1 はじめに
本記事は現在鳥取県米子市立尚徳小学校の校長をされている倉光信一郎先生のホームページ「読書へのアニマシオン」より引用・加筆させて頂いたものです。
2 対象
小学校2・3・4年生
3 ねらい
他の人の音読に集中することができるようになる、間違いに気を配ることができるようになる。
4 実践内容
以下で登場するアニマドールとは、「読書へのアニマシオン」を行うときのリーダーで、子どもたちの持っている力をやさしく引き出してあげる人です。学校で授業を行う場合は、先生がアニマドールになります。
オリジナルの作戦
※この作戦の場合、参加する子どもたちが前もって本を読んできてはいけません。
- はじめに、大きな輪になるように子どもたちに並んでもらいます。そして、少なくとも最初に読む5人までは、本を持つようにします。アニマドールと、審判役の子ども1人は、円の外側に立って、円をはさんで向き合います。2人とも、ホイッスルを首からさげるか、手に持ちます。
- アニマドールは子どもたちに、これから同じ本を皆で順番に音読していくこと、読んだことについてあとからコメントすることを説明します。子どもたちは間違えないように読まなければなりません。
- アニマドールの笛の合図で最初の子が音読を始めます。間違えたらすかさず、その右隣の子(「お隣さん」と呼びます)が「ストップ」と声をかけ、間違えたところから続けて読みます。間違えた子は、輪の外に出ます。読んでいる子が間違えたのに、「お隣さん」が気づかなかったときは、輪の外の審判役の子がホイッスルを1回鳴らします。知らせそびれた「お隣さん」は失格になり、輪の外の「コーナー」に出ます。「お隣さん」も審判役も合図をしそびれたときは、アニマドールが3回ホイッスルを鳴らし、今度は審判役が失格となります。そして、別の子(もう読み終えた子がいいでしょう)がアニマドールから別のホイッスルを受け取り、審判役になります。当たった子がずっと間違えずに読み続けた場合は、90秒か100秒したら、アニマドールが2回ホイッスルを鳴らし、「お隣さん」と交代させます。
- 読み終えたら、読んだことについてコメントを出し合います。討論に参加するため、子どもたちは輪から抜けてもほかの子が読むのをよく聞いていなければなりません。
以下の点に注意しましょう
- 人数分の本がない場合は、間違えた子が輪の外に出るときに、まだ本を持っていない子どもの中で最初に順番がくる者に本を渡します。1人に1冊ずつ本があるときは、本を手にして、皆と遊びを続けることができます。
- 読み「間違い」は習慣になっていることがあります。たとえば、単語を間違えて読みあげる、句点があるのに間をおかない、名前を間違えて発音する、疑問文であるのに疑問のイントネーションで読まない、読点も句点もないのに間をおく、複数形を単数形にしてしまう、などです。
- 人数が少ないときは、2度間違えてから交代するようにしてもよいでしょう。この場合、アニマドールは、子どもたちがどのような間違いをしたかを、その場で紙か黒板にすべて書きとめます。30人以上いるときは、1回目の間違いで抜けなければなりません。
- よくありがちな間違い-読点、セミコロン、疑問符、…(絶句や余韻などを示す)、名前の読み間違い、感嘆符など-をアニマドールが黒板に書き出しておき、輪の外に抜け出る子が、自分のした間違いに印をつけていきます。
黒板に書き出したこと以外で間違えた子がいたときは、項目を書き足します。
倉光先生流の作戦
私がこの作戦を行ったときは、間違えた子や失格になった子を輪の外に出すことをしませんでした。ゲームなので、勝ち負けがついた方が盛り上がるでしょうが、「負け」になった子が悲しい気持ちになるのではないかと思うからです。目の前の子どもたちの実態によっては、本に示してある通りの進め方をしてもなんの問題もない場合もあるでしょう。しかし、初めて目にする文章をすらすらと読める子どもたちはあまりありません。ましてや人前で自分の音読をしなければならず、それを評価されるのですから、それだけでも相当なプレッシャーがあるはずです。罰を与えるような方法は、できるだけ避けたいものです。
4年生のクラスの担任が出張だったときにやってみました。子どもたちはとても喜びました。審判役の子の方がよくミスをするので、読み間違えた子が目立ちません。これまでの音読は、読み間違えるとその子ばかり目立ってしまうのに、この遊びはそうではないところにおもしろさがあるようです。担任が帰ってきた次の日は、担任と一緒にやっていたようでした。間違えやすいところに気をつけて読むようになるので、学級全体の音読の意識が変わります。
書籍情報
『読書へのアニマシオン‐75の作戦』 M. M. サルト 著 柏書房 (2001)
5 「読書へのアニマシオン」シリーズについて
「読書へのアニマシオン」はシリーズ記事です。
「読書へのアニマシオン」全体の説明や、他の作戦をこちらのページからご覧いただけます。
6 編集後記
今回の作戦で非常に面白いところは、審判の存在が間違えた児童があまり目立たないようにカモフラージュする働きをしているという点です。審判をしたいと自分から挑戦する児童は、総じて明るい子が多いと思いますので、審判を上手く利用することがこの作戦のカギになるのではないかと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安田明弘)
7 実践者プロフィール
倉光信一郎(くらみつしんいちろう)
鳥取県米子市立尚徳小学校校長。
モンセラット・サルト氏の著書『読書へのアニマシオン‐75の作戦』(柏書房)を元に実践を展開。
米子市と長岡京市で「勉強会」を開催。
要請があれば、児童生徒、保護者、教職員を対象にワークショップを行い、これまで数多くのワークショップを開催。
アニマシオンのエッセンスを伝えていらっしゃいます。
コメント