四角形クイズで平行・垂直について知ろう(間嶋哲先生)

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1 概要

この実践記事では、四角形を仲間分けするクイズを通して、並行や垂直の概念について学びます。指導計画のうち、とくに1次に焦点を当てて紹介します。
出典→ http://p.tl/VgNQ

2 単元名

四角形クイズの秘密を探ろう

3 単元の目標

  • 四角形クイズの秘密を探る活動を通して,直線の垂直・平行の関係について,観察や操作・作図を通して気付き,理解を深めていくことができる。
  • 台形,平行四辺形,ひし形の特徴に気付き,作図することができる。

4 指導計画(全11時間)

1次 四角形仲間分けクイズをしよう(3時間)
2次 みんなで四角形クイズを作ろう

  • 台形を作ろう(2時間)
  • 平行四辺形を作ろう(1時間)
  • ひし形を作ろう(1時間)

3次 対角線を調べよう(1時間)
4次 敷き詰めパズルを作ろう(1時間)
5次 まとめ(2時間)

5 1次のねらい

四角形仲間分けクイズで,それぞれの図形が,平行な辺のある仲間かそうではない仲間か,どちらの仲間に入るのか考えることを通して,これまで漠然とイメージしていた平行の概念を,明確な言葉や図・絵で表現していくことができる。

6 研究主題について

ループ理論で単元構成を工夫する

~四角形クイズから平行・垂直へ~

本単元の教材の流れは,「平行・垂直」の学習を終えてから「台形・平行四辺形・ひし形」の学習へと進むことになっている。これは,全ての教科書に共通した流れである。このような流れは,教材の体系から考えれば当然なのであろう。

しかし,子どもの立場に立って考えた時,それは本当に自然な流れなのであろうか?

この流れでは,「平行・垂直」の学習は突然行われることになる。「台形・平行四辺形」等を学習する時に必要な「平行」の知識をあらかじめ身につけさせるために,仕方なく(?)位置付けられている学習である。子どもにとっては,“いま学習する必要性”は感じられない。

聖徳大学短期大学部の手島勝朗教授は,著書『知的葛藤を生み出す算数授業』(明治図書)の中で,次のように述べている。

 教材を位置づけていく体系通りに授業を展開して,子どもの内面にくい込む授業が組織できるであろうか。

この大胆な問いかけに,あえて答えるならば「否」である。(中略)

このループした授業展開。ここに,私が常日頃,「教材の体系を切り崩し,子どもの側からの再構成を図れ」という子どもサイドから見た新しい単元構成論の1つの典型がある。(中略)

「四角形」に先だって,独立して「垂直と平行」をとりあげなければならないという決定性はない。垂直と平行は,もともと直線と直線の位置関係であり,そうした関係概念をストレートに示したのでは,まず「あたたかみ」がないではないか。

上記の手島氏のループ理論に基づき,本単元の授業構想を次のようにしてみた。

四角形クイズという場を設定する。平行関係にある辺が存在するAグループ(正方形,長方形)と,その関係が存在しないBグループの枠を設定する。教師が提示した図形がどちらのグループに入るかを考えるクイズである。どちらの仲間に入るのかを決定するためには,向かい合う辺の平行関係に着目せざるをえない状況を作る。子どもたちは,提示された図形がどちらの仲間に入るのかを考えることを通して,平行関係に目を向け,その存在を証明していこうとするのである。

台形・平行四辺形の学習を通して,平行に着目する。この平行の目で,もう一度台形を見つめなおす。ここに手島氏の提唱するループによる単元構成が完成する。

「問い」を生み出す教材・課題提示の工夫

~似て非なる図形提示で「問い」を引き出す~

授業開始と同時に,黒板にA,Bという枠を大きく書く。子どもはこれだけで,何が始まるのだろうかと期待を膨らませて授業を迎える。

Aの枠には,正方形,長方形,台形を,Bの枠には,平行関係のない四角形(直角のあるものとないもの)を貼り付ける。この四角形を提示していく過程で,子どもたちには,Aの枠に入る図形には平行関係の辺が存在することが見えてくるであろう。この段階では,Aの枠内の図形に平行関係が存在することを,子どもなりの言葉で十分に表現させたい。ここでの気付きを,その後の追求活動で生かしていきたい。

子どもの意識が上記のように高まったところで,台形に限りなく近い四角形を提示する。上下の向かい合う辺が,平行か否かが見ただけではわからない図形である。この図形を見た子どもたちは,どちらの仲間に入れたらいいのかわからずに悩むであろう。ここに,この図形をめぐる「問い」が発生する。

「この図形は,Aの仲間かな?Bの仲間かな?」という「問い」の根底にあるものは,「この図形の上と下の向かい合う辺は平行かな,平行ではないのかな?」ということである。このように「問い」を焦点付けた上で,その後の追求活動へと導く。

「問い」を表現させる手だての工夫

先ほどの,台形に限りなく近い四角形を提示した瞬間,10人ほどの子どもたちは,「あれ」「辺はどうなっているの」などと,自分の思いを素直に言葉で表現することができるであろう。また,辺の関係についてジェスチャーで示すことができる子どももいるだろう。

しかし,自分の思いを言葉やジェスチャーではうまく表現できない子どもも一定数いると考えられる。うまく表現できないということは,これらの子どもが考えていることを,教師が十分に見取ることができないことにもつながる。

そこで,この図形を提示した瞬間に思ったことを,ノートに記述させる。このことで,言葉やジェスチャーでの表現が苦手な子どもの思いを見取ることができると考えた。このノートを介しての見取りを,その後の「問い」の発表の場に生かしていきたい。

また,上下の向かい合う辺が平行か否かを調べる活動の際にも,調べ方に「問い」を感じる子どももいるであろう。その時は,その思いもノートに記述させ,その後の追求活動の中で取り上げ生かしていきたい。

しかし,単に「ノートに思ったことを書きなさい」と指示しても,自分の思いをうまく表現できる子は少ない。それは,自分の思いを文章で表現する技術が身についていないからである。ノートの書き方についても教師から指示するとよいだろう。

7 編集後記

平行や垂直は「なんとなく知っている」子どもが多いので、問いの引き出し方が重要になります。クイズを通して楽しく学んでいけるように工夫されている実践です。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)

<講師プロフィール>

間嶋 哲(Mazima Akira)
1965年、新潟県に生まれる。新潟大学教育学部を卒業。
新潟県内の小学校で活躍後、文部科学省での1年間の研修を経て、現在、新潟市教育委員会学校支援指導主事。算数授業ICT研究会理事。全国算数授業研究会総務幹事

趣味は、海外旅行・外国語会話・スキー・ギター(フォークとクラシック)・読書・園芸・熱帯魚飼育など、多岐に渡る。

大学の卒業旅行を機に、旅行・外国語にはまり、旅行記を一冊出版したほどのエピソードを持つ。
●HP
間嶋哲のHPへようこそ… http://bit.ly/LzzKmJ

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