ICTで底上げする計算力―学び合いと個別指導―(港区立青山小学校)

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目次

1 はじめに

本稿は平成25年6月21日に行われた、「港区立青山小学校研究報告会」における手嶋千春先生のICTを活用した授業実践である。
青山小学校のHPはこちらです。http://www1.r4.rosenet.jp/aoyama-ea/

2 授業の概要

本授業のキーワード

  • インタラクティブ(児童間のコミュニケーションの促進)
  • 個別指導(勉強の苦手な児童への支援)

目標

除数と商が1桁であるわり算の意味と計算方法を理解し、問題を解く事ができる。

活動のポイント

わり算の基礎・基本についてノートパソコンを用いて個々に学ぶとともに、問題の解き方についての情報交流を児童同士で行う。こうした活動によって、帰納的な思考や捉え方を身につける事が期待される。
本授業では特に、問題の意味が分からないとき、グループ内で互いに教え合って学習していく。

指導・支援

教師はタブレットを携帯し、そこに表示される児童の学習状況を把握する。それをもとに、わり算の演習が遅れている児童に対して教師はタブレットを携帯し、そこに表示される児童の学習状況を把握する。それをもとに、わり算の演習が遅れている児童に対して個別指導を行う。

3 授業の様子

本授業は、新しい概念を理解する全体授業ではなく、個々がパソコンに表示された様々な問題を解き進める演習型授業であった。

グループ作成と演習

児童はあらかじめ3人ないし4人のグループを作っておき、各自がパソコンにログインしてから授業が始まった。始業の挨拶の後、まず教師が授業の目標を黒板に提示する。それを児童が確認してから、各自が問題演習用のソフトウェアを起動させて問題に取り組んでいた。児童は黙々と演習をこなし、教師はタブレットに表示されている進行状況をもとに学習が遅れている児童に対応していた。
 
   

教え合いと学習まとめ

パソコンでの問題演習が終了した児童には、パソコンを閉じさせ、追加の問題プリントを与えていた。さらに、そのような児童には他の児童に対して「教えてあげる」ことを提案し、児童間コミュニケーションと学習内容の理解を促していた。パソコン学習を終えた児童が3割くらいに達したところで、教え合い活動が顕著に見られた。

授業終了10分前になると、教師は演習中の児童も含めた全児童にパソコンを閉じさせた。そして児童に今回学習した内容をノートにまとめてもらった後、挙手制を用いて3人ほどに発表をしてもらった。教師はその発表内容に触れながら、タブレットに表示されていた児童の正答傾向を解説し、課題点として提示した。(今回は文章題でつまずく児童が多かったようである。)

以上が本授業の流れである。

4 ICT教育の利用と授業の工夫

ICTのメリット

今回感じたICTのメリットは、常に教師が児童の進行状況を把握することができること、そしてデータ分析が可能であることだ。教師の持っていたタブレットには、児童名・得点・配点・正答率・終了までに要した時間が表形式で示されていた。さらに、児童名を参照すれば個人データが出てくる。そこには、より詳しい児童の演習結果が示されていた。

システムで管理された児童の各設問の結果・誤答パターンの分析・学習の進行チェックリストをタブレットで確認することによって、より的確な指導が可能になる。また、演習データは保存されるので、児童が次の学習を行う際には円滑に始める事ができる。そして青山小学校には電子黒板が標準装備されているので、授業の直後に電子黒板に成績を表示する事ができる。

こういった取り回しやすさもデータ化の長所であろう。教師にとっても、授業後に成績を確認することができるので、今後の指導を考える上で非常に役立つものになるであろう。

授業の工夫

本授業ではICTを一面的に用いるだけでなく、その効果を引き上げる工夫が見受けられた。

本授業はグループワークの側面もあり、児童4人ほどが机を合わせてグループを作成した上で演習に臨んでいた。一般的に、机を合わせて4人グループを作る際には、お互いの顔が向かい合うような形で机を並べるだろう。しかし、本授業では風車型のようにお互いの側面が見えるように机が配置されていた。このような机の配置により、少し首を伸ばせば友達の画面を見る事ができる。
 演習型の授業は個々の学習になりがちだ。 そこですべてを個々の学習で終わらせないために、友達同士の学び合いを取り入れた。そのため、机の配置を工夫して、グループ編成も子どもの性格・成績に偏りがないように組んである。


 

5 編集後記

本授業における「インタラクティブ」とは、児童が互いに教え合うことである。それによって、児童全体の理解度向上とコミュニケーション技術の成長が期待できる。そのためには、児童一人ひとりが「教える技能」と「教えられる技能」を身につけていく事が必要であると感じた。授業で教え合いが活発化する中、答えを直接教えてしまっている児童がいた。教師もそれに気づいて、「答えでなくヒントを教えてあげる」という指導を行っていた。質の高いインタラクティブな授業を展開するには、教え合いをするとはどういう事なのかを児童に対して継続的に示していくことが重要ではないか。
 教える側の児童には、

  • ヒントを提示すること
  • わからない友達の意見を聞くこと
  • わかりやすい伝え方を考えること

教わる側の児童には、

  • 教える側を考慮して質問を作成できること
  • 教えられた事に対してさらに質問していくこと

などが必要なこととして挙げられると思う。こういった事を授業を通して児童に伝えていくことで、よい授業を展開していくことができるのだろう。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 阿部由和)

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