防災教育への動機付け(日本女子大学 石川孝重研究室)

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目次

1.1 はじめに

本記事は、建物の総合安全性と快適な居住空間をテーマに研究をしている日本女子大学石川孝重研究室によって執筆されました。「総合的な学習の時間」で行う防災教育として、特に小学校高学年生を対象とした実践を紹介しています。

下記のURLから基の実践をDLし、教材として使用することができます。
http://p.tl/0fdM

1.2 学習のねらい

地震とは何かを知り、防災の大切さを学ぶこと。

1.3 児童の思考

地震とは建物が壊れたり、人が死んでしまったりして怖いものなんだ。どうやって地震に備えていけばいいのかを知りたい。

1.4 学習のながれ(1〜2/16時間)

1.5 学習内容の詳細

導入

本日の学習について知る(10分)



写真を見ながら、地震が起きるとどのようになってしまうのか、ビルの1階がつぶれていることや、ビルの中には人が住んでいることなど確認しながらイメージさせる。

また阪神・淡路大震災にも触れながら地震の恐ろしさを感じさせる。

♦阪神・淡路大震災

1995 年(平成7年)1月 17 日午前5時 46 分に淡路島北部(深さ 16km)を震源として発生。マグニチュードは 7.3、地震の揺れは阪神間および、淡路島の一部で震度7を観測した。震度7が適応されたのは、この地震が初めてである。地震の揺れは、東京、新潟、福岡、鹿児島などにまで及んだ。死者は 6,434人、負傷者は 43,792 人、全壊及び半壊頭数は 249,180 棟である。神戸市内だけで、死者は 4,571 人、負傷者は 14,678 人発生した。主な 死亡原因は家屋倒壊による圧迫、窒息死、負傷の主な原因も家屋倒壊や転倒した家具によるはさまれ、室内の落下物などがあげられる。ライフラインの被害として、地震により神戸市内全域 65 万戸に断水と停電が生じ、ガス供給も停止された。

展開

学校探検(55分)

○学校探検の内容説明をする。
 

ワークブックの写真を参考にこれらの防災設備が学校のどこに、どれだけあるのかを探索し、表に書き込ませる。

また、その際に用途も考えることを伝える。班ごとに分かれ、1班は2階を探すなどそれぞれ探す範囲を決める。

※見つけたものを記入するときは、何に使うのかを考えることに重点を置く。児童が自分 自身で防災設備の必要性を感じることが重要である。
※学校の間取り図に、それぞれ防災設備ごとに色分けしたシールを貼るような工夫をする と、視覚的に防災設備がたくさんあることや配置場所が明確になり、より効果的である。

○各防災設備の用途の発表と解説
児童から見つけた防災設備の発表を行った後、間違っているものなどについては適宜、解説を行う。

  • 消火栓・・・・消火活動に必要とされる水を供給するための施設

(ふたを開け、バルブにホースをつないで放水する。)
* 消火器・・・・火災を消火するための設備
* 非常口・・・・非常事態が発生した場合に備えて設置された出口
* 火災報知機・・火災を通報するための設備
* 防火扉・・・・火災発生時に扉を閉めることで、火災の延焼や、煙の蔓延を防ぐ。

※「もし防災設備がなかったら・・」などの問いかけをしながら、これらの設備が火災などの災害に備えていることを学ばせる。そこから防災への認識を持たせる。

大地震の可能性について学ぶ(20分)

○大地震発生の可能性

上部イラストを見ながら、オレンジ色(M(マグニチュード)8クラス)とゴールド色(M7クラス)が、実は関東では頻発していることを見せる。ワークブックの表紙写真などを見せ、建物が崩れる程の大地震であることを認識させる。今までの大地震の間隔に比べ、今は前回の丹沢地震から長い年月がたっているので、いつ起きてもおかしくないことを教える。

♦マグニチュードと震度の違い

  • マグニチュード…地震が発するエネルギーの大きさを表した指標値。マグニチュードが1 増えるとエネルギーはおよそ32 倍になる。
  • 震度…地震による地面の揺れ(地震動)の強さの程度をあらわす量。

