ワードカウンターを利用した指導方法(実践編)

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目次

はじめに(小学生高学年から中学生に使える方法です)

具体的には、「ワードカウンター」を中学生の指導に取り入れている広島県福山市立福山中・高等学校教諭の上山晋平先生の指導法を紹介します。

本記事では以下の三点を挙げます。
1. 上山先生の指導法(指導案を通して)
2. 生徒の感想
3. ワンポイントアドバイス

小学生には使えないと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、小学生に対し実践している方もいます。今回掲載するのは中学生の指導案ですが、上山先生の指導法を通して小学生にも使える方法を見出せるでしょう。

上山先生の指導法

上山先生が中学2年生に指導する際に作られた指導案を紹介します。
(途中、指導案の画像が途切れてしまっています。見にくい箇所等ございましたら、添付してあります資料を見て頂けたら幸いです。申し訳ございません。)

添付ファイル

英語科学習指導案

1 学 年

中学校 第2学年

2 単 元

PROGRESS IN ENGLISH BOOK 2  Lesson 4  副詞・数詞

3 目 標

英文を読んで,英語で要約することができる。(理解)

4 観点別評価規準(本時)

  • 学んだ表現を用いて身近な話題について積極的に述べようとしている。(関心・意欲・態度)
  • 要点や大意を把握し,英語で要約を書くことができる。(理解)

5 指導観

指導に当たっては, 次の点を工夫する。

  1. 帯学習として,DebateやReportingに役立つ表現の口頭練習を毎時間行い,基礎力定着を図る。
  2. ペアでチャットを行い,相手の言ったことをまとめてreportし,最後に自分の意見を書かせる。4技能を関連付けた指導を行い,習得した基本文を「活用」する場面をつくる。
  3. 英文を読み,「書かれた情報について大切な部分を正しく読み取り」,それを「要約」し,英語でまとめるとともに,ペアでレポートしあう機会をつくる。

6 学習展開

上山先生は授業の本題に入る前に、スピーキングとリスニングの向上を兼ねてワードカウンターを使っています。いわゆる帯学習と呼ばれる部分に取り入れているのです。一年間すべての授業で取り入れているわけではなく、生徒の状態を見ながら、必要だと感じる学期に帯学習として毎回取り入れています。

この指導案ではテーマを身近なものにしていますが、上山先生は教科書の文章説明をする前段階として、教科書に出てくる内容をテーマにするときもあるそうです。例えば、高校の授業において「“Good Ol’ Charlie Brown” (スヌーピー)」を扱った際には、テーマを「スヌーピーの登場人物」として生徒に話させていました。

ワードカウンターを利用する際のポイント

  1. 話し相手はアイコンタクトを、聞き手はリアクションしながら聞くことを指導する。リアクション例:うなずく、OK、I see等
  2. 相手の話を注意して聞かせるには、聞いた後に相手の話を「3文で要約」や「2文要約と1文質問」などをさせるとよい。
  3. ワードカウンターは、家庭学習とリンクさせれば、さらに語彙数が増える。
  4. 実技テストで語数の目標を設定すると、練習にさらに熱が入る。
  5. 話した英文を書かせて、教師がチェックする指導を続けると、正確性もアップする。

生徒の感想

では生徒はワードカウンターに対してどのような感想を抱いているのでしょうか。上山先生のアンケートから引用させて頂きます。

前向きな感想

  • とっさに物事を英語で話せるようになった。
  • 難しいが,必ず力になると思う。
  • 英語で話す力がついたと思う。
  • だいぶスラスラ言えるようになってきた。今後は毎回50を越えられるようにしたい。
  • 頭ですぐ考えて言葉にするのは難しかったけれど,やるたびにワード数がふえていってよかった。
  • 英語で話そうと思うと,内容がとんでしまって分からなくなるけど,少しずつ言えてきているのかなぁと思う。
  • 話がなくてもとりあえず何か話す精神が育った。
  • 自分の好きなことについてしゃべるのが一番話しやすいし,内容もより濃いものにできた。
  • コミュニケーション力がついてくると思う。
  • 文章力がついた(気がする)。

