1. はじめに
本記事は現在鳥取県米子市立尚徳小学校の校長をされている倉光信一郎先生のホームページ「読書へのアニマシオン」より引用・加筆させて頂いたものです。
2 2. 対象
小学校6年生
3. ねらい
質問を作り・選定する力を養う、チームで協力する
4. 教材
『風切る翼』 木村裕一、黒田征太郎 著 講談社 (2002)
5. 実践内容
以下で登場するアニマドールとは、『読書へのアニマシオン』を行うときのリーダーで、子どもたちの持っている力をやさしく引き出してあげる人です。学校で授業を行う場合は、先生がアニマドールになります。
オリジナルの作戦
① アニマシオンの数日前に、アニマドールは参加する子どもたちに、読んだ本の内容に関する質問を3つ作り、だれにも見せずに紙に書いてくるよう言っておきます。
② 当日、子どもたちが集まったら、同人数の2つのチームに分かれ、それぞれ発表係とチーム名を決めるように言います。
③ 次に、時間をとり、つくってきた質問をチーム内で見せ合って、どれを相手チームへの問題として使うかを決めてもらいます。アニマドールは、ここでは口をさしはさみません。
④ 15分から20分くらいして準備が終わったら、両チームは各1列に並び、向かい合って座ります。アニマドールは、審判役として、2つの列のあいだに立ちます。そして、次のように試合を始めます。
試合の流れ
1. まずAチームの1人が、Bチームの1人に問題を出します。Bチームの子が1人で正しく答えたら、Bチームが2点獲得します。答えられないときは、チームの仲間に助けを求めます。そうして、発表係が答えるか、答えられそうなメンバーを発表係が指名して答えてもらい、正しい場合1点獲得します。それでも答えられないと、0点となります。得点は、アニマドールが黒板に記録します。
2. ここで役割を交替して、先ほど回答者だったBチームの子が、出題者だったAチームの子に問題を出します。アニマドールは結果を黒板に書きます。このようにして、両チームの全員が出題と回答の両方をすませたら、1ラウンド終了です。
3. 人数や時間の関係で都合がつく場合、選んだ本から質問がたくさんつくれる場合、何ラウンドか行います。そうでなければ、1、2ラウンドで終わりにします。
4. 試合が終わったら、審判のアニマドールが各チームの得点を読みあげます。最終得点で、どちらのチームがよくその本を読みこなせたか、また、深い部分まで掘り下げて出題できたかがわかります。
書籍情報
『読書へのアニマシオン‐75の作戦』 M. M. サルト 著 柏書房 (2001)
倉光先生流の作戦
得点はつけなくてもよい。
私は、得点をつけるのはやめた方がいいと思います。理由は、問題に答えた人の答えが正解かどうかがよくわからない場合があるからです。子どもたちが作った問題ですから、本当は正解だと思う答えであっても「ちがう」と言うかもしれません。自分たちが考えた答え以外は正解にしないからです。国語の読解の授業ではないので、アニマドールが介入して解説して授業になってしまってはせっかくのアニマシオンがだいなしになってしまいます。点数をつければ、相手が答えにくい問題を作ろうとするわけで、そうなればなるほど正解かどうか分かりにくいものになるのが見えています。点数をつけることによってもめてしまうかもしれません。楽しい読書の活動でトラブルを起こして嫌な気持ちになるのだけは避けたいと思います。基本は、書いてあることで簡単に分かってしまう内容をクイズにするということです。それで楽しむのです。
6. クイズの問題例
- かたくなだったクルルの心が、少しずつ解けていく気がしたのは、なぜでしょう。
- 冬が近づいてくると、アネハヅルの群れが渡っていくところはどこですか?
- 飛べなかったクルルが、突然飛べるようになったのは、なぜですか?
- クルルは、なぜ言いかえさなかったのですか?
- 2羽のアネハヅルは、どこに向かって飛んでいったのでしょう?
7.「読書へのアニマシオン」シリーズについて
「読書へのアニマシオン」はシリーズ記事です。
「読書へのアニマシオン」全体の説明や、他の作戦をこちらのページからご覧いただけます。
8. 編集後記
本作戦では、教材が6年生の国語の教科書にあるため、6年生対象とさせていいただきました。教材を自由に変えていただくことによって、学年を超えても利用可能な実践ではないかと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安田明弘)
9. 実践者プロフィール
倉光信一郎(くらみつしんいちろう)
鳥取県米子市立尚徳小学校校長。
モンセラット・サルト氏の著書『読書へのアニマシオン‐75の作戦』(柏書房)を元に実践を展開。
米子市と長岡京市で「勉強会」を開催。
要請があれば、児童生徒、保護者、教職員を対象にワークショップを行い、これまで数多くのワークショップを開催。
アニマシオンのエッセンスを伝えていらっしゃいます。
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