全くいうことを聞かない子に①(岡篤先生)

GOOD!
7646
回閲覧
26
GOOD

作成者: 岡 篤さん

1 はじめに

この実践記事は、岡篤先生が運営されているメールマガジン( http://p.tl/LNuF )から引用・加筆させて頂いたものです。

2 児童との意思疎通

特別支援学級に限らず、児童との意思疎通は難しいものです。子どもが何を考えているのか、何をして欲しいのか、簡単には分からないでしょう。

今回はケーススタディとして、特別支援学級に通うある女の子と岡先生の間で、どのような過程を経て意思疎通が行われるようになったのかをご紹介します。

最初の状況

担当していたある特別支援学級には、小学校4年生の女の子で、「だー」「あー」などの発声はありますが、言葉は使わず、文字を書くことも難しい児童(以下Aさん)がいました。

課題

Aさんと接する上で1つの大きな問題がありました。Aさんは私(岡先生ご自身)のいうことに何も従わないのです。

対策

◯ 字が書けないのなら、線の練習をさせてみる
  →鉛筆を渡してもすぐに投げてしまう

◯ 遊びの方が良いかもしれないとボールを渡してみる
  →「こっちにちょうだい」と手を差し伸べても、わざと違う方向に投げてしまう

◯ 特別支援関係の本を読む
  →片っ端から試してもAさんに合うもの、手応えを感じるものがなかった

結果

何をさせようとしてもAさんは指示に従わず、目を離すと教室から脱走し、校門を出て行ってしまうこともありました。こういったこともA さんは笑いながら行っていたので、人が困ることを喜んでいるように見えました。

試行錯誤

上記の対策はどれも効果を現しませんでしたが、Aさんと<span style='font-weight:bold;'>向き合うことを諦めようとは思いません</span>でした。そして膨大な本の中ではなく、実践の中に彼女と意思疎通を図るきっかけを見つけたのです。

駄目で元々のサイコロ遊び

そのきっかけとは、駄目で元々の心境でサイコロをAさんに転がしたことです。Aさんの反応はいつも通りで、このときも笑いながら横に向けてサイコロを投げてしまいました。しかも私(岡先生ご自身)がそのサイコロを拾いに立ち上がると、サイコロを掴み、また違うところに大笑いしながら投げるのです。拾おうとする度に同じように投げるので、「どこまで馬鹿にしているのだ」と怒りの気持ちも芽生えました。

サイコロの取り合い

Aさんの投げたサイコロを取りに歩き出すと、Aさんもやはり動きだし、私(岡先生ご自身)がサイコロに近づくと、大笑いしながら急いで駆け寄ってきます。タッチの差で私がサイコロを手にすると、Aさんは楽しくて仕方ないという風に笑うのです。

今度は私がAさんとは別の方にサイコロを投げ、<span style='font-weight:bold;'>わざと大きな動作でそちらに動く振り</span>をすると、彼女は座り込んでいた床から体を起こして、サイコロを取るのを競い合うのです。このサイコロの取り合いに次第に私も楽しさを感じるようになり、初めてAさんと意思が通じたように思えました。

サイコロを投げる真意

ボールやサイコロを投げ返して来ないというAさんの行動は、私(岡先生ご自身)とのコミュニケーションを拒否しているように思えました。しかし本当に拒否しているのなら、何のリアクションも起こさないはずです。笑いながら必ず横に投げるということは、反応はしているということでした。

サイコロの取り合いを何度か繰り返し、私がサイコロを拾い上げたとき、Aさんは両方の手のひらを上に向けてお椀のように広げ、差し出しました。初めはその意思表示の意味を汲み取ることができませんでしたが、彼女の笑いがこみ上げてくるような表情とその仕草から、それが「ちょうだい」を表しているのだと理解しました。

この「ちょうだい」は、彼女にとっては「もっとサイコロで遊ぼう!」という意味でした。

初めてのコミュニケーション

Aさんの「ちょうだい」ののち、私(岡先生ご自身)は<span style='font-weight:bold;'>「ようし!」と大きなかけ声を出したり、サイコロを床に落として音を出させ</span>たりして、彼女の好奇心を刺激しながら遊びました。Aさんはそのどれにも「ふふふふふ」と彼女特有の笑い声を出しながら応じたのです。

わざとぎりぎりで負けて、Aさんにサイコロを取らせることもありましたが、そういうときには彼女は得意顔で私を見つめ、私が勝ったときには、「ちょうだい」と両手を差し出し、ゲームを再開させるのでした。

3 編集後記

諦めることなく真摯に向き合い続けることで、相手の真意を掴むことができると教えてくれた実践です。特別支援学級の児童に限らず、一見理解し難い行動を取る子どもがいたときには、目の前に見えていることだけを判断の材料にするのではなく、「どうしてこの子はこんなことをするのだろう」と真剣に考えてあげることが大切だと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 陣内萌)

4 実践者プロフィール

岡篤(おかあつし)先生
神戸市立好徳小学校教諭。
漢字と俳句の実践に力を入れている。
学力研という研究会に所属。
● 主な著書
『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年 http://amzn.to/X7QQh0
『書きの力を確実につける』2002年 http://amzn.to/Y8C3Sw
『これならできる!漢字指導法』2002年 http://amzn.to/Zahyvq
『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年 http://amzn.to/Yk4gda
『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年 http://amzn.to/WJQFMe
● HP 岡先生の<span style='font-weight:bold;'>メルマガへの申し込み</span>はこちらから
教師の基礎技術~若い先生へ
http://blogs.dion.ne.jp/aoka5/

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。