多くの前向きな感想が挙げられていました。やはり特徴的なのが「話すのが楽しい」という感想でしょう。これは生徒のモチベーションが上がっていることを明確に表しています。

もちろん前向きな感想ばかりではありません。以下のような感想もあります。

後ろ向きな感想

  • 「昨日のこと」とか言われても,何もしてなかったら話すことができない。
  • 話し続けることが難しかった。
  • 自分で文を作って話すのが難しかった。また,1分間続けるのが大変だった。
  • その場ですぐに言うのは難しい。
  • とても難しかった。単語も出てこなく,主語動詞をそろえて文章を作るのが大変だった。
  • (テーマを)1回1回変えずに,もうちょっと続けて同じテーマでしたかった。
  • やっていくうちには伸びているけど,間があくと下がってしまった。
  • 話すネタ(話題)がないとつらい。

やはり、話す内容がないとつらい、すぐに言えないといった意見が多いです。ここは工夫の余地があるでしょう。

ワードカウンターに関するQ&A

ワードカウンターを実際に使用している西先生と上山先生に質問しました。

1、生徒はこのワードカウンターを使った学習に乗り気ですか?

上山先生:生徒の多くはみな乗り気です。何語しゃべれたか記録をとるので必死にやります。また、生徒同士で行うというのがポイントです。相手に聞かれていると思うとやる気がでるものです。

2、なかなか語数が伸びない生徒にはどのように接しているのでしょうか?

西先生:「教員室にいつでも来ていいよ」と声をかけます。一回やるのにかかって5分くらいです。生徒の相手をする時間は作れます。毎日付き合って語数が伸びた生徒もいました。とことん付き合ってあげることが大事でしょう。

3、文法があまりわかっておらず、おかしな文をしゃべる生徒がいたらどうしますか?

上山先生:ワードカウンターを使った練習の目的を考えましょう。正確さより流暢さを焦点に当てましたよね。ですので、しゃべっているときの間違えはあまり指摘しません。

そのかわり、しゃべったことを文章にさせてみます。そうすることで文法間違いを自分で気づけるし他人もきちんと指摘できる。しゃべるだけで終わらすのではなく、書かせることでより英語力が上がります。

(編集者注:中学低学年、小学生は文法などを習得しきっていないでしょうし、単語量も少ないです。けれども、上山先生のおっしゃる「目的を考える」ということを踏まえると、子どもたちが英語を話すことへの抵抗を無くすという目的で行えばワードカウンターも価値ある教材になるでしょう。)

4、大体どのくらいのころからワードカウンターを使ったスピーキング練習をさせますか?

上山先生:中1の三学期くらいからでしょうか。その頃に過去形を学ぶと思います。過去形を学ぶと日記が書けるようになるし、話す練習をしだすのにもちょうどいいのです。

5、モチベーション維持はどのようにされているのですか?

上山先生:パートナーを変えることや、あまり同じ話題をやりすぎないことでしょうか。あと実技テストを行うことを伝えておくのも有効でしょう。テストのためなら、と頑張る生徒は必ずいますから。

テストについて

上山先生はワードカウンターで行う1分間モノログをテストにも利用しています。そして評価にも組み込んでいるのです。それによってペーパーテストでは測れない能力を測れるようになったそうです。

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ワードカウンターを利用した指導方法(概要編) | EDUPEDIA

編集後記

この記事を読んでワードカウンターを使った学習の効果を理解して頂けたのではないでしょうか。ワードカウンターは使い方によってより効果を出せる道具だと思います。みなさん独自の方法も試してみてください。一番有効な方法はその方法かもしれませんよ。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 荒井翔央)

参考文献

上山晋平「目指せ英語授業の達人17 45の技で自学力をアップする!英語家庭学習指導ガイドブック」明治図書(2011)
http://goo.gl/3QxRn

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