防災一斉体験学習実践マニュアル

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

 この記事は都立高校教育支援事業、科目「奉仕」内の防災体験学習実践マニュアルを部分的に転載させていただいたものです。高校の実践ではありますが、小学校や中学校においても通ずる考えが記載されていることと思います。なおマニュアル内における事後学習、及び体験学習プログラムにつきましては別途関連記事を掲載しておりますので、是非ご覧下さい。また、東京都教育庁発行「みんなの生涯学習」にも参考記事が掲載されておりますので、併せてご覧ください。
http://edupedia.jp/entries/show/1314(事後学習記事)
→(防災一斉体験学習プログラム集)…近日掲載予定
http://www.syougai.metro.tokyo.jp/image/mishou10806-07.pdf(みんなの生涯学習)

2 1.「奉仕」における防災体験学習の位置づけ

なぜ、防災体験学習なのか?

 科目「奉仕」内で防災体験学習を行うにあたり、下記のような位置づけで実施します。

(1)意識・知識・行動のバランス

 「奉仕」と「防災」には意識の段階、知識の段階、行動の段階それぞれでバランスよく学習することが必要という共通点があります。「なぜそれが必要なのか」を認識する意識の段階、「どうやってすればいいのか」という知識の段階、そして実際に作業する行動の段階です。「奉仕」と「防災」 はいずれも具体的なイメージが生徒からも掴みにくく、またその意義がしっかりと伝わらなければならないという点に注意する必要があります。
 奉仕における防災体験学習では、「奉仕」を広く「地域・社会貢献」として捉え、生徒が高校で防災について学ぶこと、その結果災害による被害の予防や、応急対応に協力することが「地域・社会」に大きく貢献できるということを、具体的に例示しながら学習させます。

ポイント

 地域・社会貢献の中で、高校(高校生)の防災はどのように位置づけられるのか。
① 発災直後は、生徒・教職員の安心安全を速やかに確保する必要がある。
②  都が指定する帰宅困難者支援ステーションとしての役割がある。
③ 救助救出、避難支援等で地域住民(要援護者等含む)から若い力が期待されている。

(2)自発的な取り組みへの一助として

 本体験学習は「外部の全面的な協力による特殊な事例」ではありません。専門的な知識・技能を持った関係機関やボランティアだけで生徒を指導することは、一時的な学習効果は認められますが、”高校生が地域防災に貢献する”ための課題を解決することにはつながりません。
 生徒自身、自分たちが直面している災害時の困難な問題を正面から見据え、時に先生の力も借りながら、解決に取り組む姿勢を持つようになることが理想的な到達点です。また、問題(災害時にどのような被害が起きて、どのような対応が必要か)を具体的にイメージすることのできる『災害想像能力』も大変重要で、この点に気づかせることも大きなポイントになります。関係機関だけでなく、教職員の皆さまにもご協力いただきながら、継続していくことのできるプログラムとして作り上げていきたいと考えています。

3 2.体験学習デザイン

体験学習の全体像とビジョンを描く

 細かなプログラムに入る前に、体験学習の全体像を説明します。

プロセス・デザイン

 プロセス・デザインは、体験学習の流れを整理したものです。

現状把握:本年度は初年度の取り組みでもあるため、過去に他校で実践したプログラムを応用しつつ、かつ現在の状況に見合った内容で検討します。

企画立案:場所、時間、指導者等の制約条件を鑑み、学習プログラムを企画立案します。関係機関との調整を行います。

事前講習:生徒を対象とした自然災害、都立高校や高校生の役割、地域・社会貢献、ボランティア等について事前講習を行います。

体験学習:複数(クラス数や時数により変更)のブースにより体験的に理解します。

事後学習:被災後の状況を時系列で考えるワークシートによる事後学習を行います。

4 3.プログラム

事前学習

目的:体験学習全体の流れをイメージできるようにする

根拠:災害時に想定される、状況 に即した体験学習であることを事前に伝えるため

設営:会議室(教員)、大教室(生徒)

物品:スクリーン・プロジェクター・ノートパソコン

担当:指導員1名(ボランティア)

方法:□パワーポイントによる座学説明
   □動画等による、防災・避難所等についての説明
   □防災体験学習の流れ
   □事後学習の方法

体験学習プログラム(1学年6クラス、3時間の場合)

