板書の基本スキル「CHALK」(チョーク)の法則

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現在、千葉県の私立高校で教員をしている栗田正行と申します。
「教師力養成塾」の牛嶋孝輔先生のご紹介をいただき、初めて投稿させていただきます。

過去、小・中学生対象の学習塾での教室長として勤務していた経験や、早稲田アカデミー主催の「教師力養成塾」をはじめとする研修会やセミナー、その他多く書籍から得た知識をもとに、授業の基本スキルをまとめた本を8月上旬に出版させていただきました。

先生のための教育実用書は数多くありますが、本書は「先生のためのビジネス書」として、生まれました。

本書の中から、特に反響の大きかった板書についての基本スキルを書かせていただきます。

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私がいつも意識しているのは、板書の基本となる「CHALK」の法則です。
5つのポイントを、黒板を書くときに使うチョークになぞらえて「CHALK」という形でまとめてみました。

  • Color(色)
  • Headline(見出し)
  • Account(説明)
  • Look back(振り返って見る)
  • Kindness(親切心・優しさ)

Color(色)

チョークの目立つ色の順位は、
第1位 黄色
第2位 白色 
第3位 赤色

となります。

第1位が黄色の理由として、黒と黄色を合わせた色は警戒色と呼ばれ、人間の注目を集めます。この色の組み合わせが踏切や工事現場の表示など、注目を集めたい・注意を喚起したい場所に、よく使われているのは皆さんもご存知でしょう。だからこそ、黒板に黄色は特に目立つのです。私はこれを「踏切効果」と呼んでいます。

Headline(見出し)

  1. ヘッダー…学習内容・学習している箇所を提示する役割を持つもの
  2. チェックポイント…学習内容の重要度を表すもの
  3. プラスポイント…学習内容の理解を補填するもの

①ヘッダーというのは、教科書やテキストのページ数・タイトル・単元名、プリントを使用しているのであればプリント名やプリントナンバーを書くことです。もちろん、問題を説明する場合は問題番号も忘れてはいけません。これでどこを学習しているかは明白になります。
付け加えると、表記の仕方も統一したほうが生徒は書きやすいでしょう。あるときは「P.4」と書き、あるときは「4ページ」と書く。細かいことですが、これでは生徒は戸惑ってしまいます。気づかない生徒は気づきませんが、このような配慮ができる先生は「わかりやすい先生」という称号を得ることができるのです。

次に、②チェックポイントについてです。これは私の板書構成の特徴の一つです。重要な用語や公式が出てきた場合、【重要】という見出しをつけます。また、問題の解法をスモールステップに分けたものや、必ずおさえたい内容は【ポイント】という見出しをつけてまとめます。前述の板書の色使い同様、これらのことは年度の最初に生徒に説明しておきます。そうすることで、板書や生徒ノートのフォーマットを整理することができます。
このチェックポイントを書く大きな目的は、授業内容にいかに付加価値をつけるかということに尽きます。

③プラスポイントとは、板書内容に対する追記のようなものです。後でノートを見直す際に理解の手助けとなるような内容です。私は、それらのことをマンガで用いる吹き出しの中に書き込み、「必要な人は記入しておこう」と生徒には伝えています。このように形を決めて追記することも、ある意味「見出し」だと思います。それを見て、どういう意味かがすぐわかるものすべてがここでいう「見出し」なのです。

Account(説明する)

あなたの授業スタイルはそのままで、生徒の授業に対する印象を抜群に上げるたった一つの習慣をお伝えします。それはずばり「説明」です。

ここでいう「説明」とは、授業の学習内容についての説明ではありません。授業内容の説明については、学校の種類や学年、教科・科目でそれぞれ異なるポイントがあります。ここで話題にするのは、板書そのものについての「説明」です。これは学校の種類や学年に関係なく、効果的で即実践できる内容です。

①チョークやホワイトボードマーカーの色使い

自分の授業ではどういう基準でどの色を用いているかということを、先生側が認識しているだけではなく、生徒にその理由を含めて伝えることが重要だということは前述した通りです。

「チョークの黄色が一番目立つ色だから、一番重要な部分で使うよ」

と伝えることではじめて、生徒が授業中に黄色で書かれている部分に注目することができます。これは先生に言われて初めて認識することです。

大切なことなので繰り返しますが、これらのことは生徒が「言わなくてもわかる」のではなく、「言っておくからこそわかる」のです。この認識をこれ以降の内容についてもしっかり把握するようにしてください。

②板書におけるスペースの取り方(空白)

授業中、先生が黒板の空いたスペースに思いつきでどんどん文字を埋め込んでいき、生徒であるあなたは「ノートにはそんなの書くスペースがないよ~!」と心の悲鳴を上げる。学生時代、こんな経験はありませんか(私はあります)。
こうならないために意識してほしいこと、それが板書におけるスペース(空白)の取り方の説明です。
たとえば、私は板書を後ほど書き加える際には、

