自分のクラスの子どもが入院したとき、退院するときに学校の先生ができること—医療者からのお願い

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作成者: 大見サキエさん

1 はじめに

個人差はありますが、1週間程度の入院でも子どもにとっては様々な不安や苦悩を抱えるものとなります。そして長期になればなるほど、出現する問題は大きくなるでしょう。子どもへの対応もそれ相応の心構えが必要となります。ここでは、私がこれまで取り組んできた、がんの子どもが入院した時や退院時の対応について、そのポイントを学校の先生にお願いしたいこととしてお話します。

2 具体的な対応のポイント

<入院した時>

(1)偏見を持たないで、病気や病状を正しく理解する。

一般に小児がんは「治る見込みがなく死ぬ病気」という認識をお持ちの方が多いですが、最近ではほとんどの子どもが治療を終え、学校に戻ることができます。つらい治療を闘い抜いて戻ってきます。小児がんに限らず、他の病気でも同じです。噂だけが流れ、子どもや家族が悲しい思いをしないように、病状を正しく理解していただけたらと思います。
 そのためには保護者とともに医療者からの説明を是非受けてください。希望があれば、説明の労を厭う医療者はいません。医療者への垣根はとても高いと感じている先生がいらっしゃるかもしれませんが、医療者側も連携を強く望んでいます

(2)入院した子どもと学校の繋がりが途切れないように工夫する。

 具体的には以下のようなことが考えられます。

  • 面会に行く。
  • 学籍が院内学級等に移動しても子どもの机やいすを残しておく
  • 保護者やきょうだいを介して&color(6080e0){学級通信や授業の資料等を届ける};。
  • 手紙や電子メールで日常生活(例:給食のメニュー、体育の授業内容、遠足やその他の行事の内容等)を伝える。入院している子どもからも双方向に行えるとベストです。
  • 子どもの学習成果(習字や絵画等)を教室に貼る

→これは入院している子どももクラスの一員であるということをクラスメートに意識づける効果があります。

(3)クラスメート等に必要な情報を正しく伝える。

患児・保護者と相談し、入院の事実などについてクラスメートにどのように伝えるかを話し合った上で説明します。その他周囲の子どもたちにどのように説明するかを学校で統一しておくと良いでしょう。

(4)きょうだいにも配慮する。

保護者はどうしても入院している子どもに目がいきがちとなり、きょうだいへの気配りが少なくなってしまいます。きょうだいは我慢を強いられる状態となるため、とても寂しく、辛い思いをしています。保護者にはきょうだいが学校生活で頑張っている様子を伝え、担任としても毎日の様子に変化はないか見守ってください。

(5)保護者の話をしっかり傾聴する。

話を聴いてもらっただけで楽になったといわれる保護者がたくさんいます。本当は気持ちを聴いてもらいたいのです。なかなか言い出せない保護者もいますので、「がん」だからといって怖がらないで(逃げないで)、声かけをして話を聴いてあげてください。

<退院時、退院してから>

(1)退院の目処がついたら、退院前に医療者、学校関係者との会議をもつ。

一般に病院側が会議設定をしてくれますが、そうでない場合は学校から希望してください。

子どもの病気のこと、今後の治療や学校生活上の留意点、病名の説明についてなどについて話し合います。疑問点はこの会議で解消しておきましょう。ここではなるべく率直に意見交換し、子どもや保護者、そして教員が困らないように話合うと良いです。また、入院中の子どもの意外な良い面を医療者から教えてもらうことは、子どもへの対応のヒントになります。

(2)学校で子どもを迎え入れる準備をする。

教員対象

  • 学校の情報管理体制を徹底する。
  • 施設の整備、日常生活の配慮事項や緊急時の対応等教職員全体で確認しておく。
  • 担任一人が抱え込まない体制を整備しておく。
  • クラスメートや周囲の子どもたちへの説明方法、内容を保護者と相談しておく。
  • 仲のよいクラスメートを配置する。
  • 復学初日に温かく迎え入れる準備をする。
  • 脱毛対応は、鬘(かつら)やバンダナ、あるいは帽子などで本人の意向を受け入れる(普段、帽子着用してはいけない場面でも許可するなど)。

クラスメート対象

  • クラスメートや周囲の子どもたちに、外見についてからかわれたらどんな気持ちになるか、その&color(6080e0){子どもへの思いやり行動について考える機会};(ホ—ムルームなど)を与え、皆がその子どもの気持ちを慮り、受け入れるような風土を醸成する。

他の保護者

  • 当事者の保護者が望めば、保護者懇談会等で説明し、理解と配慮をお願いする。

(3)復学したら、徐々に通学できるように配慮する。

登校は1時間目から開始し、午前中だけ、給食まで、給食後まで、5時間目までというように徐々に延長していきましょう。決して早まらず、体力の回復の程度を見ながら、延長することが大事です。みんなと早く一緒に行動したいために無理をする子どもが多いので、保護者から帰宅後の様子も聞きながら、無理のない登校を勧めます。

外来受診が継続する子どもの場合、受診後の体調の変化に注意しましょう。感染症などの発症時は早急に保護者に連絡を入れ、登校の可否を判断する(事前に出欠席の判断基準を保護者と相談して決めておく)必要があります。体育大会や遠足、修学旅行など本人の意向をできるだけ受け入れ、参加できるような方法を考えましょう。

(4)子どもに自信を取り戻すあらゆる工夫をする。

学力低下は避けがたい状況ですが、「命」の大切さからすれば、学習が遅れていることは問題ではありません。辛い治療を乗り越え、病気を克服したからこそ、復学可能となったのですから、その頑張りが素晴らしいのだという価値観を子どもにもクラスメートにも伝えると良いです。学校は学習する場だけではなく、集団に所属し(人と繋がっている)人間性を陶冶する場であるということを十分に意識して子どもたちへの対応を工夫していきましょう。

3 病気の子どもの理解のために

小児がんを含む病弱児に関する資料は以下を参照していただけると幸いです。

国立特別支援教育総合研究所「病気の児童生徒への特別支援教育−病気の子どもの理解のために‐」

http://www.nise.go.jp/portal/elearn/shiryou/byoujyaku/supportbooklet.html

病気の子どもが退院後、スムーズに復学できるように学校の先生を対象として作成された冊子(PDF)です。ご自身のクラスに入院をしている子どもがいる先生だけではなく、学校の管理職の方や養護教諭の方にもぜひ読んでいただければと思います。

4 投稿者プロフィール

岐阜聖徳学園大学  大見サキエ(おおみさきえ)教授
小中学校の教員、養護教諭、特別支援教育コーディネーターを対象とした病気の子どもの復学支援のための講演や研修会を実施。看護師、臨床心理士、小児看護学教授としての経験を活かして研究を続けている。

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