 体験学習プログラムは、クラス数や時数によって自由に組み替えることができます。組み替えで活用できるプログラム集は別記事(近日公開予定)もご覧ください。

■応急救助・救出体験

目的:近隣地域の負傷者救護等について、高校生が協力できることを理解する。
根拠:大規模災害における応急救助・救出には若い力が必要となるため。
物品:人形・机・イス・木材・ジャッキ・バール・ブルーシート等
設営:体育館 ※床面を傷つけないようブルーシート等を敷いて実施する
担当:消防署、消防団に指導協力を依頼する。
方法:□負傷者(人形)の安全を確保しながら、バール・ジャッキ等で救出する
   □机・イス・木材等は人力では持ち上げられないという想定の元で行う
   □クラスから希望者数名のグループで行い時間があれば数グループ行う
指導:◆応急救助の必要性についての指導をお願いします。
   ◆可能な範囲で結構ですので、なるべく多くの生徒に体験をお願いします。
   ◆資器材の安全な取り扱いについて指導をお願いします。
確認:(1)負傷者の安全に十分配慮しているか。
    < Y・該当なし・N >
   (2)グループ内で協力し、声をかけあって救助作業を行っているか。
    < Y・該当なし・N >

■三角巾を用いた応急手当体験

目標:負傷者に対して、積極的な声かけと応急手当が行えるようになる。
根拠:生徒による率先した応急手当が傷病者のいち早い苦痛の軽減につながるため。
物品:三角巾、その他消防からの指示による。
設営:体育館、オープンスペース、武道場等
担当:消防署に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から、三角巾による応急手当の必要性を説明します。
   □三角巾を配置し、展示・体験による負傷者に対する応急手当を体験します。
   □2人~3人1組(男女別)を原則としますが、三角巾の枚数により多少前後します。
指導:◆三角巾による適切な患部の保護、被服、固定等を指導します。
   ◆三角巾処置の最中は傷病者役の患部を意識して、声をかけるなどの配慮もできるよう、指導します。
   ◆三角巾は衛生を保つため、床に広げたり、丸めたりせずきれに扱うことを心がけるよう、指導します。
確認:(1)三角巾による応急手当の必要性を理解できているか。
     < Y・該当なし・N >
   (2)三角巾による適切な応急手当ができているか。
     < Y・該当なし・N >

■傷病者搬送体験

目標:多数の傷病者や火災発生に伴う、緊急搬送の必要性を理解する。
根拠:傷病者が多い場合、教職員だけでは対応できない場合、生徒の協力も必要。
物品:担架、毛布、その他消防からの指示による。
設営:体育館、オープンスペース、武道場等
担当:消防署に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から、担架搬送の方法について展示説明を行います。
   □数人1組程度で、実際に生徒を担架へ乗せ、上げ下げ及び数歩の移動を体験
指導:◆ふざけて落下させたりしないよう、十分に注意してください。
   ◆出来るだけ多くの人で運ぶよう指導してください。
   ◆可能であれば、徒手搬送(引き摺る)についても展示・指導してください。
確認:(1)指導員の説明を聞き、傷病者搬送の必要性を理解したか。
      < Y・該当なし・N>
   (2)適切な方法、姿勢で搬送法を行っているか。
      < Y・該当なし・N>

■避難所開設体験

目的:学校が避難所となることを理解し、避難生活での体調管理ができるようになる。
根拠:帰宅困難や自宅の被害で体育館や教室に寝泊りを余儀なくされることもある
物品:体育用マット、ダンボール、毛布、ブルーシート等
設営:体育館等 物品を指定エリアに配置します。
担当:防災課等に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から避難所で想定される睡眠、プライバシーについて説明します。
   □マットや毛布、その他その場にある資材を使って、自分たちで寝るスペースや
着替えスペースを考えてもらいます。
   □全員、一度はマット等の上で寝てもらいます(床の固さ、寒さの体験)。 
指導:◆睡眠はとても大切ですが、体育館や教室では難しいことを伝えてください。
   ◆外部から避難者を無条件で受け入れた場合、プライバシーや安全の確保が難しいことも伝えてください。安易に教室を施錠することはできません(非常の際の対応や、勝手な教室利用を避けるため)。
   ◆少ない資材でも、工夫をする(床側を断熱する、毛布等は隙間をなくす、新聞紙を衣服や毛布の間に詰める等)ことで暖をとれることも伝えてください。
確認:(1)避難所の特徴、避難生活の厳しさ等について正しく理解できているか。
     < Y・該当なし・N >
   (2)体育館等での就寝体験に、限られた資材でも取り組むことができているか。
    < Y・該当なし・N >