「後で書き加えることがあるから、ここを二行ほど空けておいて!」

とあらかじめ生徒に指示を出します。

③ノートへの写し方

最後は、ノートへの写し方についてです。ここはこだわっている生徒はこだわっているので、ぜひおさえておきたい内容です。具体的には、板書を写す前に必要な注意事項を伝えるということです。たとえば、

「後からいろいろと書き込むので、図は大きめに描こう」

「ここはノートを二分割して、左に計算過程、右にポイントを書きます」

「あとでプリント貼るページを1ページ空けておこう」

といった内容のことを、あらかじめ伝えるということです。ここでもノートをとる生徒側の立場になって考えて配慮するということが重要になってきます。

これらの①~③の内容を実践するために必要不可欠になるのは、何より計画的な板書計画です。先生の思いつきの板書なのか、しっかり練られている板書なのかどうかを、生徒は感覚的に認識します。そんなことを気にしている生徒は少ないと思うかもしれませんが、見ている生徒は見ているものです。

Look back(振り返って見る)

様々なビジネス書や思考法の本にも書いてあることですが、全体を見渡すことを「俯瞰(ふかん)する」といいます。別の表現の仕方で鳥瞰(ちょうかん)ともいいます。まさに、読んで字のごとく、鳥のような視点という意味ですね。

教室後方から板書を「俯瞰する」ことが大切だとわかったところで、特に私が注意して見ていることを挙げておきます。
◆板書の全体のバランス
◆線や枠などが曲がっていないか
◆字の大きさや色使いが見やすいか、どうか

Kindness(親切心・優しさ)

5つ目の基本スキル、それは「親切心・優しさ」です。板書における「親切心・優しさ」とは何でしょうか。今まで説明した内容の中にも随所に盛り込んである内容なのですが、大事な考え方なので、あらためて説明します。これは、授業を受ける生徒の立場になって指示や確認をするということです。学習塾での研修時に、私がよく指導された内容でもあります。前述している内容以外には、次のたった2つです。
①板書を消してよいかの確認
②板書が見えるかどうかの確認

「たったこれだけ?」と思われる方がいるかもしれません。しかし、これらのたった2つのことを実践しているだけで、生徒からは気遣いのある先生だと思われるのです。
これは、自分が授業を受けてきた先生方を思い出してみてください。私だけなのかもしれませんが、このような確認をしている先生はほとんどいなかったように記憶しています。だからこそ、この二つの確認が生徒に好印象を与えるのです。

①板書を消してよいかの確認
ここで挙げることもなく、多くの先生方が当たり前のようにされているかもしれません。
しかし、これは生徒の立場になれば大切なことです。私は自分自身が研修会やセミナーなどを受講したとき、このことを深く実感しました。講師の板書内容を一生懸命書いているとき、何の前触れもなく、さっと板書内容を消されてしまったときの喪失感は何とも言い難いものです。次の板書内容を写そうという意欲すら奪いかねません(そんな経験、ありませんか)。

生徒には同じような経験をさせてはいけません。どうしても板書を写すのが遅い生徒がいる場合、あらかじめ把握しておき、その生徒にさりげなく確認したり、様子を見たりするとスムーズに授業を進められるでしょう。

②板書が見えるかどうかの確認
次の2つのパターンがあります。

まず1つ目のパターンは、授業の冒頭でページ数やタイトルを書いた段階で、一番後ろの生徒に「この字の大きさで見えますか?」と聞くパターンです。
これは、授業の冒頭で聞くことに意味があります。少し考えれば明らかですが、板書がよく見えないまま授業をやっておいて、途中で「見える?」と聞いても意味がありませんよね(聞かないよりはましかもしれませんが)。

もう1つのパターンは、左隅に書いた板書を、座席が一番右前に座っている生徒に「見える?」と聞くパターンです。ここで大切なのは、

逆サイドの一番前生徒は板書が見づらい

ということを認識することです。その認識をもとに声がけをします。言われてみれば、当たり前のことかしれません。しかし、ここでのポイントも生徒の立場になって考えることが根本にありますこのようにして、生徒に確認した際に、「見えない」という返事が返ってくるのであれば、板書の構成自体を改善する必要があるのです。

ここで大事なこと。それは、このような声がけを行うこと自体が、生徒に対しての気遣いになるということです。信頼関係においては、

「小さなことが大きなこと」

です。つまり、日頃の小さな積み重ねが大きな信頼を生むのです。

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これ以外にも、「発問や指示」の方法、わかりやすい「話し方」のエッセンスを図書館のお話会やセミナー講師などから、より実践的にまとめています。
主に、小・中学校の子どもたちの心をつかむ授業を行うために最適の1冊となっています。

勉強熱心な先生方の一助となれば幸いです。
よろしければ、ご一読くださいませ。

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コメント一覧 (1件)

  • 学校での指導経験をもとに、生徒にとってより良い指導のあり方を日々探求している栗田先生の実践からは学べることが多くあります。

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