「ウサギとカメ」の続きの物語で友達について考える(2) (坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。
坂本哲彦先生のホームページはこちら

http://sakamoto.cside.com/

「ウサギとカメ」の続きの物語で友達について考える(1)はこちら

http://sakamoto.cside.com/sakamoto2007/usagitokame.htm

2 概要

対象 

小学校4年生

ねらい、内容

前回の(1)でうまくいかなかったため、新たにねらいと学習内容を修正して再度行った。しかし、一層複雑な授業となった。

本時は、一人ひとりの子どもの友達観を広げる授業である。

ねらいは、「友達と互いに理解し、信頼し合おうとする態度を養う」とした。

子どもたちは、「友達と互いに理解し、信頼し合う」ことが大切であることは、漠然と知っている。日頃、親や教師から言われているし、実生活においてそのよさも感じ取っているからである。

しかし、「友達と互いに理解し、信頼し合う」ためには、「自分のよいところ」や「友達のよいところ」について一層理解し、認め合うことが不可欠であること、また、「自分のよいところ」や「友達のよいところ」には、様々なもの(行動で示しやすいもの示しにくいもの、数値で表しやすいもの表しにくいもの、他の人から分かりやすいもの分かりにくいものなど)があることなどについては十分には自覚的でない。

そこで、本時の学習内容を次のように設定した。

  • 互いのよさを知り、認め合うことが大切であることへの共感的な理解
  • 数字で表せるよさや表せないよさ、行動で表しやすいよさや表しにくいよさなど様々なよさやよさの捉え方があることへの気付き
  • 自他(特に友達)のよさを積極的に見付けていこうとする意欲

授業の目的

一輪の花を差し出すカメとそれを受け取るウサギの気持ちを話し合うことなどを通して、自他のよさとよさを表すものへの関心を高め、友達と互いに理解し、信頼し合おうとする意欲を養う。

資料

「カメの反省」作:さなともこ 絵:温品賢二
(『ファンタジーの宝石箱 vo.1』全日出版 2004.9 所収)  

この資料は、イソップ童話「ウサギとカメ」の続き物語として創作された掌編童話である。

寝ていたウサギを起こさずに勝ったことを後悔するカメは、再度、競走を申込む。今回こそ、絶対に負けられないウサギは、途中、寝ることなく早々とゴールし、なかなかやってこないカメを待つ。自分のペースでゴールインしたカメは、途中、道端で摘んだ一輪の花を「やっぱり、きみのほうがずっと早かったね」と差し出す。そして、すっかりしおれた花を喜んで受け取るウサギ。
勝負が終わった後、ウサギが身に付けていたストップウォッチと、カメが身に付けていた万歩計、それぞれをのぞき見て、「すごーい!」と同時に声をあげる、という話である。

心が通じ合っていなかった二人が、二度目の競走で、互いのよさ(ウサギの足の速さ、カメの根気強さ)を認め合うとともに、それぞれのよさをストップウォッチや万歩計で客観的に捉えている。また、ウサギがカメを心配して待ったり、カメが花を贈ったりする行動もそれぞれのよさとして、さりげなく描かれている。友達として互いを理解し、信頼し合うことの大切さやそのために必要なこと(例えば、相手のよさを見付けたり、感じ取ったりすること等)を考えるのに相応しい資料である。

板書


授業を見学した先生の感想

  • この授業(児童数31名)では、延べ35発言。実発言者数21人。最多発言者5回。
  • イソップ童話は、道徳の資料としては、相応しくない。愚かな者が愚かなことをすると愚かな結果になるということが書かれているに過ぎない。(今回の資料は、イソップ童話の続き物語として創作された「全く別個の掌篇童話」なのですが、やはり、イソップをモチーフにしている点に問題有りということなのかもしれません。)
  • 子どもたちが普段読んでいる本の質を十分とらえて授業を仕組むべきである。
  • 子どもの課題(問題ではなく、よりよく生きるという意味での課題)を解決するものでなくてはならない。どこに向かって授業するのかを考えるべきである。
  • ストップウォッチと万歩計を見て驚く場面では、「数字にこだわるのではなく、それぞれ別のものさし、よさをもっており、それがそれぞれ素晴らしかったということを押さえるべき」である。教師の趣味で学習内容を設定しないこと。(これは、私が、数字で表せるよさと数字で表せないよさがあることを学習内容に設定していた点の誤りを指摘されているものです。)
  • ねらいを具体化することが大切である。(今回は、その具体は十分ではないということです。)
  • 自分の言葉でねらいを書くことが大切である。
  • 粗筋の把握は短くすることが大切である。
  • 子どもの言葉を受け止め、まず理解し合うことが大切である。
  • 新しい視点を示すことが大切である。(この授業は、新しい視点を示したが、それがずれていたということも同時にあります。)
  • 褒め合うことと認め合うこととは違うことを明確にせよ。(これは、板書2枚目にもありますが、子どもが「互いのいいところをほめ合った」とする発言について、教師の返しが十分ではなかったことを述べられたものです。)
  • 書く活動をもっと重視することが大切である。

(これは、この授業で、読み物資料の中にちょこちょこっとメモする活動をとるだけで、事前にきちんと考えを書かせなかったことに対する意見です。)

3 指導案

4 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。

坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

5 編集後記

今回の指導案のねらい、内容がいくつか示されていた中でも特に「互いのよさを知り、認め合うことが大切であることへの共感的な理解」が一番重要なポイントだと感じた。「互いのよさを知り、認め合うことが大切」であるということを一方的に教えるのではなく、物語を通してその内容を自分の日常にも当てはめて、共感と共に考える学習形態は、当事者意識を持って主体的に考えることを促すと考えられる点で、有意義だと感じた。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 金子裕美)

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