『オール1の落ちこぼれ、教師になる』で理想の実現(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://p.tl/a-TK-

2 概要

(引用 http://sakamoto.cside.com/sakamoto2006/all1.htm)

【対象】

中学生(1年生くらい)

【ねらい】

宮本さんの言う「学ぶことの意味」や生き方について話し合うことを通して、目標に向かって努力することの大切さを再認識し、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓いていこうとする心情を高める

【学習内容】

(1)宮本延春さんの生き方のすばらしさ

  • アインシュタイン博士のビデオを見て物理学を勉強しようと決意したこと
  • 定時制高校で真剣に勉強したこと

(2)自分を支えてくれる周りの人への感謝

  • 私立豊川高等学校の先生方への気持ち
  • 妻、純子さんへの気持ち

(3)学ぶことの意味

  • 目標をもつことの大切さ
  • 目標を実現するためにひたむきに努力することのよさ

【資料】

『オール1の落ちこぼれ、教師になる』(宮本延春 角川書店)

(1)【はじめにP.7からP.16最終行】

小学校のときにいじめで学校嫌いになる。中学校1年生、「オール1」の成績表をもらう。中学校3年生、漢字は名前しか書けず、英語の単語はBookだけしか知らず、九九は2の段までしか言えない〈落ちこぼれ〉になる。・・・23歳アインシュタイン博士のビデオを見て感動。『小学3年生のドリル』を買って猛勉強・・・27歳国立名古屋大学に合格。37歳私立豊川高等学校教諭になる。
(「はじめに」の部分は、本全体の要約になっている。したがって、特に詳しく知りたい場合は、対応する章・節を読めばよい。)

(2)【P.160,3行からP.165まで】

「これが、『学ぶ意味』を見いだせないでいる生徒たちに伝える私からのメッセージです。つまり、目標を持ち努力することに意味があるのであり、その過程に「学ぶ」ことが付随してくるのです。(後略)」

3 学習指導案(90分授業)

①資料(1)の場面を聞いて、話し合う(60分)

● 発問1:「P.12『私は天涯孤独の身となり、生活のすべてを自分一人でまかなっていく必要に迫られました。世の中で誰も助けてくれない“落ちこぼれ”になってしまいました。』までを読んで感じたこと、考えたことを 2人組、グループ、そして全体で発表しましょう。」(20分)

  1. 勉強ができなかったことに対する感想 
  2. 学校でいじめを受けていたことへの感想 
  3. 就職してからの“受けたいじめ”についての感想 
  4. 16歳で母を、18歳で父を失ったことに対する感想 

の4つに分け、それぞれ、①悲しさの共感②憤り③自分との対比の観点から発表させる。

※必要に応じて、それぞれの場面をより詳しくした本文の部分を教師が適宜提示し、一層状況を実感させながら話を進める。

※ 発言内容は、時間があれば、それぞれをマトリックス状に板書するが、なければ、教師の受け止めや反復で大まかな類別を図る。

※「あなただったらどんな気持ちになりますか」など、自分と対比させながら、実感をもって捉えられるようにする。

● 発問2:「P.16『ちょっとした“キッカケ”があれば誰でもがんばれる!これは私がこれから伝えたいことです。』までを読んで感じたこと、考えたことを全体で話し合いましょう。」(20分)

  1. 23歳、アインシュタインのビデオを見たとき(「私の中で何かが劇的に変わった。それは奇蹟としか言いようがない出来事でした。」)に関する感想 
  2. 「小学3年のドリル」を購入してきて独学で勉強を始めたことに関する感想
  3. 24歳で私立豊川高校の定時制に入学し、超難関の国立名古屋大学を目指して勉強をしたことに関する感想
  4. 合格してさらに9年間勉強し、母校豊川高校の教師になったことに関する感想

の4つに分けて、話し合わせる

※発問1の時と同じように、子どもたちの発言を共感的に受け止めながら、関係する章や節を適宜紹介する。

※「第三章 アインシュタインと彼女」の部分は、ゆっくり読み聞かせると効果が高い(15分程度必要)。特に「23歳にして不思議な目覚めでした」と言わせしめた「アインシュタインの相対性理論」の説明の部分だけは、本時の学習内容にかかわるので、しっかり読み聞かせる。

※定時制に入ってからの猛勉強の下りはかなり詳しく書いてあるが、受験勉強そのものを経験していない子どもたちには、そのすごさが伝わらない。そこで、担任が適宜補説しながら伝える。

● 発問3:「主人公が、名古屋大学に合格したとき、恩師や彼女に伝えたかったことは何だと思いますか」(20分)

※この部分は、「はじめに」にあまり書かれていないので、P.136-P.147を読み聞かせた後に、話し合うことになる。

※学習内容(2)に関する発問である。宮本さんの努力もさることながら、①それを支えてくれた方々がたくさんいらっしゃったこと ②宮本さんはそれらの方々の支えがあるから努力できていることに気付かせるとともに、感謝の気持ちを持っていたこと ③加えて、その感謝の気持ちの表し方は「合格すること」だとして、一層真剣に勉強(ここでは、受験勉強)をしたこと を出し合い、②はとりわけ重要な事柄であることに気付かせる。

②資料(2)の場面を聞いて、話し合う(20分)

●発問4:「これだけの努力をすることができた宮本さんは、『学ぶことの意味』をどう考えていると思いますか。」

※資料(2)を読む前に、自由に全員で話し合う。

※アインシュタインとの出会いで生き方が変わったのは、本人も、「奇蹟としか言いようがない」と言っているように、そのビデオを見ればだれでも同じような変化が現れるわけではない。しかし、宮本さんの言う「学ぶことの意味」を捉えることはだれでもできる。

●発問5:「宮本さんが言う『学ぶことの意味』について話し合いましょう。」

※宮本さんの書かれている記述に概ね即し、「目標を持ち努力することに意味がある。その過程に『学ぶ』ことが付随してくる」とまとめる。

※この辺りの記述を、ゆっくり時間をかけて、読み聞かせる。

③感想を書く(10分)

最後は、自由に「授業の感想を書く」ことで学習のまとめとする。

※感想を学級通信などに載せて、保護者に配付する中で、子ども同士の意見の交流を図る。また、学校図書館に数冊購入してもらい、朝の読書などで全員が読むようにする。加えて、保護者の方々にも読んでいただき、その感想を再度、学級通信などに載せる。

※ これらを通して、「目標をもって努力すること、自分の理想を実現することのよさ、すばらしさ」について教師、保護者、子どもたちの理解を一層確かにする。

4 編集後記

宮本延春さんのどん底から難関大学に合格するまでを、自分の体験のように捉えなおし、感情を考えていく中で「目標に向かって努力することの大切さを再認識し、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓いていこうとする心情を高める」ことができるのではないかと思う。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 宮崎雅人)

5 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com

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