読書へのアニマシオン 作戦1「読みちがえた読み聞かせ」〜物語の間違いを探せ〜

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目次

1 はじめに

本記事は現在鳥取県米子市立尚徳小学校の校長をされている倉光信一郎先生のホームページ「読書へのアニマシオン」より引用・加筆させて頂いたものです。

2 対象

小学校1・2・3年生

3 ねらい

言葉使い・語彙に敏感になる

4 教材

「11ぴきのねこ」 馬場のぼる 著 こぐま社 (1967)

5 実践内容

以下で登場するアニマドールとは、「読書へのアニマシオン」を行うときのリーダーで、子どもたちの持っている力をやさしく引き出してあげる人です。学校で授業を行う場合は、先生がアニマドールになります。

オリジナルの作戦

  1. 子どもたちが集まったら、アニマドールはあらすじがつかみやすいように、ゆっくりと選んだ物語を読みあげます。
  2. 読み終わったら、アニマドールは子どもたちに、楽しかったか、どの登場人物が1番良かったか、それはどうしてか、どの場面が1番面白かったかなどと尋ねます。
  3. 次に、もう1度同じ物語を読むことを告げます。そして、もし読みちがえたら「違ったよ」と声をかけてくれるように言います。
  4. アニマドールは、ところどころ言葉をさしかえたり(類義語、反意語、原文の意味と違う語、もっと美しい言い方などにかえます)、登場人物の名前や場面設定を変えたりしながら、2度目の読み聞かせをします。子どもたちが間違いを見つけたら、その場で声をかけてもらいます。
  5. 2度目の読み聞かせを終えたら、今度また別のお話を読んで楽しく遊びましょうと告げて、お開きにします。

書籍情報

『読書へのアニマシオン‐75の作戦』 M. M. サルト 著 柏書房 (2001)

倉光先生流の作戦

1度読んだ(読み聞かせてもらった)本を思い出しながら、楽しく時間を過ごすことが重要になります。しかし、この作戦の大きな問題は、読み聞かせを絵本を見せながら行うかどうかということです。つまり、1度読んだ本を2度目には間違えて読むから、どこを間違えるのか絵本に記しておかなければいけないのですが、間違える個所を記した絵本を子どもたちに見せると、どこを間違えるかが分かってしまっておもしろくなくなってしまいます。しかし、絵本を見せないで読み聞かせをすると、絵本の楽しさが伝わりません。そこで、倉光先生は次の方法をとっています。

①コピーを利用する。

コピーしたものに間違える部分を書き込み、2回目はこれを読む。この方法が1番いいが、費用の問題がある。

②ポストイットを利用する。

はじめに間違える部分をポストイットに書いて絵本に貼っておく。ポストイットには、ページと行を書いておく。読み聞かせる前にポストイットをはがし、読み聞かせが終わったらそれを貼る。この貼る時間が間があくのが欠点。この間を、子どもたちの興味が離れないように話で埋めるのがちょっと難しい。

③ 同じ本を2冊用意する。

1つは読み聞かせるためのもの。もう1つは、間違えて読むためのもの。間違えて読むための本には、直接書き込まないで、ポストイットに書いて貼っておく。

④ 同じ本を2回目は適当に間違えながら読む。

簡単な本の場合は可能である。

⑤ 本文を書き写し、それに間違える言葉を書き込み、2回目に読む。

6 具体的な間違いのサンプル

11ぴきのねこ (太字は間違える個所、青字は間違えたことば)


11ぴきは、いつもおなかがぺこぺこでした→いっぱい
ちいさなさかなをこまかくわけました→大きな
ひげのながいじいさんねこが、やってきましたもどってきました
11ぴきのねこは、いかだをつくりました→船を
みっかたちました→よっか
おおきなさかなだおばけだ
もっとからだをきたえよう武器をそろえよう
おひさまが、ぎらぎらかがやいています→きらきら
ねんねこさっしゃれのうたでした→ねんねんおころり
「ざんねんまたやられた。」「やっぱりだめだあ。」→こんどは、やっつけるぞ
だんだんいびきをかきはじめました目を覚ましはじめました
ほらがいのまくらをけとばしましたなげつけました
「それまではぜったいにたべないこと!」「さんせーい。」→はんたーい
よだれがでてくるのをがまんしていました→あくび
くもがでてきて、みずうみはまっくらやみになりました→がでてきて、みずうみは明るくなりました
11ぴきみんなみんなたぬきのおなか→風船のような

7 「読書へのアニマシオン」シリーズについて

「読書へのアニマシオン」はシリーズ記事です。
「読書へのアニマシオン」全体の説明や、他の作戦をこちらのページからご覧いただけます。

読書へのアニマシオン まとめのページ | EDUPEDIA

8 編集後記

今回の作戦は、1度読んだ本や物語を集中して聞かせ、児童の自発的な反応も促すことができるのではないかと思いました。更に、反意語や同意語、類義語といった言葉を無意識に出し入れできるようになることは、生徒の語彙のインプットに非常に有効であると感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安田明弘)

9 実践者プロフィール

倉光信一郎(くらみつしんいちろう)
鳥取県米子市立尚徳小学校校長。
モンセラット・サルト氏の著書『読書へのアニマシオン‐75の作戦』(柏書房)を元に実践を展開。
米子市と長岡京市で「勉強会」を開催。
要請があれば、児童生徒、保護者、教職員を対象にワークショップを行い、これまで数多くのワークショップを開催。
アニマシオンのエッセンスを伝えていらっしゃいます。

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