~若手教師に送る~4月・学級開きからの30日間 失敗しない学級経営のために(田中光夫先生)

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0.前提としていちばん大切なこと

教師は、学級の経営者でもあります。その経営者としていちばん大事にしなければならないことは、学校・学年としてのチームワークを常に意識することでしょう。私自身、5年目くらいまでは、ひたすら他の教師のことを考えずに、とりあえず自分の力をつけることが学校のためになると思っていました。

しかし、ここ数年はその考えが変わって、学年の教師と協力して行動したり、学校の経営方針を読み直して、それに合わせて学級経営していったりすることを意識するようになってきました。ほかにも、ここ最近意識していることとしては、明確なゴールのヴィジョンをしっかり持つこと、そして、教師としての哲学を持つこと、などが挙げられます。

1.学校・学年とのチームワーク

○徹底的な「報告・連絡・相談」を!

まずは、チームワークについてですが、これは徹底的な「報告・連絡・相談」を心掛けないと上手くいきません。教師の中には、自分の実践に自信が出てくると、自己流のやり方に走ってほかの教師と違う実践をやる人がいます。しかしこれでは、色々なところで軋轢が生まれたり、保護者の信頼を得られなかったりなどと、さまざまな場面で苦しんでしまうことになってしまいます。
 そのためにも、「こういうことをやりました」や、「こういうことをやろうと思うんです」ということを周囲の教師に必ず報告・連絡・相談するようにしてください。例えば学級通信を隣の教師に渡す、というのもいいですね。そうすることが>結果的に、自分の学級のレベルアップだけでなく、学年の児童や、学校全体のレベルアップにもつながると確信しています。

○分からなかったら、聞きましょう

分からないときは、周りの教師に聞くことが大切です。何か教えてくれるのではないか、と受け身で待っていても、忙しい教師は多いですし、なかなか伝えることができません。だからこそ、能動的にどんどん聞いてください。聞けば早いと思います。教師はよく、クラスで学びあいなどをやるとき、「ひとりでやっているよりも、友達と学んだ方が大きな学びになるよ!」などと言いますよね。ですが、その学びを教師自らがやらないのなら、その言葉は児童に伝わらないのでは、と思います。

2.明確なゴールのヴィジョン

○できるだけ早いスタートダッシュを!

「こんな学級集団に高めよう!」「ここまでできる子に育てよう!」ということを3月末までに考えられると、とても楽です。4月に入ってから新しい教師と組んで、そこからどんな学級・学年にしましょうかね、と考えるより、事前に自分の中で「こういうふうにしたいな」というものがある方が、話が進みやすいと思います。

そして、目的(ゴール)が決まったら、目標をたてます。ちなみに、目的と目標は混同されがちですが、

目的…ゴール

目標…ゴールまでの目に見える道しるべ
という違いがあります。

例えば、フルマラソンを走るにしても、ゴールがあそこにあると分かっているからこそ、辛くても走ることができますし、途中でペースを上げたり、ここで給水したりした方がいいなということがわかります。ゴールが分からなくて、42.195㎞走ったら笛を鳴らしますので、と言われたら、とてもしんどいですよね。あのあたりに坂があるから、などというのは事前に自分で下調べをしているから分かって走ることができる目標なのであって、このことは学級経営についても同じだと思います。

○教師の介入度と児童の自主性・自立度

4月の時点では、教師の介入度は非常に高いため、比して教師のやるべきことがたくさんあります。これは、年度当初は児童に多くのことを教えなければならないからです。例えば、靴並べや並び方、あいさつの仕方など、細かいところまでいろいろありますね。この時点で教師が子どもに任せてしまうと、学級はかなり荒れてしまうのではないかと思います。はじめは、児童の自主性や自立度は低くて良いのです。とはいえ、最終的には100%までいかなくとも、できる限り自主性・自立度を上げたいですよね。そのためには、教師の介入度を下げなければなりません。ただ、それについても一気に下げるのではなく、徐々に徐々に下げていけばよいと思います。そうすることで児童の自立度は少しずつ上がっていきます。

それでは、いちばん大事な4月にどんな準備をするのがよいのでしょうか。
4月には、自身のスタート地点を確認してください。この時期に、自分自身はどれくらい指導力があるのかということや、クラスの子にはどんな子がいるのかということをしっかりと把握することが大事です。これをしないと後々大変になります。
 
そのあと、「どんな子に育てたい」とか、「こういうところまで学級を高めたい」といった、学級のゴール(目的)を学年で話し合い、自分で考えます。これができれば、あとはそのゴールに従って目標を立てていくだけです。
 
学校の1年間で多くの行事(運動会、社会科見学、遠足、学芸会など)がありますが、そのそれぞれで、めあてを立てます。例えば運動会であれば、学校でたてられるめあてといえば、「身体能力を高める」などというものがあると思いますが、それらは実は、自分の学級や学年のゴールにもつながってくることが多いのです。ですから、行事の際には、学級のゴールを常に意識してめあてを作ることが必要です。授業に関しても同じで、4月から常に学級のゴールを意識した授業ができるとよいですね。
 
私は、学級のめあて(学級のゴール)を6月頃までに、およそ2か月かけてつくります。そのなかで合意形成をして、子どもたちと私の思いをふれ合わせながら、「3月の学期末のお別れの日までに、1年間でこういうクラスになれるように頑張ろうね」ということをみんなで合意しておくと、何かトラブルがあってもすぐここに戻ってこられるのです。例えば、「先生に言われなくても行動するクラスになろう」というめあてを立てたのに、子どもたちがそれを達成できていないときは、「今のクラスは、先生がいないとできていないじゃないか!」といったように、めあてに戻ることができます。

つまり、自分のたてた学級のゴールと、子どもたちから出てきた言葉を使って、最終的なめあてを作る。これはとても大事なことなのです。

3.教師としての哲学

教師としての哲学は非常に重要ですが、残念ながらすぐに身につくものとは言えません。ですので、先輩と話したり、本を読んだり、あるいはサークルやセミナーに参加したりするなかで、一例として、5年目までに自分の哲学を形成しよう、といったような思いで学び続けてもらえればと思います。

編集後記

田中先生のお話は、おそらく誰もが何となく頭の片隅に置いているものではありながらも、実際にはなかなか、意識して行動にまで移すことができていない内容なのではないかと思います。児童の自立度を高めるための長期的な試みの中で、いかに3月から4月にかけての時期が重要であるのかということを再確認させられました。また、学級のめあてをたてる際、独りよがりでなく、きちんと子どもたちの言葉を用いながら考えることはもちろんですが、それを長期間かけて考えるということは非常に興味深いものでもありました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 樽屋虹太)

講師プロフィール

田中 光夫 (たなか・みつお)

学習サークル「子どものための学級会」代表 。東京青年塾所属。ミニネタ、パフォーマンス、お笑いなど、柔軟な発想で子供たちをひきつける実践が、テレビでも何度も取り上げられている。最近では、「ワークショップ型授業」「協同学習」など子供主体の授業を実践し、各方面で成果を発表している。

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