1 はじめに
本記事は現在鳥取県米子市立尚徳小学校の校長をされている倉光信一郎先生のホームページ「読書へのアニマシオン」より引用・加筆させて頂いたものです。
2 対象
小学校1・2年生
3 ねらい
物語の内容のおさらい、表現力の強化
4 教材
『注文の多い料理店』 宮沢賢治 著 新潮社 (1990)
5 実践内容
以下で登場するアニマドールとは、「読書へのアニマシオン」を行うときのリーダーで、子どもたちの持っている力をやさしく引き出してあげる人です。学校で授業を行う場合は、先生がアニマドールになります。
オリジナルの作戦
- 子どもたちの記憶を呼びおこすために、アニマドールは、登場人物がどんなことをしたかにふれながら、物語のいくつかのくだりを思い出させます。
- それから、厚紙の絵を1枚ずつ子どもたちに見せていきます。このときは、子どもたちが何も言わないようにさせます。
- 厚紙には、登場人物のだれかに関連した洋服や品物が、本のとおりではありませんが描いてあります。子どもたちがどの登場人物のものか推察したのを見はからって、アニマドールは1人に1枚ずつ絵〔素描〕を見せながら、それがだれのものか尋ねていきます。登場人物と物を1つ結びつけられるごとに、子どもたちは得点を1点獲得します。
- 最後に、何点とったかで、どのくらい注意深く読んだかがわかります。
書籍情報
『読書へのアニマシオン‐75の作戦』 M. M. サルト 著 柏書房 (2001)
倉光先生流の作戦
①~③は、ほぼ同じです。しかし、得点はありません。得点で競うことは、読書へのアニマシオンにそぐわないと思うからです。したがって、④は行いません。
6 教材のサンプル
「注文の多い料理店」の中で、物語で登場したものを3ターンに分けて、全部で約20の絵を用意しました。この作戦で私が用意した絵は、「言葉」を探させたり、「言葉」を手がかりに考えさせたりすることになり、かなり「国語科の授業」の色が濃くなりました。
①挿絵に載っているもの
〔しんしが身に付けていたもの〕
- ぼうし
- めがね
- オーバコート
- ながぐつ
〔レストランに置いてあるもの〕
- クリームの入ったつぼ
- こう水のびん
- 塩つぼ
- フォーク
- ナイフ
②教科書に言葉として出てくるけれど、挿絵としては示していないもの
〔しんしが身に付けていたもの〕
- てっぽう
- てっぽうのたま
- ネクタイピン
- カフス
- ボタン
- 眼鏡
- さいふ
〔レストランに置いてあるもの〕
- 長いえのついたブラシ
- 金庫
- かぎ
〔りょうしの身に付けていたもの〕
- みのぼうし(・てっぽう・てっぽうのたま)
③言葉としては出てこないもの
〔しんしが身に付けていたもの〕
- 時計(懐中時計)
- ナイフ(登山ナイフ)
〔レストランに置いてあるもの〕
- 水さし
- コック帽子
- フライがえし
※本文では、「金物類、ことにとがったもの」は、はずすように指示されます。「とけい」「ナイフ」は、言葉として本文に出てこなくても、これらは「金物類」に入りますし、「ナイフ」は、「とがったもの」です。このように直接の言葉ではなくても、推測でき根拠が示すことが出来れば、間違いではありません。
7 「読書へのアニマシオン」シリーズについて
「読書へのアニマシオン」はシリーズ記事です。
「読書へのアニマシオン」全体の説明や、他の作戦をこちらのページからご覧いただけます。
8 編集後記
今回の作戦は、ゲーム感覚で予め学習した内容を復習することができ、非常に有効な実践であると感じました。小学校低学年の児童が日本語の表現力の基礎を養う上でも効果があると思います。このような楽しい授業を通して、読書をより好きになってもらえればと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安田明弘)
9 実践者プロフィール
倉光信一郎(くらみつしんいちろう)
鳥取県米子市立尚徳小学校校長。
モンセラット・サルト氏の著書『読書へのアニマシオン‐75の作戦』(柏書房)を元に実践を展開。
米子市と長岡京市で「勉強会」を開催。
要請があれば、児童生徒、保護者、教職員を対象にワークショップを行い、これまで数多くのワークショップを開催。
アニマシオンのエッセンスを伝えていらっしゃいます。
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