【つくつた+あつまと】「歴史新聞をつくろう」

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この実践は、「つくつた+あつまと」研究者の稲垣忠先生から許可を頂いて、「つくってつたえる ~メディア制作を助けるWeb教材~」サイト上から転載させていただいております。サイトへは下記URLよりアクセスいただけます。

http://www.ina-lab.net/special/tsukutsuta/

目次

1 【「つくつた+あつまと」とは・・・】

「つくつた」とは、子どもたちがさまざまなメディア作品をつくり、いろいろな人につたえる、そんな学びのことです。国語でプレゼンテーションをつくったり、社会科で調べたことを新聞にまとめたりします。つくった作品はせっかくだから誰かに見せたいもの。「うまく伝わったかな?」「あの人たちに伝えたい」そんな思いがつくる活動をいっそう魅力的にします。

「あつまと」は、「つくつた」の活動の際に情報の収集や整理を支援してくれる学びです。社会や国語の授業では、情報処理について細く考える時間を取ることは困難です。そこで代表的な情報収集の手段について「あつまと」を通して学び、子どもたちの伝えたいことをきちんと伝えられる力を身につけることができます。

サイト上にてプレゼン用・新聞用・ビデオ用・リーフレット用の四種類のメディア制作を
助けてくれる「つくつた」教材が公開されています。
以下は、その教材の概要です。

1.4つのメディアごとのポイント:新聞、プレゼン、ビデオ、リーフレットを子どもたちがつくるときにどんな点に気をつけたらいいか、どんなところを工夫するとよいかがわかるポイントを6つずつ紹介しています。

2.ポイントごとのルーブリック:ポイントごとに、すばらしい(S)、よくできている(A)、もう一歩(B)、がんばろう(C)の4つのステップで具体的に基準(ルーブリック)を見ることができます。

3.ルーブリックの基準ごとのサンプル:子どもたちがルーブリックを見るときに、さらに具体的に伝える上で重要なことがどんなことなのかわかるように、各ステップごとのサンプルを用意しました。4つのメディア×6つのポイント×4つのステップ=96個ものサンプルを見ることができます。

「あつまと」では、「図書」「ウェブ」「インタビュー」「アンケート」の四種類の情報をどのように集めて活用するかを考えさせてくれる教材が公開されています。

1.四種類ごとの調べ方について、「あつめる」と「まとめる」の二つに分けて注意するべきポイントを紹介しています。「あつめる」では調べ方の注意から調べた情報の確認までを紹介し、「まとめる」では実際に調べた情報をどのようにアウトプットするかを説明します。

2.ポイントにはそれぞれ3つのステップごとに「お手本」と「あと一歩」の参考を動画やサンプル画像で紹介し、気をつけるべき点を確認することができます。

2 【授業の概要】

下記は、この実践のURLです。
【実践事例】「歴史新聞をつくろう」
http://www.ina-lab.net/special/tsukutsuta/index.php/case/76-110930nagano

社会科の歴史学習での「つくつた」教材活用授業です!
南島原市立長野小学校は長崎県の雲仙岳のふもとにあります。小規模校なので6年生は9名(授業者は田中健太郎先生)。iPadを1人1台使える環境にしての授業でした。

6年生の社会科では学んだことを新聞形式でまとめられる先生も多いかと思います。
田中先生のクラスでは今年4回目の新聞づくりにいよいよ、iPad+つくつた教材を投入しました!

3 【授業の内容】

授業は2時間構成。前時にこれまで自分で作成した新聞を振り返り、つくつた教材の使い方を兼ねて、iPadを見ながら改善点を探ります。その後、「取材ノート」ワークシートに、教科書、資料集、iPadで調べたことをメモしました。本時は2時間目。杉田玄白、本居宣長、伊能忠敬の3人から1人を選び、調べたこと、学んだことを新聞にまとめます。伝える相手は5年生とのこと。5年生に3人の魅力が伝わるような新聞づくりに挑戦しました。

授業の導入ではめあてを確認したあと、つくつた名人の5か条の3「ためすべし」を紹介し、見出し、記事のわりつけ、図や写真の位置などをいろいろ試しながらつくってみてほしいと伝えます。歴史新聞として「おどろいたこと、歴史を変えた出来事」「難しい言葉や表現を使わない」「自分がしっかり理解する」「自分の考えを入れる」「時代背景を入れる」といった留意点もあわせて確認しました。

新聞づくりはデジタルではなくアナログで。子どもたちは取材メモをもとに、さっそく新聞形式の枠が書かれたA4用紙に記事を作成していきます。iPadで調べたことを確認する児童や、つくつた教材で見出しの書き方をチェックする児童もいましたが、ほとんどが黙々と書く時間でした。田中先生は言葉の使い方や文章表現についてじっくり個別指導にまわります。めあてと留意点がはっきりしているからこそ、サポートしたい子どもに寄り添える、そんなしかけがあります。

