1.はじめに
この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/
2.この記事で紹介する実践
資料
「そして、トンキーも しんだ」作:たなべ まもる 絵:梶 鮎太
『CDつき こころにひびく名さくよみもの』 編:府川源一郎 佐藤宗子 教育出版 P.47-62
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●あらすじ
昭和18年。戦争が激しくなる中、上野動物園の象「トンキーとワンリー」を殺すように命令された飼育員の福田さんの苦悩を描いている。福田さんはトンキーとワンリーの命を守ろうと努力するが、うまくいかず、30日も水・えさを与えられなかったトンキーは死んでしまう。
対象
小学校1・2年生
ねらい
ふくださんとトンキーの気持ちを話し合うことを通して、動物の命を大切にしようとする思いを改めて高め、身近な動物に優しい心で接しようとする態度を養う。3-(2)
3.学習内容
(1)動物の命を大切にしようとする気持ち
- 動物の気持ちを想像すること
- 動物の命を守るためにできることを考えること
(2)自分の生活について振り返って考えること
- 自分が動物を大切にしているかどうか考えること
- 今後の願い、課題
4.学習過程 (45分授業)
① 資料を読み、感想を発表する(15分)
※「動物園に行ったことがありますか?」と投げかけ、短時間、口々に知っていることを発表させます。
※動物のかわいらしさや、飼育する人の大変さなどを引きだして、資料につなぎます。
※資料をゆっくり読み聞かせます。約15分です。
※課題提示:「今日は、飼育係の福田さんと象のトンキーの気持ちを話し合うことを通して、動物の命を大切にすることについて考えを深めましょう。」
② トンキーの気持ちを話し合う(25分)
● 発問1:「心配でそっとのぞく人が来ると、よろよろとさくを離れ、芸当をして、えさをねだるトンキーはどんなことを考えていたでしょうか。」
※「どんな気持ちか」と問うよりも「どんなことを考えていたか」と問う方が、子どもの思考の幅が広がります。前者だと「悲しい」とか「つらい」などの心情的な発言が促されます。後者だと、事実把握、論理・因果など少し知的な側面が強調されます。したがって、一人一人の発言も長くなり、話し合いには向いています。
※ ①お願いです、食べる物をください。お腹がすきました。②のどが渇きました。水だけでもすぐに飲ませてください。③なぜ、わたしたちに、食べ物をくれないのですか? 理由を教えてください。④芸ならいくらでもしますから、どうぞ何かください、⑤その他などが挙がると思います。
※ トンキー自身には何の悪い所もないのに、けなげに芸をして食べ物をねだるトンキーの一途な思いに自然に共感していくことでしょう。
● 発問2:「芸を見た飼育員の気持ちを想像してみましょう。」
※ 発問1で話し合ったことを飼育員側から見ることで、一層確かな学習内容の理解を図ります。関連付けたことを板書にします。
※ ①すまない。許してくれ。お腹が空いていることだろう。②しかし、えさをやることは許されていないのだ。何とかしてやりたいが……、③(何も思う所がなく)ただ涙を流すだけ……、④戦争が悪いのだ。何もしてやれない自分がとても情けなく、悔しい 等々が出るでしょう。
※ 最終的に、「動物の命を大切にするためには、①動物の気持ちを分かろうとする心根、②動物の命を育むために具体的に行動する態度が必要であること」を押さえます。
③ 自分の生活を振り返って、感想を書く(10分)
● 発問3:「自分の生活を振り返って、身近な動物を大切にしようとしているか、大切にしてきたか?について思ったことを書きましょう。」
※ 反省文のようになってはならないと感じますが、「しっかり身近な動物の心の声を聞きながら生活しているか、生活をしてきたかどうか」という観点から日頃の生活を振り返って書かせることは大切です。これを本時の「自己評価観点」と言っています。
5、編集後記
この 『そして、トンキーもしんだ』は私も幼少の頃読んで、とても印象に残っていることを覚えています。私は、戦争のせいで関係のない人たちまでも悲劇に巻き込まれることをひどく悲しみました。この題材は、実践の狙いだけではなく読み手に応じて様々な印象を与えてくれるものだと思います。この実践を参考に先生方には子どもたちに応じた指導案を作っていただきたいと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)
6、実践者プロフィール
坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
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