「よりみち」できまりを守る態度を育てる(坂本哲彦先生)

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1、はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→http://sakamoto.cside.com/

2、この記事で紹介する授業案

資料「よりみち」『みんななかよく どうとく1』東京書籍 平成16年度版 所載

友達のまりちゃんが親戚からもらった子犬を学校帰りによりみちして、見せてもらいに行った主人公みさき。ちょっとだけと思ったが、気がついたら4時になっていた。通学路に出て、かけだしたら、向こうの方から先生とお母さんが来た。「わたしをみつけてふたりはすごい顔をした」のを見て「動けなくなった」。先生にだっこされ、お母さんがわたしの名前を呼び、目に涙をいっぱいにためていたのが見えた。

3、学習過程(45分授業)

資料を聞き、子犬を見に行く前のみさきの気持ちを話し合う。(10分)

発問1「『いいわ。だっこさせてあげる。』とまりちゃんから言われたみさきの気持ちをたくさん想像してみましょう。どんなことを思っただろうか?」

  1. 「どんな犬かな。かわいいだろうな。」などの犬の姿・形について想像する気持ち
  2. 「だっこしたいな。触りたいな」などの犬にしたいことを考える気持ち
  3. 「わたしも犬がほしいな」などまりちゃんをうらやむ気持ち
  4. 「早く見たいので、このまま寄り道しちゃおう」などのきまりを破ることへの迷い などが出るでしょう。

「たくさん想像する」のは、自分の無自覚な気持ちに気付かせるための手段。「自分だったらどんな気持ちになるか」と問われると、この「無自覚な気持ち」にかえって気付きにくいことから、「自分が思う・思わないにこだわらずたくさん想像すること」、「友達の意見を多様に聞くこと」が有効な場合がある。

「子犬を見たいと思う気持ちの高まり」と「ちょっとだけならよりみちをしてもいいのではないかという(甘い)気持ちの芽生え」を板書上で押さえる。(黄色いチョークでサイドラインを引くとか、○で囲むとかして強調するとともに、「みなさんもそんな気持ちが分かるんじゃないでしょうか」と投げかける。)

「動けなくなった」みさきの気持ちを話し合う。(25分)

発問2「(子犬を見に行く前の気持ちに対して、見た後、)帰るときお母さんたちに出会い『動けなくなった』みさきはどんなことを考えていたでしょうか。」

  1. 「よりみちしてはいけなかなった」など、自分がよりみちしたことを「誤りであった」と改めて気付き、後悔・反省する気持ち
  2. 「もっと早く帰ればよかった」など、よりみちをすること自体への反省はない(あるいは小さい)が、遅くなったことへの後悔・反省の気持ち
  3. 「しかられるのが怖い」など、しかられることへの恐れ(これは、(1)(2)のどちらが理由になっているかによって質的な差があるが、中には、「ふたりはすごいかおをしていた」ということだけから、そう思っている場合もあるかもしれない。問い返しが必要かも知れない。)
  4. 「お母さんや先生を心配させてしまった。すまない」という申し訳ない気持ち などが出るでしょう。

発問3「どの気持ちもあったと思いますが、大きい順に順番を付けるとどうなると思いますか?」

1番→(3)しかられる!

2番→(1)よりみち×

3番→(2)早く帰ればよかった

4番→(4)心配かけた
などの順番が付くかも知れない。

ここでは、順番を付けることが自体目的ではなく、(4)の気持ちがあまりにも小さいということが分かればいい。その程度に扱う。

発問4「先生にだっこされ、目に涙をためたお母さんを見て、どの気持ちが大きくなったと思いますか?」
(4)が大きくなったというのはすぐに合意されるでしょう。

すかさず、「それほど、あなたたちは、周りの人々に大切にされている、見守られていること」、「だから、心配をかけない生き方をしなければならないこと」を毅然と伝える。「今まで知ってはいたけど、きちんと考えたことはないこと」に自覚的にならせる。

そして、すかさず、「だから、きまりや約束はきちんと守らなくてはならない」と押さえる。
(黒板に、「きまりは、大切にされているみなさんのためにある。だから守らなくてはならない」と書く)
(子犬を見に行く前の気持ちと対比的に扱うとより効果的)

授業の感想を書く。(10分)

発問5「みなさんのまわりにあるきまりや約束をプリントに幾つか書いて、今日の授業で思ったことを書きましょう。」

(以上http://p.tl/o-Y9 より引用)

4、編集後記

きまりを破った子を強く叱って言い聞かせることは、その場では効き目があるかもしれないがあくまで一時的なものに過ぎない。それより、「愛されているから」「心配されているから」きまりを守らなければならないという子どもの自発的な心を育てることこそが重要なのだと思った。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 平野愛)

5、実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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