書く時間を20分ほどとったあと、同じ人物について新聞づくりをしている児童どうしでの相互評価の時間に入ります。付せんを使ってお互いの新聞のいいところをほめたり、アドバイスしたりしていきます。

ここで活躍したのがiPadのつくつた教材。どんな視点で見たらよいのか、具体的にほめたりアドバイスしたりするポイントはどんなところか、子どもたちはiPadで確認しながら付せんにコメントを書いていきます。田中先生は子どもたちの様子を見ながら「見出しのところを見てごらん」といった形で、どういったポイントを見るべきかアドバイスを与えていきます。

教材がなければ、「たとえば・・・」「◎◎のようにしたら」と具体的なアドバイスをその都度する必要がありますが、教材の説明動画とサンプルを見せれば、子どもたちは自分でアドバイスを考えていくことができました。

授業のまとめでは、子どもたちが書いた付せんをプロジェクタで投影して、どんなアドバイスがよかったのか共有しました。完成した新聞を5年生の子どもたちがどんな顔で読んでくれるか、楽しみですね。

4 【授業者からのコメント】

歴史の授業での新聞づくりには4月から3回、取り組みました。4回目になると子どもたちも慣れてきて、どう書けばいいのかはつかんでいるのですが、自分の書き方に満足してしまいがちです。つくつた教材を見せることで、目標が高くなっていく姿を見ることができました。

iPadは調べ学習にも使いました。教科書、資料集はみんな同じ情報なので、ネットを併用して友だちの知らない発見を新聞にしようと意欲的に取り組んでいました。

本時では特に相互評価の場面でつくつた教材を使いましたが、これによって指導の仕方が変わりました。

グループをまわっていて、気付かせたいことがあるときに、これまでなら例を挙げたり、説明が必要であったりしましたが、つくつた教材に説明をまかせることで、他のグループの支援にまわれます。先生に言われた通り直すのではなく、教材を見ながらどう改善するか自分で考えて引き出していたようです。(田中健太郎・南島原市立長野小学校)

5 【研究者からのコメント】

田中先生へのインタビューで印象的だったのが、「たくさん取材メモを書いている子ほど、調べることに時間を使っていない」という言葉でした。メモ=写すことになっていると、調べたことをすべて書き写してしまい、記事としての分け方やトピックの軽重を考えるよりも、写したメモをさらに新聞に写す、という作業になりがちなのだそうです。つくつた教材の「取材」のところで取り上げていますが、子どもたちの姿から教材の改善点も見いだすことができました。また、1人1台iPadがあることで、つくつた教材とじっくり向き合って考えてから、グループでの話し合いに活かしていたのも、この環境ならではの取り組みでした。(稲垣忠・東北学院大学教養学部)

6 【編集後記】

1人に1台iPadが配られているという環境が成立した状態での授業です。

大阪では来年度には全ての子どもたちにタブレットPCが導入されていきますが、今回の実践はその参考としてとてもわかりやすいものになっています。

ICTの使い道には、先生が授業の中で児童にわかりやすく説明するためにICTを活用していく形と、それぞれICTを使って1人で調べて学習し、先生はそこをうまくサポートしていく形があると思います。これからICT教材が先生の望む授業を助けてくれるようになっていくために、私たちは有効な使い方を考えていきたいです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

7 【つくつた実践者プロフィール】

南島原市立長野小学校  田中 健太郎先生
「つくつた」研究チームメンバー。

8 【つくつた研究者プロフィール】

東北学院大学教養学部 准教授 稲垣 忠先生

公益財団法人パナソニック教育財団の「平成23年度先導的実践研究助成」(「『つくって伝える』学びの質的向上を目指したルーブリック連動型Web教材の開発」)、同平成24年度「『集めてまとめる』情報活用を支援するデジタル教材と授業モデルの開発」研究代表者。

文部科学省「情報活用能力調査に関する協力者会議」委員、「学びのイノベーション事業指導方法等に関する検討会」委員、「国内のICT教育活用好事例の収集・普及・促進に関する調査研究」企画委員。

ネットワーク社会と呼ばれる現代の中で、教育にもネットワーク構造が取り入れられ今後どのように教育現場が変わっていくかという研究関心を持っている。具体的には小学校~高校のさまざまな学校現場にかかわりながら、情報教育、教育の情報化、学校間交流学習などを切り口に研究を展開している。

主な著書に『デジタル社会の学びのかたち: 教育とテクノロジの再考』(北大路書房)や
『授業設計マニュアル〜教師のためのインストラクショナル・デザイン』(北大路書房)、『学校間交流学習をはじめよう』(日本文教出版)などがある。
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上記は順に先生の著書のアマゾンサイトのリンクになります。

〈HP〉イナガキタダシのほーむぺーじ

URL: http://www.ina-lab.net/

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