「京都国語の会」シリーズ 「書くこと」が分かる・「書くこと」で分かる (達富洋二先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、2013年8月3日に京都教育大学附属京都小中学校で行われた「京都国語の会 夏の研究会」のなかでの、達富洋二先生の講演をまとめたものです。
作文には正誤などありません。二人の先生の指導例を挙げながら、児童一人ひとりの感性を尊重し、書く力をつけさせるヒントを紹介していきます。

国語に必要な3つの力はなにか

①言語的に考える力 …正解が一つしかないもの選ぶ。

②文脈的に考える力 …明記されていない内容から正解を絞り込む。文脈から予想する。

③主体的に関与する力…正解がないもの。好きな場面を選ばせるなど。
          ⇒ どの子どもの発言も認める。

作文は、③の主体的に関与する力を育てます。指導者は、子どもに書かせるだけでなく、書いたものを“しっかり見る”、“読んで読んで、読み込む”ことが大切です。

2 作品例と指導(水上美佐雄先生、中原郁恵先生の指導例)

講演会で用いた資料集には、大人には表現できない、子どもの素直な感性、感動がそのまま生きている短文が並んでいました。方言や訛りをそのまま残した会話文には温かみが伝わってきます。
水上美佐雄先生は、達富先生にこうおっしゃったそうです。
「朝、教室へ入るとね、オルガンの上にノートが積み上げられているんですよ。もちろん子どもが書いてきたものです。このノートをどこのだれよりもいちばん先に読めるなんて、最高の贅沢ではありませんか」
中原郁恵先生は子どもたちのノートに目を通されたあとで、クラスのみんなと腰(低学年なので、肩ではなく、腰)を並べ、声を出して読まれたとのことでした。
  
=== 同世代の作品から学ばせたい
最近は、県や市、区などの単位で以前行っていたような作文コンクールや読書感想文コンクールがほとんど見当たらなくなったので、入賞作品集を手に取って読んでみることもできなくなりました。
同じ学年や近い学年の児童の書いた文章に触れる時間や空間などがあれば、自分が作文や感想文などを書くときの参考にできるので、「書く」力を磨くことに結びつくのではないでしょうか。

また、IRE構造{ 教室のようなところでのみ行われる会話=I(initiative または instruction 主導、指示)、R(response 答え)、E(evaluation 評価)は、答えを知っている教員が、答えを知らない子どもたちに問いかけ、その答えを評価する }は、作文指導をするうえで成り立ちません。
子どもたち一人ひとりへの個別対応が、ほかの国語学習とは違って作文の場合には特に必要ですと話しておられました。

編集後記

指導者が子どもたちの作品とどう向き合うか、どう取り上げていくかで、子どもたちのモチベーションも変わっていくのでしょうか。子どもたちにとって「書く」ことが楽しみになれば、きっと素晴らしい作品がたくさん生まれることと思います。先生方の今後のご指導に生かしていただければ幸いです。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 丸山明美)

講師のプロフィール

達富 洋二先生 
佐賀大学教授。

著書に『国語授業の新常識「読むこと」低学年編—授業モデル&ワークシート』(共著)明治図書出版

『同 −中学年編、高学年編』(共著)明治図書出版

『国語教育の新常識—これだけは教えたい国語力』 (共著)明治図書出版

 などがある。

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