カーナビ教育からマップ教育へ(学級経営編)

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作成者: 伊藤邦人さん

「次の交差点を、右へ曲がってください。」

「5km以上、道なりです。」
 カーナビの話す通りに車を運転すれば、簡単に目的地に到着することができます。大変便利な時代になったものです。今北を向いているのか南を向いているのか、他に混雑していない道はないのか…自分で考える必要は何もありません。カーナビの指示に従っているだけでよいのです。
 
それに対し、マップ(地図)はそういうわけにはいきません。目的地を定めた後、どのルートで運転すれば最も早く到着することができるのか、途中であのお店に寄ってから目的地に到着するためにはどの道を選べばよいのか…など、自分であれこれと考えなければいけません。目的地は1つですが、そこまでの行き方は何通りもあります。

 
このことから、マップよりカーナビの方が、はるかに頭を使わず、楽であることがよくわかります。しかしながら、現代求められている人材は、自分から考え(思考力)、決め(判断力)、行動する(表現力)ことのできる「自立型人間」です。指示された通りにしか動けない「指示待ち人間」は、必要とされていません。学生時代までは、答えのある課題に取り組むことが多いわけですが、社会に出れば、答えのない課題に取り組む場面の方が多いのですから。

 
ところが、学校現場の中では、カーナビのような教育がたくさん見られます。
 
例えば、学校の廊下によくこんな張り紙を見かけます。
廊下を静かに歩きましょう
 
その貼り紙の内容を素直に受け入れ、静かに歩こうとする子がいるかもしれません。
書かれている内容を無視し、廊下を遊歩道のように走り回る子もいるでしょう。
もしかすると、当たり前の内容すぎて、その貼り紙を素通りする子もいるかもしれませんね。
いずれにせよ、子どもたちはただ指示を浴びるだけなので、自分で頭を使うことは全くありません。

では、この貼り紙を、次のように変えてみてはどうでしょう。
みんなが安全に過ごせるためには?
子どもたちは、さまざまなことを考えます。

  • 廊下を走ると危ないからやめよう。
  • 大声を出すと、他の友達に迷惑だから気をつけよう。
  • (廊下にはトイレがあるので)みんなが使うトイレだから、トイレを遊び場にして占領するのはよくないことだ。

子どもたちが頭を使う機会を作ることで、自ら考えようとする姿勢を身につけることができます。目的に至るまでの答えがたくさんあり、創造的な思考と言えます。

また、前者よりもはるかに、子どもたちは自分から進んで行動するようになります。それは、指示された通りに動くよりも、自分から考えて動く方が、大きな喜びを感じられるからです。自分が成長できるという喜びです。これは、先ほどのマップに通ずるところがあります。

ここで、2つの教育をまとめます。
==== カーナビ教育

  • 一方通行の誘導型である。
  • 即効性があり、便利ではある。
  • 受動的な「指示待ち人間」を育てる。

マップ教育

  • 多面的な創造型である。
  • 即効性はないが、思考力・判断力・表現力が身につく。
  • 主体的な「自立型人間」を育てる。

他にも、学校現場のカーナビ教育の事例をもとに、マップ教育について考えます。

【事例①】給食

カーナビ教育

「早く給食の準備をしなさい!」と教師が怒鳴る。
→子どもたちは動かされる。

マップ教育

「どうすれば、早く食べることができるかな?」と子どもたちに問う。
→「授業が終わって、すぐに気持ちを切り替えることが大切です。」
「給食の準備を全員ですると早くできると思います。」
 「配膳のおぼんを、教室の奥の席から置いていくとよいと思います。」
 などの意見が出され、子どもたちは主体的に動くようになる。

【事例②】宿泊体験学習

カーナビ教育

 着替え・お弁当・歯ブラシ…などの持ち物を、教師から提示する。

マップ教育

持ち物として必要なものを子どもたちに考えさせる。
 
「1泊2日だから、着替えは2日分用意しよう。」
 
「お弁当は捨てられるプラスチックの容器の方がいいな。」

【事例③】掃除

カーナビ教育

 
1班:ほうき担当  2班:水拭き担当  3班:黒板担当…

マップ教育

 
掃除当番を作らない。
子どもたちが掃除する必要がある場所を自分で考え、そこを徹底的に掃除する。

以上は、ほんの一例です。
もちろん、時間の関係があるので、全てが全てマップ教育を行うことは難しく、時にはカーナビ教育も必要となってきます。ただ、カーナビ教育ばかりに頼るのではなく、将来活躍できる「自立型人間」を育成するためにも、学校現場の中でマップ教育を大いに意識していくことが大切なのではないでしょうか。

講師プロフィール

 伊藤邦人(いとう くにと)
 学習塾勤務を経て、現在立命館小学校教諭。
 「クリエイティブ」を教育の柱とし、子どもを最大限伸ばす学級経営・授業づくりの研究を進めている。
共著に、
「文章題プリント」「図形プリント」(いずれも学研出版)
「教師になるには」(一ツ橋出版)などがある。

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