○地震発生のメカニズム

児童に対しては、足元の地面が海洋性プレートに押さえ込まれて、我慢しきれなくなって今にも破裂してしまいそうなことを、イラストの大陸性プレート入っているところを指摘しながら教える。細かく地震発生の仕組みには2種類あることを説明しなくてもよい。地震発生のメカニズムにも触れながら、約200 年の間隔で発生する関東大震災の合間に複数の地震が発生することから、今後も発生する可能性が大きいことを教える。それを防災の重要性へとつなげる。

♦地震発生のメカニズム

地震とは、海洋性プレートが大陸性プレートに沈み込み、そこで蓄積されたエネルギーの反動でひずみが生じ、発生するものである。地震発生の仕組みは以下の2つに大別できる。

「海溝型」

海洋性プレートが大陸性プレートに沈み込み、その境界で蓄積されたエネルギーの反動で大陸性プレートがばねのように跳ね返って起きる地震のこと。しかし実際は2つの地盤の面がずれて起こるもので、ずれた面を断層と呼ぶ。マグニチュード8クラスの大きいものはおよそ100~200年周期で発生し、海溝型地震とも呼ばれる。このタイプの地震は2003年十勝沖地震、近い将来の発生が指摘されている東海地震が例として挙げられる。

「内陸(プレート内)型」

プレートが沈み込む力により、そのエネルギーに耐えかねてあちこちでひび割れ、押された力を上下に逃がす形で山が高く、谷が深くなるように岩盤が動くことによって起きる地震。その際にひび割れた部分を「断層」と言い、200万年以内に活動した(ずれた)ことがある断層を「活断層」と呼び、繰り返して地震を起こす可能性が高いとされている。内陸の活断層は都市の直下や周辺にあることも少なくない。都市の直下で発生すると甚大な被害をもたらすことがあるが、大きな揺れに見舞われる範囲はプレート境界でおこる地震と比べると狭い領域に限られる。直下型地震とも言われる。このタイプの地震は1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)、2004年新潟県中部地震などがあげられる。

○関東で大地震が発生する可能性

関東地方において約30年の間に、70%の確率でマグニチュード7級の直下型の大地震が発生すると予想されている。

関東で発生している地震は主に直下型地震で、1923年関東大震災のようなマグニチュード8クラスの地震は約200年ごと発生していて、その期間内に1894年東京地震のようなマグニチュード7クラスの地震が複数、繰り返し発生している。

つまり、前回の東京地震が発生して以降大きな地震が発生していない現在では、活断層にエネルギーがたまっていて、いつ再び断層が動いてもおかしくない状況にある。

2005 年に発表された中央防災会議の報告によると、被害が最も大きい場合、死者13,000人、負傷者170,000 人、帰宅困難者6,500,000 人、全壊の建物850,000 棟、避難者総数700万人、経済への被害112兆円と、今の日本にとてつもない被害を及ぼすと想定されている。

まとめ

本学習のまとめ(5分)

これからいつ起こるかわからない地震に備えて、防災について学んでいくことを伝える。

1.6 学習指導案

1.7 ワークブック

児童に配布し、授業の展開を補足するためにお使いください。
この実践はP1〜5に対応しています。
▽ダウンロードはこちらから
http://p.tl/ag-v

1.8 編集後記

防災教育をすすめるうえで、はじめの動機付けは大切な要素です。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験と地震のメカニズムを合わせて伝えることで、ただ恐がらせるのではなく、防災を学べば命を守れるということを的確に伝えましょう。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)

1.9 協力団体紹介

日本女子大学家政学部住居学科 石川孝重研究室
建築物の構造安全や防災、住教育を専門とする石川孝重教授の下、建物の総合安全性と快適な居住空間の確立をテーマに、建築物の設計や性能、安全性、防災のほか、建築法規、建築物の維持管理まで、多岐にわたる研究を行っている。
また、研究成果の情報発信や防災教育の普及にも取り組んでいる。
●今回ご紹介した内容はこちらをご参照ください
http://p.tl/0fdM
●石川孝重研究室に関する情報はこちらをご覧ください
http://p.tl/xLH2

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