1 はじめに
この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させていただいたものです。
坂本哲彦先生のホームページはこちらです。→ http://sakamoto.cside.com/
2 授業のねらい
熊がささやいたことを話し合う中で、友達として大切なことを知り、友達と互いに助け合おうとする態度を養う。
3 対象学年
小学校3年生、小学校4年生
4 学習内容
友達として行うべきこと(友達のよさ)
- 困っている友達を助けること(困っているときこそ助け合えること)
- 自分だけ楽をしないこと(一緒に楽しんだり苦しんだりすること)
自分の生活について振り返って考えること
- これまで、これからの生活(自分なりの友達観、友達観の捉え直し)
- 友達を大切にしようとする気持ちの高まり(友達を大切にしたいという気持ちと、なかなかできない自分の気付き)
5 参考資料
『いそっぷ童話集』 文:いわきたかし 画:ほてはまたかし
童話屋 2004年8月
「熊が教えてくれたこと」
二人の男が旅に出て、道を歩いているときに熊に出会った。一人の男は、道端の木に素早くよじ登り葉の中に隠れたが、もう一人は、地面にばったり倒れて死んだふりをした。
熊は倒れている男をくんくんかぎ回ったあげく、生きているのか死んでいるのか確かめようと男の顔に耳を寄せた。
木の上の男は、恐ろしさのあまり、震えているばかり。大声を出して熊を脅かすことも、木の枝を投げて熊を追いはらうこともできなかった。
熊は、倒れている男の耳に、何事かささやくと、おとなしくどこかへ行ってしまった。
熊がいなくなったのを見届けて、木の上の男はするすると下りてきて、「無事でよかった」と喜ぶとともに「熊は何をおまえに言ったのだ?」と聞いた。
死んだふりをした男は、「熊はなあ『危ない目に遭っているのに助けに来ないような奴は、本当の友だちではないよ』と教えてくれたのさ」と答えた。
6 学習課程
自分の「友達の数」を発表する(10分)
発問1
「みなさんには、たくさんの友達がいると思います。みなさんには何人の友達がいますか?指の数で教えてください。5人のひとは指を5本、10人の人は左右の指10本を広げてください。」
※ 価値への導入を図る活動です。別に何人でもよく、多いのがよいわけでも、少ないのが悪いわけでもありませんから、そのことをさらっと伝えながら、「みなさんには、いい友達がいますね。とってもすばらしいことです。」と受容します。
※「今日は、友達として大切なことをみんなで考えてみることにしましょう。」と伝えて、資料を読み聞かせます。
※ この導入だと、「資料の落ち」が容易に想像されてしまうので、あえて、たとえば「熊の大きさはどれくらいか知っているか」などの資料中の人物への導入、あるいは、「イソップ童話ってどんな物語があるかしっているか?」などとするのもいいでしょう。それなら、もっとも導入の時間を短くできます。
※ 資料は、熊がどこかに行ったところまでをまずは、読み聞かせます。
死んだふりをしていた男の気持ちについて話し合う(25分)
発問2
「熊にくんくんにおいを嗅がれていたときの『死んだふりをしていた男』の気持ちを想像して、紹介しあってみましょう。」
※①こわい~、②とうとう熊に食べられてしまうのか、③だれか助けてくれ、④本当に気絶してしまいそうだ、⑤神様仏様……⑥もっと一生懸命走って、逃げればよかった
※①~⑥などに束ねながら板書します。そして、a)「あなただったら、どうかなあ、気絶してしまうよね。」、b)「先生なら、もうダメだとおもう。」、c)「食べられたら本当にいたいだろうねえ。」などと適宜全体に問い返しながら、死んだふりをしている男の気持ちを理解させます。
資料を少し読み進める。
「熊は何をおまえに言ったのだ?」と聞いた。死んだふりをした男は、「熊はなあ……………」まで読み聞かせる。
発問3
「『熊は何をおまえに言ったのだ?』とありますが、熊は死んだふりをしている男に、いったい何と行ったと思いますか。」
※「熊は、『 』と言った」と書かれたプリントに一人ひとりの考えを書かせます。
※時間があれば、発表させましょう。①今日のところは、許してやろう、②俺様は、人間は好きじゃないのだ、③熊から逃げるコツや方法を身に付けておくのだな、などが出るでしょう。それぞれに括りながら板書します。
※あまり時間をかけずに、熊のささやいた本当のこと(「熊はなあ『危ない目に遭っているのに助けに来ないような奴は、本当の友だちではないよ』と教えてくれたのさ」)を知らせます。短冊などに書いて、それを少しずつ見せるようにしながら(じらしながら)知らせると効果的でしょう。
自分の生活を振り返って、感想を書く(7分)
発問4
「授業中に考えたことや、普段自分が友達に対してしていることや、友達に対してどんなことを大切にしているのかなどについて、プリントに書きましょう。」
※あまり押しつけがましくならないことが大切です。さらっと発問して、自由に書かせるのがよいかもしれません。
教師の話を聞く(3分)
※「危ない目に遭っているのに助けに来ないような奴は、本当の友だちではない。」という画用紙の短冊を印籠のように子供たちに示しながら、「危ない目」というのは、何も熊に出会ったときだけではなく、その友達が困っていることを指している。自分だけ楽々としていて、友達がとっても苦しんでいるのにそれに対して手を貸さない人になるようなことだけは避けたいものだと熱く語る。
※教師の貴重な経験があれば、それを話す。
7 実践者プロフィール
坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
(文責:EDUPEDIA編集部 森川良太朗)
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