学力の基礎を作る音読(鈴木夏來先生)

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作成者: 鈴木夏來さん

1 【実践概要】

この記事では、徹底反復研究会の年末合宿勉強会で鈴木夏來先生が講演された内容をご紹介致します。

平安時代の有名な僧侶である空海をご存知でしょうか。空海は、音読を繰り返し行った歴史人物です。彼は、見聞きしたことすべてを一度で暗記・暗唱できるという特技を持っていました。お経を100万遍暗唱したために、卓越した記憶力が身に付いたと言われています。この音読を繰り返し行うことが記憶力、集中力の向上に密接に関わってきます。音読の習慣がついていた鈴木先生の学級では中島敦の『名人伝』を一度読んだだけで、作品の一節を暗唱できるようになった児童もいました。そこで、この記事では暗唱を目標にした音読の反復学習を紹介していきます。

2 【実践内容】

■素読 声に出すことそのものが目的

「意味の分からないものを子どもに読ませるべきではない」という考えがあります。しかし、それはここ数十年の考えに過ぎません。昔の日本人は、素読(そどく)と言って、意味が分からなくても良いから、声に出して読むことを重んじてきました。平家物語、論語、枕草子などの名文を声に出して読んでみましょう。その音の響きやリズムそのものに、楽しさや感動があるはずです。意味が分からないからこそ、何遍も繰り返し読む。より深い意味に触れられるまで、繰り返し読みたいものです。

■まずはかたちから。正しい姿勢と、お口の体操

私は音読の前に、必ず正しい姿勢づくりを行っています。菱木秀雄「腰骨の詩」がおすすめです。唱えながら、一人ひとりの姿勢を確認していきましょう。次いで、新井竹子の「あいうえお」や、北原白秋の「五十音」で口の開きを確認していきます。準備体操のようなものです。

■机の上にモノを置かないのはなぜか?

音読の際、教科書や音読教材以外のものは机の中にしまいましょう。筆箱や国語ノートなども不要です。なぜ、しまわせるのでしょうか。それは、子どもの脳内メモリを、音読教材に一点集中させるためです。たとえばパソコンでワープロソフトを使用している際に、動画作成ソフトやホームページが立ち上がっていたりすると、文字入力のスピードが遅くなることがあります。それと理屈は一緒。音読という一つのソフトだけ立ち上げれば、そのぶん子どもの処理も速くなります。小さなことですが、効果は抜群。音読のスピードが上がり、暗唱もたやすくなるはずです。

■教材を両手で持つことのメリット

教科書や音読教材は、必ず両手で持ちましょう。両手で立てて持つことで、正しい姿勢を保つことができます。片手ですと、教材がぐらついてしまったり、もう一方の手で手遊びをするなどしたりと、集中が途切れる恐れがあります。また、教材を下に置くと猫背になり、声の向かう先が机になってしまいます。両手持ちは、これらを防ぐことにつながっているのです。なお、次のページに指を挟んでおくと、サッとめくることができます。子どもにもそれを教えましょう。

■暗唱できているならば、後ろに組ませよ

もし教材をすでに覚えているのならば、手を後ろに組ませるのはいかがでしょうか。両手が空くと、必ずと言って良いほど手遊びを始めます。指先は「第二の脳」ですから、自由にさせるのは危険。後ろで組めば、手遊びを封じることができます。腰骨も伸びますから、一石二鳥です。


■くりかえしのコツ

音読教材について、繰り返し読むことは大切です。しかし、繰り返し方についてもコツがあります。一日に同じ教材ばかり何遍も音読しないということです。

月曜日はAの教材を繰り返し読み、火曜日はBの教材、水曜日はC…と読んではいけません。子どもはすぐ飽きてしまい、スピード感や集中力に欠けてしまうからです。

一日に数多くの教材を音読し、それを繰り返すことを心がけてみましょう。一日に同教材を繰り返し読むよりも、月曜日にABCDEFGHIJ…、火曜日もABCDEFGHIJ…と、広く浅く繰り返し読んでいったほうが、音読の効果があります。納豆を一日に十パック食べるよりも、毎日一パックずつ十日続けて食べたほうが体に良いのと一緒です。

