詩「冬の夜道」の授業:指導案(小学校高学年国語)主発問3つ

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目次

1 はじめに

かつて、小学校の高学年を担任すると、必ず「冬の夜道」(津村信夫・作)を子どもたちと読み味わいました。
おぼろげな記憶ですが、この詩の授業を、覚えているだけで7回はしたでしょうか。
それは、子どもたちに、将来、大人になった時の自分の「家族」を豊かにイメージするきっかけにしてほしかったからです。

2 冬の夜道

                  津村信夫

冬の夜道を 一人の男が帰ってゆく

はげしい仕事をする人だ

その疲れきった足どりが そっくり それを表している

月夜であった

小砂利をふんで やがて 一軒の家の前に 立ちどまった

それから ゆっくり格子戸をあけた

「お帰りなさい」

土間に灯がもれて 女の人の声がした

すると それに続いて

どこか 部屋のすみから

一つの小さな声が言った

また一つ

また一つ別の小さな声がさけんだ

「お帰りなさい」

冬の夜道は 月が出て ずいぶんと明るかった

それにもまして

ゆきずりの私の心には

明るい一本のろうそくが 燃えていた

(昭和45年頃、私が小学校5年生の時、国語で使った教科書に載っていた記憶があります。
昭和49年の教育出版の小5国語教科書には載っていますから、おそらく教育出版だったのではないでしょうか。
昭和45年の資料がないので、あくまでも私の推測です)

3 本時の展開

まず、音読をしたら、意味のわからない言葉をなんとかします。

足どり」「小砂利」「「格子戸」「土間」「」「ゆきずり

などを、子どもたちは言うでしょう。
どうにかこうにか言葉の意味がわかったところで、また音読を入れます。

最初に問いたいのは、1人の男の行動の裏側にあるものです。

この男の人は、疲れていたから、ゆっくり開けたのかなあ?」

と聞いてみたいです。
子どもたちが

はげしい仕事」「疲れきった足どり」「そっくり」「やがて」「立ちどまった」「それから ゆっくり

などから、男の人の姿・状況を思い浮かべつつ、男の人の家族への温かさにまで思いをはせてくれたらいいなあ・・と思います。
ある年には、
家族に、疲れきった顔を見せると心配させるので、一度立ちどまってから、深呼吸して、ゆっくり開けた
と語る子もいました。

次に問いたいのが、男の人を迎える家族の姿です。

この家は何人家族なのかなあ?」

と聞いてみたいです。

女の人」「1つの小さな声」「言った」「また1つ また1つ」「別の小さな声」「さけんだ

などから、迎えたのは、3人か4人か意見が分かれるでしょう。
その中で、迎えた時の家の中の様子や、男の人にかけた言葉も出てくればいいなあ・・と思います。
別の年には、
小さな声が言ったのは低学年ぐらいの子で、小さな声がさけんだのは、3才ぐらいの双子で、3人の子どもがお父さんの帰りがうれしくて飛びついた
と語る子もいました。

最後に問いたいのは、ゆきずりの作者の姿(2連の姿)です。

ゆきずりの私には、家で誰かが待っているのかなあ?」

と聞いてみたいです。

それにもまして」「ゆきずり」「私の心」「明るい」「1本のろうそく」「燃えていた

などから、思い思いに、作者も男と同じような家族がいる、作者は家族のいない1人暮らし、などと語ってくれたらいいなあ・・と思います。
また別の年には、
『月の明るさ』と『ろうそくの明るさ』の違い(冷たい・温かい)から、1人ぼっちの作者だから心に灯った『ぬくもり』を、北風で消したくないほど大切にしたかった
と語る子もいました。

そして、もう1度音読しながら、この温かい家族と、心を温められた作者の情景をイメージしてくれたらいいなあ・・と思いました。
自分も大人になったら、こんな家族をつくりたいなという、子どもたちが描けるモデルの1つに、この詩がなってくれたらなあ・・と心から願いつつ・・。

4 おわりに(詩の授業における主発問とは)

実際の授業では、こちらの思うようには、なかなか、子どもたちは描いてくれないものですが・・。
どこと、どこで、グループ学習を採り入れたらよいかは、迷うところです。
今の時代の、ほとんどの子どもたちは「土間」も「格子戸」も知りませんから、1校時45分でやり終える自信も・・・ちょっとありません。
でも、ステキな詩であることは確かです。

とにかく情景を思い浮かべてほしいので
男の人はどうして立ちどまったの?」
男の人はなぜ、ゆっくり開けたの?」
この家族を見た作者の気持ちは?」
明るい1本のろうそくって、作者が言いたかったことは何?」
というような問いかけは、したくありませんでした。
詩という文学作品を読み味わうとは、そういうことではないような気がするからです。
あくまでも情景をより豊かに思い描き、イメージすることを主にした授業を展開したいです。
そうする中で子どもたちが自ら、自然体で、心情にもふれてくれるのではないでしょうか。

このように、詩も含めて、文学作品を、子どもたちと読み味わう時には、その場面の情景、登場人物の仕草・表情・セリフなどを、子ども1人ひとりが、ありありと頭の中に映像・イメージとして思い描けるような支援(どの発問も、つぶやきを聴き逃さない姿勢も)を大事にしたいものです。
ちなみに、私自身、7回とも、同じ主発問をしなかったという記憶があります。
当然ながら、本時の展開も異なる流れになったように、おぼろげながら思います。
今回、採り上げてみた主発問は、その7回の授業の中から、今も頭から離れない3つをピックアップしたものです。
以上、全国の先生方にも、思い思いにさまざまな角度から、子どもたちと読み味わってほしい詩「冬の夜道」について・・・でした。

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