■災害時のトイレについての体験学習

目標:災害時におけるトイレの大切さ、体調管理の重要性がわかる。
根拠:被災後の健康維持のため、トイレ・排泄について正しい理解が必要であるため。
物品:緊急トイレ(携帯型トイレ)、プロジェクター・スクリーン
設営:体育館、オープンスペース、武道場、AV教室等
担当:防災課、またはNPO法人日本トイレ研究所(03-6809-1308)に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から災害時のトイレについて説明します。
   □簡単な展示・体験等で災害時のトイレについて指導します。
指導:◆災害時のトイレの必要性、体調管理の重要性についての指導をお願いします。
   ◆複数人で協力して作業することの大切さについての指導をお願いします。
確認:(1)災害時におけるトイレの重要性について理解できているか。
     < Y・該当なし・N >
   (2)健康維持との関係、よりよいトイレ環境について具体的にイメージできるか。
     < Y・該当なし・N >

■非常食づくり、試食体験

目標:ストレスでなくなる食欲をカバーできる、おいしい非常食について理解する。
根拠:食事を取る行為がリラックスにつながるため、食事の大切さを伝える必要がある。
物品:各種非常食、はし・皿・手指消毒液 等(分量は随時調整します)、ポット2台
設営:①1クラスにつき必要量のお湯を用意します。※ポット1台程度
   ②1クラス1セットになっている非常食を取り出し、作ります。
   ③前のクラスが次のクラスの非常食を作り、自分たちで配食・試食します。
  (複数のクラスで実施する場合は①~③のローテーションで実施してください)
担当:教員等で指導可能、防災課・自主防災会等に指導協力を依頼する。
方法:□希望者に「配食」「非常食作り」等を依頼し、残りは展示内容の見学、試食
   □非常食の中にスプーンが入っていますので、それを使って取り分けます    □作られた非常食は可能な限り、食べきってください。また紙コップ等は可燃物、その他のものは不燃物など、分別を徹底してください。
指導:◆災害時でも、しっかり食事をとることの大切さを伝えてください。
   ◆いろいろな種類があること、おいしいものもあることを伝えてください。
確認:(1)非常食を正しい手順で安全に作ることができるか。
      < Y・該当なし・N>
   (2)限られた量を適切に配分することができるか。
      < Y・該当なし・N>

事後学習

目的:防災体験学習を振り返り、災害想像能力を高める。

根拠:災害時に自発的に行動できるようになるために、次の事態を想像する力が必要。

設営:教室

物品:専用ワークシート(説明用紙を含む)

担当:教員

方法:□ワークシートにより感想文等と合わせて行う 。

より詳細な実践はこちらに記載しております。
http://edupedia.jp/entries/show/1314

5 4.推奨する準備品

○机 × 7~10脚( 各ブース1,予備程度)
○イス × 14脚( 各ブース2程度)
○木材 × 適量(応急救助体験用)
○毛布 × 数枚(傷病者搬送体験用
○ブルーシート × 数枚(応急救助体験用)
○体育用マット × 数枚(応急救助体験、避難所設営体験用)
○ポット(温水状態)× 2台以上(非常食試食)
○ゴミ袋 × 適宜(非常食試食、分別が必要な場合は必要数)
○電源(コンセント)、可能であれば延長コード等

6 5.体験学習実施レイアウト(体育館のみで実施する場合の例)

・アルファベット順に体験ブースを移動していく。20分前後で体験を指導し、5分でまとめと移動。全体の進行は教員が管理する。
・D避難所学習はプロジェクター、PC用の電源、G非常食体験はポット用の電源が必要。
・全体の進行・時間管理、ブース間の誘導指示は教員が行う。

7 6.スケジュール例

 ~前年度までに
  ・実施時期を検討する(10月~3月の秋期・冬季が実施環境としては良い)。
  ・時程、他学年や担当教職員との調整を行う。

 ~3ヶ月前までに
  ・管理職、担当職員らに対して企画提案し許可を得る。
  ・防災課、消防署、社会福祉協議会、外部講師等に連絡をとる。

 ~1ヶ月前までに
  ・当日の詳細なタイムテーブルを作成する。

 ~前日までに
  ・資機材の搬入、搬出について確認しておく。
  ・外部講師、指導員の到着時間等について確認しておく。

 ~当日
  ・消防署は緊急出動の可能性があることを考慮しておく。
   (担当教員への説明等をしっかりと行っておく)

 ~事後
  ・事後学習や振り返りで体験の学習成果を確認する。

8 資料提供

災害救援ボランティア推進委員会
http://www.saigai.or.jp/

9 編集後記

 高校の防災実践を今回紹介させていただいた。内容を見ると小学校で行うには難しいものもあるが、アレンジ次第では使えるものもあると信じている。地震災害の多い日本では防災教育は必須である。子どもたちに教えるのはもちろんのこと、大人たちも一緒に学んでいく姿勢が必要になってくるのではないだろうか。(文責:EDUPEDIA編集部 細木和樹)

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