がんについてもっと知ろう! 豊島区「がんに関する教育」授業例

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目次

1 はじめに

本記事は、豊島区立文成小学校にて行われた「がんに関する教育」の授業の様子を、指導案や当日の写真を基に編集したものです。豊島区は、小中学校で行う「がんに関する教育」を積極的に取り入れています。

授業対象:小学校6年生

単元名:保健 病気の予防「地域の保健活動・がんについてもっと知ろう」

ねらい
□【関心・意欲・態度】豊島区(地域)の人々の健康を守るために行われている活動やがんという病気に関心をもち、進んで学習に取り組もうとする。
□【知識・理解】がんについて知り、がんの予防には正しい生活習慣が関係していることが分かり、子どもの頃からの生活習慣が重要であることを理解する。
□【思考・判断】生涯にわたり健康な生活を送ることができるようにするために、解決の方法を考えたり、判断したりしている。

単元構成内本授業位置づけ:8時間中8時限目授業

評価規準:Zipファイル参照

授業前状態:病気の予防について(1~7時間)学習を進めてきている

想定した問題と配慮

□小児がんへの配慮

□家族が、がん患者または、がんによって亡くなっている子どもへの配慮

□生活習慣とがんとの関連性への配慮

□がん検診を受けても見つからないがんもあることへの配慮

□正しい情報、最新の情報の収集と活用

授業前配慮:保護者へ授業内容の事前連絡

2 目次

授業内容
 1.本授業の学習内容についての確認
 2.がんについての正しい知識について、理解を深める
 3.がん予防の方法について考える
 4.本授業の学習内容まとめ

授業後

授業者プロフィール

先生インタビュー

編集後記

関連資料

3 授業内容  ※( )内目安時間

1.本授業の学習内容についての確認(約5分)

がん検診のポスターを、キャッチコピーの一部を隠した状態で提示し、「このポスターは何を呼びかけているのか」を児童に当ててもらいます。

「がん検診」という言葉が児童の発言から出てこなかったとしても、地域の保健所に貼ってあったことなどを伝え、本授業のテーマである「がん」についての関心度を測りながら、興味を引き出します。

次にがんは日本人の2人に1人がなる身近な病気である、日本人の死亡原因1位の病気であることを再確認し、児童にがんに対する関心を持ってもらいます。(たくさんある病気の中で、あえてがんをとりあげてこれから学習していく意味づけをします)ここを丁寧に行うことで、なんとなくがんについては知っていたが、自分には関係ないと思っていたことについて、学習意欲がわくのではないかと考えています。確認が済んだら、がんについての正しい知識とその予防法、豊島区におけるがん検診と予防ワクチン接種について学習していきます。本授業では豊島区が先導し、国立がん研究センターの研究員による指導のもと、区内小中学校の体育部、学校保健部の先生方が制作したがんについての教育資料をテレビで見ながら進めていくことで、児童に分かりやすく授業を進めています。

留意:なぜがんに焦点をあてて学習するのか伝える資料がないなど

反応例:自分のこととして捉えられず児童の理解に時間がかかる

対応例:身近にあるものやEDUPEDIA配布のイメージ(本ページ下部参照)を活用する。

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2.がんについての正しい知識について、理解を深める(約5分)

事前アンケートの結果からクラスの認識状況を共有し、児童がどのくらいがんを知っていて、どんなことを知りたいのかを確認することから始めていきます。アンケート結果をプリントにまとめて配布する他に、児童数人に発言してもらうことも効果的です。

次に、スライド資料を使って、「がんとはどんな病気であるか」を説明します。画像などを用意し、わかりやすくテンポ良く進めていきます。本授業では細胞のイラスト付きうちわを活用し、通常の細胞を緑のうちわ・がん細胞を紫のうちわで、そして、がん細胞を修理する細胞をオレンジのうちわで表し、がんのでき方を児童に伝えました。

スライドの内容

  • お年寄りだけの病気ではないこと
  • 健康な人にもがんができること
  • がん細胞単体が【病気のがん】ではないこと

留意:児童への事前アンケートにて、がんへの認識レベルを確認しておくこと。

反応例:「がんは治らないのか?」「治し方は?」という質問が多くあった

対応例:質問への回答も含め、知識・理解への時間を多く割いた。

3.がん予防のためにできることを考える(約20分)

小児がんとの区別のため、大人のがん予防法であることを再確認してもらいます。その前提の上で、用意したワークシートに既習事項を踏まえがんの予防方法を書き出し、数人に発表してもらいます。この時、担任は児童の発言の板書や発表者への支援を行うとよりスムーズに進行できる上、発表する児童が自信を持って発表することができます。また、児童の生活における経験などを引き出すよう問いかけながら、一緒に考え、補足しつつ、児童自身の経験からワークシートを書けるよう心がけます。

