1 「子どもたちが自分の声を届けるイメージを持てるための発声練習」
次のような流れで発声練習指導をしていました。
腹式呼吸
まず、息を吸って、息を吐く練習です。最初は「あくび」をするイメージで、私が両手を徐々に広げていく間、子どもたちは、ゆっくりと息を吸っていきます。複式呼吸の練習です。そして、一瞬止めて、私の合図で一気に息を吐きます。ときには、一気に吐かずに、ゆっくりと長く細く息を吐くこともします。
次に、ピアノのソの音を聞かせて、たっぷり息を吸った後、私の合図で「アーーーーー」と、10~15秒ほど「ソ」の高さを維持しながら発声していきます。「ソ」の次は「ファ」「ミ」「レ」「ド」と、一音ずつ下げていきます。歌う曲によって、低い「シ」まですることもあります。
また、「ソ」に戻ります。今度は「ソ」から「ラ」「シ」「ド」「レ」「ミ」と、一音ずつ上げていきます。歌う曲によって、高い「ファ」まですることもあります。
その次は、1回たっぷりと息を吸って、「ドレミファソラシドレミーーー」と音階を上がったり、逆に下がったりする発声練習をします。
最も大切にしていたことは、子どもたちが、自分の声を「あそこまで届けよう」と意識しながら発声しようと思ってくれるようになることでした。そのために、私が両手の親指同士、人差し指同士をくっつけて、丸い円をつくり、「この丸の中に、自分の声を届けて」と言ったり、その丸い円をつくった両手の位置を胸の前から、斜め上の後方へ移動させながら、私が1歩ずつ後退して、子どもたちが、より遠くまで、声を届けようと意識してくれるようにしたりしました。それは、指揮の合図に集中するレッスンでもありました。
「この黒板の向こう側の部屋にいる人に、みんなの声を届けよう」、「今、運動場で体育をしている人たちに、みんなの声を届けよう」などと、より具体的・視覚的に「あそこまで声を届けよう」とイメージしてくれるような言葉がけをする発声練習も採り入れました。
頭声的発声
頭声的発声を、子どもたちに意識してもらうためには、
「あごをやわらかく、なるべく大きく開こう」「口の中は、力が入らない程度に、ほどよく大きく開こう」「口よりも、のどの奥を開いて、声を上に持っていこう」「のどの、上あごから、鼻の方向に、声をひびかせよう」「頭の中をからっぽにして、頭の中、全体に声をひびかせよう」「声は、下腹から、体の真ん中の『声のくだ』を通って、一気に鼻の方へ」
とか、イメージしやすいことをいろいろ言ったのですが・・ちょっと忘れました。
発声練習の効果と課題
こういったことを、合唱の練習の最初に5~10分ほどしてみるだけで、子どもたちの集中力(ピアノの音や友だちの声を聴く集中力、指揮の合図に反応する集中力)が個々バラバラじゃなく、40人なら40人の声のかたまりになります。それが、指揮者にドドーンと向かってくるから、指揮をしながらゾクゾクッとなることもあります。
腹式呼吸ができるようになれば、やわらかな大きい声で、子どもたちも気持ちよく歌えるようになるので、子どもも斉唱より二部合唱をしたがります。
無理して大きな声を出そうと怒鳴り声で歌うのは、のどを痛めるだけです。やはり、大事なのは、基礎になる発声練習をていねいにやってから、合唱の練習をすることです。
「もっと大きな声で」と言うのではなく、「もっと息を吸って」「おなかに息をためて」と言うほうが、結果として、やわらかく大きな声で歌えるようになると、指導者は心得るべきでしょう。
もちろん、指導者自身が、その歌を好きで、心から子どもたちと一緒に歌いたいという気持ちになっているかどうかが、そのまま指揮に表れ、子どもたちの歌声にも表れると自覚しておく必要はありますが・・・。
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