■未習の音読教材への向かい方

水曜日、未知の音読教材Kを読ませたいとします。その場合、ABCDEFGHIJKKKと、A~Jは一回ずつ読み、Kは三回ほど読ませると良いでしょう。Kは、初めてですから、ややゆっくり丁寧に。さらに木曜日にはABCDEFGHIJKLLLと未知の教材Lを二、三度ほど読ませます。既習教材は猛スピードで一回ずつ、未習教材は、ややゆっくりていねいに二、三度。そうやって、どんどん読む数を増やしていくのがコツです。

■「速い」は「ゆっくり」を包括する

たっぷりと気持ちを込めて読む「感情読み」は、スラスラと淀みなく読めるようになった後で行いましょう。速く読める人はゆっくり読むこともできますが、逆はありません。鯨や鮫は、速く泳ぐこともゆったりと泳ぐことも可能です。速く読める力があるからこそ、余裕を持って、情感を込めた読みもできるのではないでしょうか。

■教科書の音読 前倒し

教科書の物語教材や説明文教材についても、読解に入る前に、「読み先習」を行いましょう。毎時間の国語のなかで。授業で、最初の十分くらいを音読の時間に充てるのです。今学習している単元の三つも四つも先の教材を読んで練習しておきます。読解の時には、すらすら読めているので、より深い文章の解釈が可能です。

■漢字のルビは、左側に

音読教材には、目線の流れに沿って、漢字のルビを左側にふります。このルビの振り方は野口芳宏氏の実践を参考にしました。まず漢字に目が行き、次いでルビを見る仕組みです。繰り返し読むうち、ルビを見ずにも読めるようになります。ルビが右にあると、いつまで経っても漢字を読もうとしません。なお、横書きの場合、同様の理由で漢字の下にルビをふりましょう。

■ルビは、灰色で薄く印字を

ルビは漢字よりも薄く、目立たない灰色などで印字すると漢字とルビが干渉し合う心配がありません。これはLD児(※)のような配慮を要する児童に特に効果的です。なお、漢字が読めるようになればルビはほとんど目に入らなくなるでしょう。低学年児童や保護者からも読みやすいと評判です。

※LD(学習障害)・・・全般的な知的発達には遅れはないが、読み、書き、計算などの能力に障害が見られることである。原因は脳の神経の問題だと言われており、親や本人が原因ではない。

記事の下部にございます学習障害、LDのタグをクリックしていただくと関連記事が検索されます。また、下記のURLは学習障害の児童の計算を支援する記事の一例になります。
http://edupedia.jp/entries/show/883
『学習障害(計算)を支援する取り組み~位を揃えること~』

■散文は、メールのように改行せよ

散文は、読みやすく見やすいところで適宜改行しましょう。それだけで難易度が下がります。読むスピードもアップし、暗唱もしやすくなるでしょう。細かいことかもしれませんが、こうした小さな配慮が大きな成果を生み出します。


■オリジナル音読教材「よみまるくん」

前述の鈴木先生の工夫が凝らされている教材を下記のリンクからダウンロードすることができます。有名詩文を選び、読みやすく覚えやすいように編集しています。また、著作権の残っている作品は掲載されておりません。ファイルをダウンロード後に印刷等をして、ご使用ください。先生のご配慮でインクジェットプリンタ、トナープリンタのいずれの両面印刷にも耐えられるように、ふりがなの太さや濃度を調整してあります。
添付ファイル

(留意点)
随所に調整ページがあります。
省略して印刷すると、見開きで使用するページが狂ってしまうため、あえて入れてあります。

3 【編集後記】

国語の授業で行う音読は、一人ずつ当てられた箇所を読んでいくことが多いと思います。朝のHR前に音読の時間を設けて、みんなで音読する事自体が子どもたちには楽しくなってくるのではないかと思います。音読を楽しみながら、集中して行うことで一日の小学校の学習リズムができてくるのではないでしょうか。EDUPEDIAの実践記事で鈴木先生のモジュール授業を紹介させていただいておりますので、ぜひご覧下さい。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

4 【講師プロフィール】

鈴木夏來先生

神奈川県内教育委員会教育研究所指導主事。徹底反復研究会に所属し、NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)教員事務局スタッフとしても活動されている。

NHK「おはよう日本」や朝日新聞など、マスコミにも多く取り上げられ、『小学教育技術』『総合教育技術』『ドラゼミ』などにおいて原稿執筆なども行なっている。長沼武志氏と共に、「楽曲カルタ」「俳句カルタ」「暗記カード」など多数の手作り教材を発明された。

鈴木夏來先生のその他の実践はこちら▽
http://bit.ly/YiMqrT

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