはワイヤレスで画像を転送し、子どもたちが電子黒板を使って直 感的に、負担が少なく操作ができるようにしておく。
  • 自分のつくった星座がすぐ映写されて、さらに友達にも見てもらうことで、新たな星座づくりへの意欲を喚起する。

☆ここで利用するのが、「Eye-Fi(アイファイ)カード」
世界初の無線LAN内蔵SDカードです。

デジタルカメラにセットするだけで、撮影した写真が自動的にEye-Fi カードから無線LANアクセスポイントを経由して、あらかじめ設定したパソコンや各種オンライン写真サービスに自動的に写真を転送することができます。

また、Eye-Fiダイレクトモードを有効にすると、周囲に無線LANの環境がなくてもパソコンに写真や動画を直接転送することができます。Eye-Fiカードが自ら無線LANアクセスポイントとしてネットワークを作成し、写真や動画をパソコンで受信できる環境になります。これを使用することで、暗い中でも写真を撮って簡単にPCに転送することができた。
詳しくはこちら http://eyefi.co.jp/support/faq/enable-direct-mode-to-computer/

☆電子黒板のソフトウエアは「アクティブインスパイア」

引用: http://www.narika.jp/activ/software/index.html

  • 子どもたちは、PCに送られてきた画像を電子黒板で操作して、自分の写真をフリップチャート上へ移動させた。

⑤一つ完成したら、次の星座づくりにとりかかる。

  • 次は2人の星が入って、もっと大きな星座をつくろう!
  • となりの星座と物語をつなげよう!

♦教師の支援のポイント

  • 活動への制約をできるだけ取り払い、子どもたちの意欲に任せた活動が広がっていくようにする。

6 下村学級での実践における子どもたちの反応


ジグザグの線のつながりが、翼に見えるよ。


下に集まった星がきれいなコップ座だよ。


友だちのつくったアイス座と仲良しの雪だるま座だよ。

☆その他
三角形のおむすび座、六角形がきれいなカメ座、見える角度を変えたらエイのしっぽに見えてきたぞ。など。

7 鑑賞の時間

友だちと楽しく想像をふくらませながら会話をする姿がみられ、本題材に没頭できる要素となったのではないだろうか。

8 まとめ

子どもたちをやる気にさせる導入、子どもたちへの支援方法、ICT機器の活用により、より子どもたちの豊かな情操を育むことにつながっています。細かい雰囲気作りや小さな支援が子どもたちのやる気につながるのです。精一杯感性を働かせ、「見えなかったものが見えるようになる」実感をもつことで、自分と関わる人、物、環境、そして自分自身の可能性ともつながれると信じる、そんな子どもたちを下村先生は育てていきたいと考えています。

9 編集後記

図画工作科でのICT機器活用方法として、革新的な利用方法であると思いました。また、雰囲気作りも授業実践の大切な要素だということも改めて感じました。小さな工夫が子どもたちにとって大きな変化を生む。これはどの教科においても言えることです。その中でも特に図画工作科では子どもたちの表現力向上へつながる第一歩であると感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 齋藤千秋)

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