1 1 はじめに
平成25年2月28日(木)に港区立青山小学校( http://www1.r4.rosenet.jp/aoyama-ea/)にて『「生きてはたらく活用力を育む教育課程の創造」—言語活動の充実 ICTを用いた情報活用—』というテーマのもと、公開授業・中間報告会が行われました。青山小学校は平成24年度文部科学省教育ICT活用実践事例調査研究指定校・デジタル教科書協議会実証研究校です。
その公開授業の1つである、あすなろ学級を担当する川島彬先生、手島千春先生のクラスでは、「しってほしいな わたしのまち・ぼくのまち」という単元の授業が行われました。この授業では、3,4年生が5年生に「おきにいりのばしょ」紹介をします。そして、この学習を進めるにあたって使用した電子黒板やタブレットPCの使い方を、3,4年生が5年生に教えることを通して、興味・関心を高め、互いに学びを深めます。
主な授業内容は次の通りです。
2 2 単元名
「しってほしいな わたしのまち・ぼくのまち」
3 3 単元指導計画(全20時間 )
1,2時間目:カメラマンになろう
3,4時間目:PowerPointで写真を動かそう
…Windows7でPowerPointを事前に学習。自分が住んでいる町やお気に入りの場所について、伝えたいことを整理する。
5,6時間目:友達に伝わる工夫を考えよう
7,8時間目:お気に入りの場所を取材しよう
…個々のテーマをもとに、伝えたい場所の現地取材を行った。その際にWindows8搭載のタブレットPCを各自持っていった。
取材を行う前に、タブレットPCの使用にあたって、管理方法や使うときのマナーやルールについて学習し、タブレットPCの機能の体験をした。その際には、子どもたちにとって身近な人や物に視点をむけることからスタートした。
9~13時間目:PowerPointでまとめよう
…担任・介助員の先生方のサポートを受けながら、PowerPointで「伝わる」表現を試行錯誤する。
14~16時間目:発表の仕方を学ぼう
…電子黒板を活用することで、より効果的に伝わることを意識した。
17時間目:本時(「おきにいりのばしょ」を紹介する)
18,19時間目:友達の意見を取り入れよう
20時間目:おうちの人たちに紹介しよう
4 4 ICT活用のポイント
(1)授業場所
教室
(2)授業形態
個別学習・グループ学習
(3)ICTの主な活用者
担任・児童
(4)ICTを活用する場面
- 授業全般
- 前時を振り返る資料の提示
- PowerPointによる児童の発表
(5)ICTの活用により、期待される効果
<発表者>
- PowerPointを効果的に活用し、伝えたいことを簡潔に、具体的に表すことができる。
<聞き手>
- 友達の発表を聞いて、タブレットPCに興味を持つ。
- わかりやすい説明を聞くことで、興味・関心が高まり、発言や質問が出やすくなる。
5 5 本時の学習
(1)本時のねらい
- 聞き手を意識し、ICTを活用しながら自分の考えをわかりやすく発表することができる。
- 互いのかかわりを大切にしながら、学びを深めることができる。
(2)本時の展開(17/20)
以下で使用する記号はそれぞれ、★指導・支援 ●評価 ◇ICT活用のポイント を表します。
導入
○前時までの振り返り
3,4年生が電子機器を使う練習をした様子や、自分たちのお気に入りの場所に取材に行った様子を、電子黒板を使って振り返る。
○課題の把握
「わたしのおきにいりの ばしょを しょうかいします」
★学習の過程を振り返り、本時のめあてを意識できるように写真をまとめておく
◇電子黒板、PowerPoint
○「自分の住む街・よく遊ぶ公園・よく出かける町」の紹介(3,4年生)
聞き手を意識した発表の練習を事前に行い、作成したPowerPointを使って紹介する。作成の過程での工夫点、苦労点なども伝える。また、強調した部分を、電子黒板を使って効果的に説明する。
<聞き手を意識した発表の練習の例>
- お気に入りの場所で撮ってきた写真を使って、聞き手が参加できるようなクイズをつくる。
- 発表者がいちばん気に入っている場所を強調するために、発表の声の大きさに強弱をつけたり、体を使って表現したりする。
- 相手に顔を向けて、聞き手が聞きやすいスピードで話す。
- 発表者ならではの見え方や感じ方を、Windowsの動画撮影機能や画像を編集する機能を使って発表資料の中に盛り込む。
など
★発表者に対して、郊外での取材やPowerPoint作りを称賛し、自信を持って伝えられるように声かけや助言をする。
●パソコンを操作しながら、相手に顔を向け、わかりやすく説明することができている。
◇Windows8搭載タブレットPC、電子黒板
○質疑応答
それぞれの発表ごとに、聞き手は発表内容に対しての質問や感想を伝える。
★発表者と聞き手のあいだに入り、子どもたちの言葉を補うなどして、円滑にやりとりが進むように支援する。
◇Windows8搭載タブレットPCの機能(カメラ・動画・アプリ)
○パソコン操作の紹介と体験
教師がタブレットPCとWindows8の機能の一部を紹介し、3,4年生が5年生とペアになって教える形式で体験する。
★発表者による操作方法の説明を称賛しながら、聞き手がリラックスして機器を操作できるように支援する。
▼タブレットPCとWindows8の機能の一部の紹介
▼3,4年生が5年生へカメラ機能の紹介
まとめ
○意見や感想の記入
発表者の3,4年生は友達からの意見や感想をパソコンのワークシートに打ち込む。5年生は、それぞれ教えてもらった機能についての知識を持ち寄り、お互いに紹介し合う。
★聞き手から出た質問や感想などを短冊(ホワイトボード)に要約し、それを示しながら打ち込みの作業を支援する。
◇タブレットPCの利用により、指でタッチすることで文字入力を行えるため、文字を書くのが苦手な子どもの文章作成を支援することができる。
▼感想を記入している様子。(3,4年生)
▼お互いに教えてもらったことを紹介し合う様子。(5年生)
○次時の活動内容の確認
★本時の児童の活動を称賛し、子どもたちが次時のめあてに気づくように予告をする。
6 6 編集後記
タブレットPCが、文字を書くのが苦手な子どもの文章作成や表現を効果的に支援できている点が印象深い実践でした。青山小は先進的にICTを活用している小学校で、設備も使用する環境も十分に整っています。そのような中で行われた実践であるがゆえに、他の学校の先生方には「参考にはできない」と思われがちかもしれません。たしかに、ICT機器を存分に活用しているように見えますが、機器の有無にかかわらず、この実践では子どもたちが、他者意識をもって自分の思いや考えを形にしようとする姿勢を育むことができるのではないかと思います。ぜひご参考にしてみてください。
(文責・編集:EDUPEDIA編集部 佐藤 睦)
7 7 講師紹介
東京都港区立青山小学校 川島 彬先生 手島 千春先生
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