「ふわふわ ゴーゴー」で心もふくらませて

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目次

1 題材の魅力について(材料・場所がもつ造形要素)

本題材はビニル袋のもつ特徴を生かし空気でふくらませながら、思いついたものをつくって(外で)遊ぶことをねらいとしています。

ビニル袋は、軽量でカラフル、空気でふくらませることで大きな形になったり、ゆらゆら動いたりするので楽しい活動が期待できます。また日光を反射したり透過したりするので、キラキラ輝く美しさや地面に映る影を楽しむこともできます。何よりふわふわした感触と体全体で関われる心地良さもあります。

そんなビニル袋の持つ可能性を子ども自身が発見し、友達と協力する楽しさを感じ取りながら活動していくことができるのがこの題材の魅力です。

2 ビニル袋と空気で、どんなことができる?     

まずは、試しに普通の大きさのビニル袋を子どもに渡してみます。(ほんとはカラ—ビニル袋を渡したかった。)すると子どもたちは「GO!GO!」と言いながら走ってふくらませようとするので、送風機や袋の口に針金をつけて空に放り投げるやり方なども教えます。それだけで、どんどん子どもたちは試していきます。

「もっと大きな袋が欲しい!」なんて子どもは言いだすので、「筒みたいにつなげていくのもいいし、開いて大きな袋にするのもいいね。」と話し、試しに袋をつないでいきます。大きな袋ではないので案外早くつなぎ終わると、またそれに空気を入れて遊びだします。でもその時には、「次はもっと大きな袋を使うから、どんなことをしたいか考えていてね。」と話しておきます。

3 「したいこと」に分かれ、グループで活動開始!     

「どんどん筒つなぎにして、なが~いヘビをつくりたい。」

「筒だけじゃ面白くない。迷路にしよう。」

「(袋を)開いてつないで、とにかく大きなものにしたい。」

こんなふうに「何かをつくりたい。」という子どもと「ただただつなげて大きく(長く)したい。」という子どもに分かれます。後者の方が単純に造形遊びの楽しさを味わえるような気がするのですが、前者のように考えるのも自然な子どもの姿なので、単純な形のものしか出来ないことを話して認めていきます。

早速カラ—ビニル袋を使って活動を開始しますが、ここでちょっとしたコツが…。それはセロテープカッターをできるだけ多く準備しておくこと。

子どもが持っている個人用のものは刃の部分もプラスチックなので、たくさん使う時には時間がかかってしまうのです。これで全然作業時間か違ってきます。またセロテープではつなぐのが難しい部分を接合するために、ガムテープ大の透明テープも用意しておきます。


(袋を開いてどんどんつないでいく子ども)

4 試しに空気を入れてみよう。あれっ!もれてるよ~  

もうひとつ大切なこと。それは、途中で試しに空気を入れてみること。

ただつないでいるグループはいいのですが、何かの形をつくっているグループは、うまく接合できていない部分があって空気が漏れてしまうことがしばしばあります。また、いくら簡単な形とはいえ立体にするのを頭だけで考えるのは難しい年齢です。送風機でふくらませていくことで、「あっ、ここに袋があと2枚いる。」なんてことに気付くのです。

他のグループも試しに空気を入れると、むくむくふくらんでくる楽しさにやる気が倍増!ただビニル袋をつないでいくだけの単純作業が、わくわくする活動になっていきます。

5 完成!いよいよ外で空気を入れて遊ぶ日が来た!  

試しで空気を入れたことがあるとはいえ、やっぱり外でやるのは違う。だって太陽の光と風がある。それに何て言ったって、今日は他のグループの作品で遊ぶこともできる。そう、この題材のクライマックスは、遊んでそのグル—プのよさやこの図工の楽しさを見つける鑑賞の時間なのです。

送風機はもちろん、学校中にある扇風機も外に持ち出しスタンバイ。

子どもたちも、「自分たちの作品のおすすめの遊び方」を書いたボードを準備して、鑑賞の時間が始まりました。

まずは自分たちの作品をふくらませていきます。試しにふくらませたことがあるとはいえ、外は風が吹くたびビニル袋の動きがダイナミックになっていきます。

○ 風でゆらゆら動くビニル袋の中で、透過する光の美しさを楽しむ子ども

この子どもは大きくふくらませたビニル袋の中から空を見上げ、透過した色の美しさに心奪われていました。

つくっている時は、ただただビニル袋をつないで大きな形にしたかったのです。もちろん、色の組合せは工夫していました。でもこれほど美しいものをつくっていたとは、子どもたち自身も気付いていなかったのです。
「見て!ほらっ、外が全部、緑色に見える!」

ゆらゆら動くビニル袋の中で、ビニル袋越しに見える外の様子を楽しむ姿も見られました。

○ 地面に映る影で遊び出した子ども

この子どもは「やまたのおろち」の首が風でユラユラ動く面白さが気に入って、しばらく眺めていたのですが、そのうち地面に映る緑の影に気がつきました。すると首を持ち戦っている様子を影に映して遊びだしたのです。この子にとっては、風で動く「やまたのおろち」は、本当に生き物のように思えたのでしょうね。

影の美しさに気付くことは想定していたのですが、その影を使ってこんな楽しみ方をするとは考えていませんでした。子どもって、すごいですね。

○ 飽きるまで走ってふくらませたり、中に入ったりして、体全体で活動を楽しむ子どもたち

「先生!ぼく、ほんとに空、飛んでるみたい!」

これは、走りながらビニル袋をふくらませることを、飽きるまで繰り返していた子どもの言葉です。風をはらんだビニル袋に体がもっていかれそうになったのでしょう。「空を飛んでるみたい。」と思える子どもの感性が、素敵だなあと感じました。またビニル袋を使うことで、簡単に大きなものをつくり中に入ったり上にのったりして遊ぶことができます。当然、協力しなければつくることができません。
「みんなでやると、一人よりすごいことができるし、楽しいって分かりました。」

これも、学習後の子どもの感想です。

実践を終えて、この造形遊びをすることに次のような価値があると、改めて気づかされました。
それは、みんなで協力して活動する楽しさ、材料と場所(風と光)がコラボした美しさや楽しさを体全体で味わえるよさです。

どうぞ、子どもたちの感性を信じて、教師の予想を超える活動が生まれる様子を楽しんでください。

6 実践者プロフィール

馬場真弓(ばばまゆみ)先生
福岡市立原小学校教諭
第16回東書教育賞優秀賞受賞

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