この段階では、予防法についてクイズ形式で児童とやり取りをしながら、理解を深めます。バランスの良い食事について取り上げた際には、身近にあるカップラーメンなどを例に上げます。その際に「カロリーオフと表記されている商品でも塩分は高い」などの発見があると盛り上がります。クイズ内では下記抑えておきたい点を含めています。

がんを予防するための7つのポイント

□たばこは吸わない

□バランスの取れた食事

□適度な運動

□飲酒は適量

□太りすぎない、やせすぎない

□がん検診の受診

□予防ワクチンの接種

また、豊島区の豊島健康診査センターの役割、特にがん検診・予防ワクチンの接種について触れます。豊島区内在住の中学校1年生の女子に対して、無償の子宮頸がん予防ワクチン接種があることを知らせ、身近にがんを予防する活動があることを理解させます。ここでは、身体に症状が出る前にこうした定期的な検診を受診することで早期発見・早期治療に役立つことをしっかり抑えます。

4.本授業の学習内容まとめ(約10分)

授業で取り上げたがんを予防するための7つのポイントから「これからどのようなことに気をつけて生活していくか」児童によく考えてもらいます。

次に、親子で取り組むがん予防家庭学習につなげるために、家族に伝えたいことを手紙形式にまとめ、発表させます。この時、担任は児童のまとめ・発表者への支援を行うと、よりスムーズかつ、発表する児童が自信を持って発表することができます。

授業最後は、本授業で学習したことを振り返り、これからどのようなことに気をつけて生活していくか、自分にできることは何か。そして、家族と健康に暮らせるようにするにはどのように日々の生活に向かい合えばいいのかを考えてもらえるようにします。ワークシートを家庭に持ち帰ってもらい、保護者より感想をもらうという形で学習を締め括りました。

4 授業後

その他:この授業を見学した豊島区教育委員会の担当者の方は、今後、本授業を2時間構成にする事の検討や、スライドに含まれる情報の更新などを適宜行っていくと仰っていました。
特筆事項:家族ががんの治療中、またはがんにより亡くなっている子どもへの心理的配慮が必要となります。

授業者プロフィール

北 久枝 先生 (豊島区立文成小学校 養護教諭)
木村 道人 先生(豊島区立文成小学校 6学年2組担任)

先生インタビュー

登場人物:北 久枝 先生(以下:K)・質問者(以下:Q)

Q:がんに関する教育はデリケートな問題ですが、特に配慮したことはありますか?

K:保護者のみなさまには事前に「がんについての教育をします」という旨のお手紙を出しました。その授業で何をやるか知っていただいた上で、「何か配慮すべき事などがありましたら個別にお話ください」と伝え、指導に反映できるようにしました。

Q:がんについての教育に関して、児童へ伝えたい思いはありましたか?

K:がんについて学ぶことで、やみくもに怖がらす、早期発見・早期治療で必ずしも治らない病気ではないということを理解して欲しい。また、将来大人になった自分を想像しながら、今の生活習慣を振り返り、自分ができることを考え、行動できる子になって欲しいと思いました。さらに今回は、本校の児童らががんについてどんな事を思っていて、どんな事を知りたいのかを把握して、そこから児童らに応えられるように区のスライドをアレンジするなどして、わかりやすい指導に努めました。

編集後記

今回のがんに関する教育は、家庭に切り込むとてもナイーブな授業だと思いました。この授業を検討したり、進めるためには、事前事後の繊細な配慮が必要で、児童たちの不安に気を配らなければならない難しい授業だと感じました。

当授業案に先述した配慮以外では、授業後に児童へのヒアリング・手紙(まとめ感想文)から各児童の不安や疑問を掬い出し、配慮することが必要だと感じ、授業を取り入れる先生の負担が気にかかりますが、EDUPEDIAや各団体が資料を配布することでそれも解消されるのではないでしょうか。
この授業の実施にあたっては、豊島区教育委員会から資料が配布されていました。こういった自治体の後押しは新しい試みにはなくてはならず、豊島区は【がんに関する教育授業】資料をご要望され、趣旨を理解頂いた方には著作権フリーで公開するとしています。編集可能なパワーポイントスライドがないのは残念ですが、同じデータがPDFになっていましたので、下記関連資料にまとめました。

EDUPEDIAでも授業案に付帯したイラストやアニメーション・スライドの配付を少しずつ提供していきたいと感じさせられた今回の記事編集でした。閲覧ありがとうございました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 寺島 和宏)

5 関連資料・リンク

外部リンク

豊島区がんに関する教育スライド.pdf >> http://www.city.toshima.lg.jp/dbps_data/_material_/localhost/010seisakukeiei/050koho/kishakaiken/201204-01.pdf

豊島区がんに関する教育授業について@豊島区 >>
http://www.youtube.com/watch?v=TBnuZhs-bVU

豊島区がん検診情報 >>
http://www.city.toshima.lg.jp/kenko/kenkoshinsa/9199/index.html

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